第22話 目指すべき世界! 求める答え | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

あ……つ……い……。

昼は暑くて頭も体も動きません。




☆★☆★☆★



 地面に横たわるマルスモン。その胴にはデジコードが浮かび上がっている。


「馬鹿な……我が負けるなど、あり得ぬ! 勝利と栄光のために全てを捧げてきた我が!」

 体もほとんど動かせない状態なのに、まだマルスモンは負けを認められないでいる。

「お前も戦士なら、(いさぎよ)く勝敗を見極めるんだな」

 ボルグモンがマルスモンに近寄りながら言う。

 けん制はボルグモンに任せて、俺は進化を解く。友樹と肩を貸しあって、マルスモンに歩み寄った。

 泉と輝一は、自分で立ちあがって歩いてくる。


「さあ、約束だぜ。俺達が勝ったら、兄貴達の事を教えてくれるって」

 俺は腕を組んでマルスモンを見下ろした。

(っていっても実際は相手が大きいから、目線はまっすぐなんだけど)

「ぐっ、誰が、負けなど……」

 マルスモンが歯を食いしばって体に力を込める。だけど、デジコードの浮かび上がった体は戦うどころか起き上がることすらできない。

 それでやっと力を抜いて、長い溜息をついた。

 そして話し始める。


「分かった……。まず何から聞きたい」


「輝二と拓也は無事なのか!?」

 俺が口を開くより先に、輝一が食いついた。こぶしを握り締めて、答えを待ちかまえるような、それでいて怖がっているような、複雑な顔をしている。

「我々は彼らに危害を加えてはいない。彼らは我々の城に幽閉している」

 回りくどい言い方してるけど、それってつまり。

「拓也お兄ちゃんも輝二さんも、オリンポス十二神族の城に閉じ込められてるって事だよね」

「だな」

 友樹が代弁してくれて、俺はうなずく。

「そうか……とにかく元気なら、よかった」

 輝一が肩の力を抜いた。表情もゆるむ。

 冷静に見えてたけど、ずっと心配してたんだろうな。まあ……俺も少しはしてたけど。


「じゃあ次。そもそも何で拓也と輝二をさらったの?」

 泉が質問を投げかける。

「え? それってこっちの戦力ダウンを狙ってたって結論にならなかったっけ?」

 俺が記憶を掘り返して聞く。

 泉はあごに手をやりながら答えた。

「それだったら、わざわざ人間界まで行かなくても、私達を迎えに行くトレイルモンを襲えば済む事じゃない。いちいち誘拐なんて大げさよ」

 さりげなく怖い事を言う泉。

「我にもその真意は分からぬ」

 マルスモンが口を開いた。

「お前達スピリットを受け継ぐ者をさらえと言ったのも、あの二人を幽閉せよと言ったのも、全てはユピテルモンの意志」

「ユピテルモン? オリンポス十二神族の一人か?」

 ボルグモン達もその名前は初耳らしい。

 マルスモンが苦しそうに息を吸う。

「彼は我々のまとめ役。十二神族の中でも全知全能だ」

「もしかして、デジタルワールドを襲っているのも、そのユピテルモンの指示なのか!?」

 俺は身を乗り出した。

「『指示』ではない。我々の立場はみな等しい。このたびの襲撃は皆の合意の上だ」

「なんでそんな話になっちゃったの?」

 友樹が聞きながら顔をしかめた。

「それは、我らが世界が――ぐっ」

 マルスモンが急に顔をゆがめた。同時に、地面が揺れ始める。

「地震か!?」

「いや違う!」

 ボルグモンの言葉に、輝一が鋭く返す。

 マルスモンの周りの地面が、ゆがんで脈打っていく。そしてマルスモンに近い所から、デジコードへと変わっていく。

「一体どうなってるんだよ!?」

 俺は後ずさりながら叫ぶ。

「分からない! でも――!」

 泉の声が裏返る。

「早―スキャンを! このままでは、我の存在がゆがみを――」

 マルスモンの声が切れ切れに聞こえる。

「まだお前には聞きたい事が!」

 輝一が大声をあげる。でも、そう言っている間にもデジコードの部分はどんどん広がっていく。

「仕方ない! マルスモンをスキャンする!」

 ボルグモンがデジコードに包まれた。


「ボルグモン! スライド・エボリューション!」

「ブリッツモン!」


「悪に染まりし魂を、我が雷が浄化する! デジコード・スキャン!」

 ブリッツモンのデジヴァイスに、デジコードが吸い込まれていく。

 マルスモンの体がそれにつれて消えていき、最後にデジタマが残り、どこかに飛んでいく。

 そして、デジコードになっていた地面が元に戻る。


「何だったんだろう、今の?」

 しばらく呆然とした後、やっと友樹がつぶやいた。

「『ゆがみ』がどうとか言ってたけどな」

 進化を解いた純平も首をかしげる。

「あー! また分かんない事が増えた!」

 俺は頭をかきむしる。

 そこに泉が明るい声で割り込んだ。

「でも、分かった事もあったからいいじゃない。拓也も輝二も無事で、どこにいるかも分かった!」

「オリンポス十二神族の城、か」

 輝一が空を見上げる。もうすっかり日が暮れている。

「そこに行けば、兄貴達を助けだせるんだな」

「でも行き方は?」

 俺の言葉に、友樹が突っ込む。

「そんなの「他の十二神族に聞けばいいだろ?」……純平! 俺の台詞取るなよな!」

「いいじゃん別に。専売特許じゃあるまいし」

 純平が胸を張る。

 俺は咳払いをして、改めて話し始めた。

「一体が倒されたんだから、他のオリンポス十二神族も黙ってないだろ。その時に、今回聞けなかった部分も聞き出してやろうぜ」


『わしらの事も忘れるな~!』

「うえっ!?」


 急にデジヴァイスから声がして、俺ののどから変な声が出た。

「え、あ、ボコモン?」

『そうじゃい! やっと通信がつながったと思ったら、勝手に完結させよって! ……で? 何が分かったんじゃハラ?』

 いきなり優しい声になるなむしろ怖いから。

「えっと、話せば長くなるんだけど……」

「みなさん! よければお食事にいたしませんか?」

 こんな時にやってくるハグルモン。

Grazieグラッチェ(ありがとう)! じゃあ私先に行ってるわね」

「待ってよ泉ちゃん、俺も腹減ったよ~」

「……俺もおなかすいたな」

「信也、行かないの?」

 行くよ! 行きますよっ!

『信也はん? 聞こえとるか? しーんーやーはーんー』

「あとで! 連絡するから!」

 俺は強制的に通信を切って、デジヴァイスをポケットに突っ込んだ。

 色々考える事はあるけど、今はとにかく飯だ!

 先に歩きだしてたみんなの後を、俺は走って追いかけた。




☆★☆★☆★




星流「鋼のエリア編(?)完結です!」


信也「やっと兄貴達をさらった犯人と決着がついたけど……」


友樹「まだまだ根っこは深そうだね」


輝一「伏線を張るだけ張って、回収しきれればいいんだけど」


星流「回収するよ! ちゃんとするよ!」


泉「それに、名前だけ出てきた『ユピテルモン』ってどんな敵なのかしら?」


純平「そうだよな~。外見とか技とか、どんなだろうな~?」


星流「……まだ聞かないで(泣)」


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