日本を取り巻く国際環境の劇的変化
昨年12月16日、政府は「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」のいわゆる三文書を閣議決定し、「反撃能力の保有」、「防衛費に関する上限枠の変更」」といった重要な政策転換がなされました。

閣議決定後の記者会見に臨む岸田首相(令和4年12月16日)
出典:首相官邸HP
「祖國と靑年」2月号では、なぜこれほどまでの重要な政策転換がなされたのか、その「背景」、すなわち我が国を取り巻く安全保障環境の変化について記しています。
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1、北朝鮮のミサイル開発の進化
平成10年(1998)、北朝鮮のテポドンが初めて日本列島上空を通過し緊張が走ったが、近年の北朝鮮のミサイル開発はその当時以上の格段の進化を遂げており、開発から配備の段階へと進んでいる。
金正恩委員長は朝鮮労働党大会で、「核兵器の小型軽量化」「戦術核」「超大型核弾頭」「極超音速ミサイル」「固体燃料式ICBM」「無人偵察機」「原子力潜水艦」の開発・配備を明言し、昨年は「極超音速ミサイル」「鉄道発射型弾道ミサイル」「潜水艦発射弾道ミサイル」「長距離巡行ミサイル」の試験発射が繰り返された。
従来の弾道ミサイルだけでなく、新型兵器が同時に運用された場合、日米のミサイル防衛網が突破される恐れがある。
2、中国の大軍拡とミサイルギャップ
中国が公表している国防費は、昨年度は日本円に換算して約24兆円に相当し、これは日本の防衛費の4倍強にあたる。
(中略)
過去30年間で中国の国防費は、40倍に増大しているが、それでも公表されていない予算があり、実態とはかけ離れていると米国は警戒する。
(中略)
中国は米国とロシア(旧ソ連)間で結ばれた中距離核戦力全廃条約(INF)の制約を受けない。そのため、米ロが軍縮している間も着々と射程500キロから5,500キロの中距離弾道ミサイルを配備してきた。日本が射程に入る中距離ミサイルは1,900発に及ぶと米国防総省は指摘する。
一方の米国はINF条約の制約によって現在保有はゼロであり、当然日本も保有していない非対称の関係にある(米中ミサイルギャップ」)。
3、ロシアの「力による現状変更」
ロシアによるウクライナ侵略は、2021年(令和3年)9月に、ロシア軍がベラルーシとウクライナの国境付近に8万人に上る兵力を終結させ、軍事演習を行ったことにはじまる。
この年8月、アメリカはアフガニスタンから兵力を撤収し、それとともにアフガニスタン政権は瞬く間にタリバン勢力へと移った。
バイデン大統領からすれば、限られた米軍のリソースをアジアにシフトする意図だったろうが、サイゴン陥落になぞらえられる政権崩壊は、バイデン政権の大失態としてプーチン大統領の目にうつったであろう。
(中略)
2021年(令和3年)7月、プーチン大統領は「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」という論文を公表していた。いわばロシアにしか通用しない理屈を正当化する論文である。
その中でプーチン大統領はロシア人とウクライナ人は単一の民族であり、ソ連時代も両者は一体で現在の国境は形式的なものだと語った。ロシアとウクライナは言語、宗教、経済が一体であり互いに不可分の存在だと語っている。
(中略)
こうした「修正主義」的な言動がなされても、ロシアが全面侵攻に出るとは、おおかたのロシア研究者にも想定できなかった。
『祖國と靑年』2月号
防衛三文書改定の意義(1)日本を取り巻く国際環境の劇的な変化とは
村主真人
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「我が国を取り巻く国際環境は一層厳しさを増し」という慣用句は、上記の内容を指しているわけですね。
このような困難な局面から、この度、防衛三文書が改定されたのです。