「祖国と青年」7月号、今月の主張 | 月刊誌『祖国と青年』応援ブログ

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青木聖子とその仲間たちが、『祖国と青年』や日本協議会・日本青年協議会の活動を紹介したり、日々考えたことを綴ったりします!
(日本協議会・日本青年協議会の公式見解ではありません。)

 「祖国と青年」7月号の巻頭言は、「自衛隊に感謝のまごころを」と題して、大葉勢清英さんが書かれていますので、以下、ご紹介します。

 

 

 高まる憲法九条改正の機運

 

 去る五月三日、安倍首相は、憲法九条に自衛隊の存在を明記する必要性などを訴え、二〇二〇年に新しい憲法を施行したいとの意欲を表明。六月二十四日には、「来るべき臨時国会が終わる前に、衆参両院の憲法審査会に自民党の案を提出したい」と述べた。


 安倍首相の五月三日の発表以降、国会の憲法論議は一気に本格化した。自民党の憲法改正推進本部は、「挙党体制で一体となって憲法改正の発議案を目指し」(保岡興治本部長)、同月二十四日に新たなメンバーを加えた新役員体制を発表。今後、改正案について「自衛隊明記」「議員の任期延長を可能とする緊急事態条項」「教育無償化」「一票の格差と選挙制度」の四点を検討することとし、保岡本部長は六月二十三日、「来年の通常国会に提示し、早ければ六月頃の(国会)発議を目指したい」と述べた。


 自衛隊を明記する憲法九条改正についての国民世論も高まり、各社世論調査では、ほぼ賛成が反対を上回っている。読売は賛成五三%で反対三五%(五月十五日)、日経は賛成五一%で反対三六%(五月二十八日)、朝日は賛成四一%で反対四四%(五月十六日)、毎日は賛成二八%で反対三一%(五月二十一日)、時事は賛成五二%で反対三五・一%(六月十六日)、共同は賛成五六%で反対三四・一%(五月二一日)、NHKは賛成三二%で反対二〇%(五月十四日)、産経・FNNでは、最初は賛成五五・四%で反対三六%であったが(五月十五日)、次には、賛成六一・六%で反対二八・六%(六月十九日)とさらに賛成が伸びた。


 安倍首相が投じた改憲発言の一石により、自衛隊明記の憲法九条改正の機運が一気に高まり、憲法改正の国会発議実現はさらに一歩近づいた。

 

 自衛隊を憲法に明記し、違憲論の払拭を

 

 安倍首相は五月三日の発言の中で、「任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は九割を超えています」と述べた。先の自衛隊明記に賛同する国民世論の背景には、自衛隊に対する感謝の思いがあることは言うまでもない。


 国民が自衛隊の存在の大きさをとりわけ実感したのが、東日本大震災であった。当時、全自衛官の四割にあたる十万人が派遣され、約二万人もの被災者が救助された。さらに派遣部隊は、被災者への救援物資の輸送を行い、発災後一週間の内に迅速に届けた。


 特に国民が心を打たれたのは、自らも被災者である自衛官が多数いたことである。隊員の中で家族が被災した者は五百人以上、うち二親等の家族を亡くした者は二百人を越えたが、彼等は、任地での不明者の捜索活動や瓦礫撤去にひたすら努めた。


 福島第一原発事故に際しても、自衛隊が直ちに投入されたが、上空には危険な放射線が充満し、再び水素爆発が起こる可能性もあった中、ヘリで空中から海水を投下し原子炉を冷却する一大作戦を展開した任務は、「自衛隊史上初の決死隊」(井上和彦氏)とも言えるものであった。東日本大震災という国難に懸命に立ち向かった自衛隊によってどれほど多くの命が救われたことか。当時、被災者から感謝の声が次々と自衛隊に寄せられた。


「ぼくはさいしょは、もうしぬ、ぜったいしぬと思っていました。でもじえい隊のヘリや車をみるたびになみだがでました。ぼくはそのとき『釜石のためにがんばっているんだな』と思いました。ほんとうにありがとうございます」(釜石市甲子小学校五年生男子)


 また、平成に入り、自衛隊は国際平和協力活動等にも参画するようになった。PKO、ペルシャ湾への掃海艇派遣、イラク復興支援活動、ソマリア沖・アデン湾での海賊対処、旧テロ対策特措法に基づく協力支援活動、国際緊急援助活動と、その種類も多様化し、派遣国は延べ三十カ国を超える。この間の国際貢献で一人の死者も出さず、他国の軍隊と協力しながら任務を遂行した自衛隊への国際社会の評価は高く、我が国に対する世界の信頼がどれほど高められたか図りしれない。


「日本の自衛隊については、両国の架け橋となって復興支援や技術移転などを行なっており、政府のみならず住民からも高く評価されている」(東ティモール民主共和国グスマン大統領)


 そして、言うまでもなく、特に中国の軍事的脅威が高まる南西諸島をはじめとする領空、領海、領土を守るべく、自衛隊は日夜その危険な任務に当たっている。


 しかし一方、ここまで国家国民のために尽くしてきた自衛隊に対し、国は、憲法上の地位を明らかにしてこなかったため、「自衛隊は軍隊か」「自衛隊は憲法違反」などという論争が絶えず、自衛隊は長らく日陰者扱いをされてきた。


 憲法学者の六割以上は自衛隊を違憲の存在とし、中学三年生のほとんどの公民教科書には、「自衛隊は憲法九条の考え方に反しているのではないかという意見があります」(東京書籍)などと違憲説が記されている。また、国会においても政治家が、「防衛費は人を殺すための予算」(昨年藤野保史・共産党政策委員長)などと発言することもあった。


 まさに安倍首相が指摘した通り、懸命に任務に当たっている自衛隊に対し、「自衛隊は、違憲かもしれないが、危ういときには、命がけで国家国民を守ってくれ」というのは国家として無責任であり、理不尽である。憲法上にその存在を明記し、隊員が士気高く誇りを持って任につける環境を整えなければならない。


 来る七月十四日から八月十一日にかけ、美しい日本の憲法をつくる国民の会は、全国縦断キャラバン隊を派遣するが、今回は特に「ありがとう自衛隊」をテーマに啓発運動を展開し、自衛隊への国民の感謝の思いを高めつつ、自衛隊明記の意義を訴えていく。本会も参画するが、これまでの自衛隊の貢献に国民としての感謝のまごころを表し、憲法への自衛隊明記を求める国民世論を高めていきたい。