フィリピン次席大使インタビュー② | 月刊誌『祖国と青年』応援ブログ

月刊誌『祖国と青年』応援ブログ

青木聖子とその仲間たちが、『祖国と青年』や日本協議会・日本青年協議会の活動を紹介したり、日々考えたことを綴ったりします!
(日本協議会・日本青年協議会の公式見解ではありません。)

 アスケ次席大使のインタビュー後半をお送りします。


 特にアキノ大統領が「日本国民が強く望み、特にこれが日本の国際的責任能力を高め、共通の目標である平和、安定や互いの繁栄への実現に近づくのであれば、日本の憲法を再検討するという提言に我々は警戒心を抱いていない」と指摘していることは重要です。



 ――一九九二年、フィリピンの駐留米軍は撤退しましたが、今年四月、フィリピンはアメリカと新たな防衛協力強化に関する協定(EDCA)を結びました。これは、フィリピン軍と米軍が軍事演習を行うことや、米国がフィリピン軍事基地に軍や設備を配置することなどを許可するものです。


 アスケ この話題を挙げてくれてありがとうございます。EDCAは、フィリピンとアメリカの協定で、米比相互防衛条約(MDT)履行の進展を想定しています。この協定はフィリピンと防衛条約同盟国であるアメリカとの間における下記のことを促進することを目的としています――相互運用、フィリピン国軍の近代化に向けた能力強化、フィリピン国軍の対外防衛の強化、海上警備、海上領域認識、そして人道支援と災害対応。主要な規定の中でも、EDCAは「フィリピンに恒久的な軍の駐留や軍事基地を確立するものではなく」、フィリピン政府の招きにより、アメリカはフィリピン国軍が所有し管理する施設内における指定区域を使用することができます。

 
 EDCAはオバマ大統領の中東からアジアへのピボット(基軸)政策に沿ったものです。この協定のもとでは、アメリカ軍艦はフィリピンの港に寄港することができ、戦闘機もフィリピンの空軍基地に着陸することができます。ただし、EDCAは日本がアメリカと結んでいる協定とは異なり、横須賀にあるような米軍基地を提供するものではありません。


 フィリピンとその他東南アジア諸国は、中国が尖閣諸島を含む東シナ海に一方的に防空識別圏を設定したように、南シナ海にも防空識別圏を確立するかもしれないという中国の脅威に懸念を示しています。ですから、フィリピンと日本は両国に対する共通の脅威に対して、協力して対処していかなければなりません。


 南シナ海の近隣諸国、つまり、アセアン十カ国の中国とアメリカに対する感情的な反応は、「THE JAPAN TIMES」(二〇一四年四月三十日)に掲載された上掲の政治風刺画に象徴されていると思います。近隣諸国は中国に対して「SHAKE」(震撼する)する一方、アメリカとは友好的に「SHAKE」(握手する)と、皮肉っています。





 ――六月に来日したフィリピンのアキノ大統領は、安倍首相との会談後の記者会見で、日本の集団的自衛権の行使について「国連の平和維持活動で同盟国の部隊が攻撃を受けた場合に、日本がその能力で他者を救援することは、必ずやメリットのあることだ」「平和、安定、相互繁栄という目標達成に近づくならば警戒の念は抱かない」と述べました。


 アスケ フィリピンの憲法には、「戦争放棄」に関する条項があります。フィリピンと日本は、平和を愛する国として、戦争を放棄しています。しかし、我々にも国際法に認められた正当な権利として自衛権を保持しています。これが、安倍首相の考える集団的自衛権の本質だと私は確信しています。
安部首相との会談後の記者会見で、アキノ大統領は「日本国民が強く望み、特にこれが日本の国際的責任能力を高め、共通の目標である平和、安定や互いの繁栄への実現に近づくのであれば、日本の憲法を再検討するという提言に我々は警戒心を抱いていない」と指摘しています。

 
 すべてのアセアン諸国は、中国の脅威と拮抗し対抗するため、そして南シナ海における「航行の自由」と「飛行の自由」という国際法の原則を保障するため、日本の支持と支援を必要としています。


 中国は日本やフィリピンに対して、軍事予算を増やし、地域の緊張を高めていると非難しています。これは悪意のあるレトリックです。日本もフィリピンも、各国の憲法で「戦争放棄」を法制化しています。ただし、私たちはあらゆる形の脅威、侵略、武力行使に対して自国を守る権利を有しています。これは戦争を行うこととは全く意味が異なります。


 フィリピンと日本は、中国との係争中の問題を平和的かつ国際法に則って解決しようと尽力しています。両国は中国が平和的に台頭し、東南アジア諸国の発展にむけて友好的な隣国となることを望みます。