フィリピン次席大使インタビュー① | 月刊誌『祖国と青年』応援ブログ

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青木聖子とその仲間たちが、『祖国と青年』や日本協議会・日本青年協議会の活動を紹介したり、日々考えたことを綴ったりします!
(日本協議会・日本青年協議会の公式見解ではありません。)

 「祖国と青年」11月号から、駐日フィリピン共和国大使館次席大使ギルバート・G・B・アスケ氏のインタビューをご紹介します。


 アスケ次席大使には英語でお答えいただき、それを日本語訳して掲載したのですが、本会のHPにアスケ次席大使のもともとの英語回答とその対訳をすでに載せています。もともとの英語のニュアンスを知りたい方はぜひご覧下さい。





 ――フィリピンは、南シナ海の南沙諸島にあるカラヤアン諸島の海洋権益と領有権をめぐって、中国の脅威にさらされています。


 中国は一九九五年、西フィリピン海のフィリピン排他的経済水域(EEZ)に侵入し、ミスチーフ礁(パガニバン)に軍事施設を建設し実効支配しています。また、一昨年には同じくEEZ内のスカボロー礁(バホ・デ・マシンロック)に艦船を派遣し、フィリピン艦船と二カ月にわたって対峙しました。


 本日は、駐日フィリピン大使館で次席大使を務めるかたわら、フィリピン外務省の西フィリピン海特別委員会のメンバーであるアスケ次席大使に、我々も懸念すべき南シナ海問題におけるフィリピンの見解についてお話を伺います。


 アスケ 南シナ海と西フィリピン海における領有権問題の進展に多大な興味と関心を持っていただき、心から感謝いたします。南シナ海の問題は、国家と地域の安全に直に関わる重要な問題で、フィリピンと日本は、国際法に準拠し平和的でルールに則った解決をともに目指しています。


 まず地図で関係する礁や砂州をご覧いただきたいのですが、スカボロー礁はマックルズフィールド堆の東部にあり、ミスチーフ礁は南沙諸島にあるカラヤアン諸島に位置しています。フィリピンは別名バホ・デ・マシンロックと呼ばれるスカボロー礁にある岩礁、地物や海、そしてカラヤアン諸島の島々、砂州、礁や海における管轄権と領有権を有しています。また、一九八二年の国連海洋法条約(UNCLO)に準拠し、フィリピン諸島から測定された二百カイリのEEZ及び大陸棚においても領有権と管轄権を有しています。


 南沙諸島では、他にベトナム、ブルネイ、マレーシア、台湾が領有権を主張していますが、中国はそれらを一切無視して南シナ海の九段線内にあるすべての海、島、砂州や礁を自分のものだと主張しています。フィリピンは国連海洋法条約に基づき中国を仲裁裁判所に提訴し、中国が主張する九段線は過剰で国際法に違反するとしてその正当性に異議を唱えています。中国は国連海洋法条約の締約国です。


 ですから、我々の問題は日本の尖閣諸島の問題とは異なります。日本は周辺海域を含む尖閣諸島を実質的に所有・支配し、東シナ海にある島への中国の申し立てを事実上、退けています。南シナ海・西フィリピン海の問題では、中国が九段線内にある海域を含むすべての領有を主張し、国連海洋法条約に準拠してEEZ及び大陸棚における領有権と管轄権を主張しているすべての国に対して異議を申し立てています。


 ――フィリピンはこうした中国の一方的な主張に対して、どのように対処しようとしているのですか。


 アスケ 先に述べたように、フィリピンはUNCLO附属書Ⅶ、第十五条、強制紛争解決制度に基づき、中国を仲裁裁判所に提訴し、九段線の正当性に異議を唱えています。 我々は国際法に従って解決していくことを目指していますが、中国は仲裁裁判に参加しないとし、五名から成る裁判の決定にも応じず、この問題は二国間交渉で解決すべきだと主張しています。フィリピンは、この問題には複数の権利主張国が関わっており、多国間で解決すべきだと説明しています。


 私たちは、南シナ海の問題に対する日本の支援に大変感謝しています。というのも、日本は、武力や脅迫に頼らず、国際法に則って平和的でルールに則った解決を主張しているからです。


 我々は、西フィリピン海での領有権と管轄権を侵害する中国の行為とわが国の漁師の安全を脅かす中国船の危険な行動に対して抗議しています。中国は、こうしたすべての抗議を無視し、「南シナ海の島々と周辺海域における中国の領有権に対しては議論の余地はなく、それは歴史的事実と国際法からも明白だ」と断言しています。


 それゆえ我々は、南シナ海での平和と安定そして海上貿易の自由を確保するため、日本、フィリピンそしてアメリカの協力の必要性を強く感じています。フィリピンと日本は、それぞれアメリカと防衛に関する協定を結んでいます。