図書紹介『だれが日本の領土を守るのか?』 | 月刊誌『祖国と青年』応援ブログ

月刊誌『祖国と青年』応援ブログ

青木聖子とその仲間たちが、『祖国と青年』や日本協議会・日本青年協議会の活動を紹介したり、日々考えたことを綴ったりします!
(日本協議会・日本青年協議会の公式見解ではありません。)

 「祖国と青年」で、現在「安全保障と自衛隊」を連載されている濱口和久さんが、新著『だれが日本の領土を守るのか?』を出されましたのでご紹介します。


月刊誌『祖国と青年』応援ブログ

 

 以下、7月号の「読書室」に掲載された鈴木編集長の書評です。


 私どもは目下、尖閣諸島を守る運動に取り組んでいるが、わが国が抱える領土問題はもちろん尖閣諸島のみではない。既に不法占拠されている北方領土、竹島があり、対馬、与那国などの国境の離島は常に外国の脅威にさらされている。こうした領土問題を地政学的観点から読み解くのが、濱口和久著『だれが日本の領土を守るのか?』(たちばな出版/本体千四百円)である。


 著者の濱口氏は、言わずと知れた本誌の連載「安全保障と自衛隊」の筆者である。本誌連載でも、具体的なデータ、事実関係を積み重ねることで、簡潔に問題点を明示されているが、本書でもハッと気付かされる指摘がちりばめられている。


 一例をあげれば、一般的に「沖縄には在日米軍基地・施設の約七五パーセントが集中している」と言われるが、著者は「これは大きな間違い」と指摘する。これは米軍が単独で使用している基地・施設の数字で、自衛隊が一緒に使用している三沢基地、厚木基地、岩国基地、座間基地などを加えて再計算すると、「沖縄県には日本全国の在日米軍基地・施設の約二五パーセント程度しかない」のである。


 このようにして、最近の情勢も含め領土問題の論点を広く網羅しているので、領土問題の基本資料として一冊手許に置いておきたい本である。


 著者はもともと自衛隊出身で、行動の人でもある。特に竹島問題では、平成十六年、日本政府が民間有志が申請した「竹島切手」の発行を拒否する事件に接するや、いち早く本籍を竹島に移すという行動に出た。また、同年島根県で設立された「県土・竹島を守る会」には設立世話人として参加し、県内での街頭活動や、県への「竹島の日」制定要請活動にも取り組んでいる。こうした著者自身の領土問題への取り組みについては、第二章で詳しく紹介されている。


 本書の中で特に印象に残ったのが、竹島の領有権問題を国際司法裁判所に付託した場合、「日本が敗訴することも覚悟する必要がある」との指摘である。二〇〇八年、ペドラ・ブランカ島の領有権を巡って、そもそも領有していたマレーシアが、シンガポールの百三十年間の実効支配に「何の申し立てもしていなかった」ために、国際司法裁判所が「領有権は後者に移転した」と判断したのである。もちろん、日本は韓国の竹島実効支配に対し、「申し立て」だけはしているので、この例をそのまま当てはめることはできないが、国際司法裁判所が歴史的由来よりも、継続的な実効支配の積み上げを重視していることは注目すべき事実である。


 著者は「領土問題とは『自国の領土が不当に奪われている状態をそのまま放置している国家が主権国家と言えるのか』という問題を日本人に提起している」と指摘するが、最終的に問われているのは日本人としての国家意識、気概であることを肝に銘じたい。