第24話 深夜の特訓! 憧れを超えるために | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

英気を養うのに、デジモンの劇場版をいくつかかじりました。

しかし、02のチョコモンの方を見て、一番共感したセリフがテリアモン(グミモン)の

「暑い暑い暑い暑い・……」

だった私。(苦笑)




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 鉄色の固い地面が続く荒れ地。鋼鉄でできた岩があちこちに転がっている。

 その中で、アグニモンに進化した俺とレーベモンがにらみあっている。

 俺はこぶしを、レーベモンは断罪の槍を構えて。

「行くぞ!」

 レーベモンが叫び、俺に向かって駆けてくる。

「この戦い、負けるわけにはいかねえ……!」

 俺はその場で地面を踏み締める。

「《エーヴィッヒ・シュラーフ》!」

 闇の力をまとった槍が突き出される。

 俺は後ろに跳んで、足を高く上げる。

「《サラマンダーブレイク》!」

 俺の回し蹴りとレーベモンの槍とが激しくぶつかり合う。

 その衝撃が、辺りの空気を、大地を揺るがした。



 トレイルモンの止まる場所にも、衝撃は届いた。

 そばのたき火であぶっていたキャベツが、火の中に一斉に倒れ込む。

「あーっ! 俺のビーフシチュー味がーーー!」

 純平が必死にそれを助け出そうとする。

「アグニモン、レーベモン! 手加減しなさいよ!」

 泉が立ちあがって、腰に手を当てて怒鳴ってきた。

「しまった、つい本気で……」

「ごめん。やりすぎた」

 俺とレーベモンは顔を見合わせて、揃って頭を下げた。

 友樹が客車の中から、ココナッツを抱えて出てきた。

「二人も、訓練やめてご飯にしようよ」

「おう! ありがとな」

 俺達も進化を解いて、昼飯の輪に入った。





 俺達は今、水のエリアを目指して移動している。

 鋼の街からは、鋼のエリアを丸々横切った所にある。だからトレイルモンに乗って、ここ二日間移動し続けている。トレイルモンも食事や睡眠は必要なわけで、こうして時々休みながら進んでいるんだ。

「信也もだいぶスピリットの扱いに慣れてきたんじゃない?」

 友樹がそう言って、ココナッツに刺したストローをくわえる。

 俺はキャベツにかぶりつきながら肩をすくめる。

「そうか?」

「あれ? 珍しくほめられてるのに、全然嬉しそうじゃないな」

 せっせと食べていた純平が、顔を上げた。

「別に、嬉しいけど」

 そう言ってやると、純平はふうんと言って、またキャベツに集中し始めた。

 俺も昼飯に目を戻す。

 今のうちに、食べるだけ食べておかないとな。




 夜。

 俺は目だけ開けて、他のメンバーを見回した。

 俺以外はみんな、座席に横になって眠っている。(純平だけ床に落ちてるけど……。ここ数日で分かった事だけど、純平は結構寝相が悪い)

 音を立てないように、静かに靴をはく。ドアを細く開けて、そこから外に滑りだす。

 この辺にはデジモンも住んでいないみたいで、遠くで風の音がする以外は静まり返っている。

 固い地面を歩いて、トレイルモンから距離をとる。月明かりにその影が見えるか見えないかの辺りで、足を止めた。

 ここまでくれば少し派手にやっても大丈夫だよな。

 俺はポケットからデジヴァイスを取り出した。

 左手にデジコードを浮かび上がらせる。


「スピリット・エボリューション!」

「アグニモン!」


「よし、今日もやりますか!」

 誰も見ていない所で、俺は一人気合を入れた。




 昼の休憩の時は、みんなが交代で俺の訓練につきあってくれている。友樹が言ってくれた通り、確かに前よりは進化した体にも慣れてきた。


 でも、それだけじゃダメなんだ。


「《ファイアダーツ》!」

 手の甲から噴き出す炎を、手裏剣のように撃ちだす。

 火の玉は、岩につけたチョークの印の、少し右に当たった。


 俺はまだ、みんなみたいにビースト・スピリットを使えない。ロックをかけたテイルモンは「あなたにそれを使いこなせるだけの力が身につけば自然とロックは外れます」って言ってたけど。いまだにその気配はない。

 人型の方が獣型より優れている面がある。それも分かってる。

 だけど、炎のビースト・スピリットの使えない状況は、俺達にとって不利でしかない。みんなの足手まといにならないためにも、早くビースト・スピリットを使えるようになりたかった。


 前にこのスピリットを使っていた人間を、超えるためにも。


 だからこうして、毎晩こっそり特訓しているんだ。






「……今日は、これくらいにするか」

 しばらく的を狙った練習をしてから、俺は背伸びをした。最初は10発中5発しか当たらなかったのが、8発はちゃんと的に当たるようになってきた。それに、いいかげん眠くなってきたし。

 力を抜いて、進化を解こうとする。



 その時、背後から殺気を感じた。



「っ!」

 反射的に今いる場所から跳ぶ。

 次の瞬間、赤い炎の龍がその場をかみ砕いた。岩の破片が飛び散る。

「誰だ!」

 技の跳んできた方向に、じっと目をこらす。

 暗闇の中から浮かび上がるように、炎をまとった四本の足と、九本の尻尾が現れた。

(あるじ)から十闘士の力量を確かめてくるよう命ぜられましたが……なるほど主が警戒するだけの事はあるようですね」

「オリンポス十二神族の手下か……」

 俺はトレイルモン達の方を背にして、ゆっくりと腰を落とした。




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そういえば信也の単独シーンは久しぶりですね。というか、最初に拓也達を尾行して以来か。