北朝鮮のミサイルと民間防衛 | 月刊誌『祖国と青年』応援ブログ

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青木聖子とその仲間たちが、『祖国と青年』や日本協議会・日本青年協議会の活動を紹介したり、日々考えたことを綴ったりします!
(日本協議会・日本青年協議会の公式見解ではありません。)

 「祖国と青年」7月号は、「トランプ政権と日本の課題」と題する江崎道朗さんの講演録を掲載しています。

 

 北朝鮮のミサイルが飛んできたら、誰が私たちを守ってくれるのでしょうか。

 憲法9条でしょうか? 自衛隊でしょうか?

 実はどちらでもなく、各自治体の責任で守らなければならないのです。

 

 以下、そのことについて述べられている箇所をご紹介します。

 

 

 ミサイル危機の国民保護は地方自治体の責務

 

 四月二十一日、菅官房長官が記者会見において、ミサイル攻撃を受けた際の身を守るためにとるべき行動をとりまとめ、内閣官房ホームページの「国民保護ポータルサイト」に掲載したと発表しました。


  この四月二十一日は、わが国の戦後の安全保障にとって歴史的な日だと思います。政府が、「北朝鮮のミサイルを完全に防ぐことはできません。ミサイル攻撃を受けたときに、自分の身を守るための情報を政府は提供するので理解してください」と訴えたわけです。「民間防衛」が必要だということを正面から言った。これは戦後初めてのことで、画期的だと思います。


  これまで「憲法九条があるからミサイルが落ちてくるはずがない」と言って来ましたが、さすがの朝日新聞も民進党も今回はそれを言えません。朝日新聞は何と言っているかというと、「菅官房長官は国民の不安を煽っているからけしからん」と、そういう言い方しかできないのです。


  官邸は、ミサイルが落ちてきた時にどうやって身を守るのかということを「国民保護ポータルサイト」に掲載すると同時に、都道府県の国民保護担当者を集めて対策会議を行いました。大震災の時は、災害出動の要請をすれば自衛隊が助けに来てくれます。しかし、ミサイルが落ちてきた時は、自衛隊は助けに来てくれません。自衛隊はミサイルを撃ち落としたり、北朝鮮や中国の動きに対応しなければいけませんから。


  では、ミサイルが落ちてくる時の避難誘導や、ミサイルが落ちてきた時の救援活動といったことはどこがやるのかと言えば、地方自治体なのです。十年以上前の平成十六年にできた「国民保護法」(正式名称「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」)に、ミサイル危機の際の国民保護は地方自治体の責務であると定められています。


  国民保護法第十一条は、地方自治体の役割として、次の項目をあげています。


一、住民に対する避難の指示
二、救援の実施
三、武力攻撃災害の防除及び軽減、緊急通報の発令、退避の指示、警戒区域の設定、保健衛生の確保、被災情報の収集その他の武力攻撃災害への対処に関する措置
四、生活関連物資等の価格の安定等のための措置


  これらを全部、地方自治体が担当しなければいけないのです。ちなみに、三の「防除」というのは、生物化学兵器や核物質をミサイルが積んでいるかもしれない、ということです。


  私は講演で全国をまわっていますが、これらのことが自分たちの仕事だと理解している地方議員、地方自治体の方はほとんどいませんでした。消防の人は何となく理解していましたが、「生物・化学兵器にどう対応したらいいかなどということは分からない」という状況でした。


  菅官房長官は、そういう訓練を全国でやってください、と言っているわけです。実際に、秋田県などは避難訓練だけではなく、二十四時間の警戒体制を敷いています。しかし、そういう動きが出来ていない自治体が多いのが現状です。


  皆さん、ぜひそういうことを地方自治体や地方議員の先生方に問い合わせてください。ミサイルが落ちてきた時の災害の防除、生物化学兵器への対応など、恐らく誰も知らないはずです。誰も知らないままに、例えばサリンがばらまかれたら、みんなやられてしまいます。そういうことに対する特殊な知識と装備を身につける人をすべての地方自治体が育成しておかなければならないのです。
 
  戦争被害用の医療救急キット

 

  ミサイルが落ちると、爆発に伴う爆風で、瓦礫などが大変な勢いで飛び散ります。場合によっては半径一〇キロぐらいに被害が及び、多くの死傷者が出ます。今でさえ医療はパンクしているわけですから、大量の怪我人が出てもすぐに手術はできません。


  では、大怪我をした人はどうすればいいのか。患部にペタッと貼るような、特殊な戦争被害用の救急キットが世界中で売っています。米軍が持っていて、イスラエルでも開発しています。こういう救急キットによる対処で助かる命はたくさんあります。


  そういうものを大量に準備し、使い方を習得するということも地方自治体の役割です。これはお金のかかることです。そして、訓練をするにしても、医薬品を備蓄するにしても、専門的な知識と資金が要ります。


  武力紛争に伴う医療救急キットなどの救命体制については、第二次安倍政権になって、防衛省の中に「防衛省・自衛隊の第一線救護における適確な救命に関する検討会」という名の審議会をつくり、有事緊急救命処置体制の拡充が必要である旨の答申を昨年九月に出しました。それで、防衛省は約十数億円の予算を提案したのですが、財務省は「緊急の必要性がない」と言って削減してしまいました。


  問題は、そういうことについて理解している政治家が少ないということです。せっかく防衛省が取り組んでも予算をつけてもらえない。だから何も進まない、というのが今の実情です。


 もし学校にミサイルが飛んできたらどうするのか。それがもし授業中だったら――そういう具体的な危機を想定して、自分たちの身をどう守るのかということを、訓練しながら問題点を洗い出し、医薬品等を備蓄すると共に、電気や水道が壊れた時の復旧をどうするのか具体的に考えていく。一つ一つが自分たちの問題なのです。自分たちの家族や地域を守るための課題なのです。


  そういうことを取り上げていく中で、「これまでそういうことを全く考えてこなかった諸悪の根源は、憲法九条にあるのだ」という形で憲法改正の必要性を理解してもらう、というアプローチがあるべきだと私は考えています。