3月上旬に読了した本の紹介です。
浅学の男が独断と偏見で書いた読書評の様なものです。
文中は敬称略としました。
2023.12.10 第1刷発行で私の本は
2024.1.15 第2刷発行となっています。
新聞の書評に取り上げられていたので近くの本屋さんに取寄せて貰いました。
著者の清水俊史は、日本の仏教学者であり、2013年に佛教大学大学院で博士課程を
修了し、博士(文学)の学位を取得している。(40歳くらいかな?)
日本学術振興会特別研究員PDや佛教大学総合研究所特別研究員などを務めてきた。
著書に、『阿毘達磨仏教における業論の研究――説一切有部と上座部を中心に』『上座部仏教における聖典論の研究』(ともに大蔵出版)がある。(一部ネット情報)
日本の仏教研究において古代の伝文(お経)などから装飾神話を取り除き
ブッダ本人の実像に迫る研究は長く続けられて来た。
近年では中村元(1912~1999東大名誉教授)による研究がピークであったそうです。(私の本棚にも原始仏教関連の本が34冊並んでいた。その中の9冊は中村元の著書や訳本でした。)
著者は主に下記のテーマをブッダがどの様に考えていたかを詳細に読み解いて行く。
①平和主義 ②業と輪廻 ③階級差別 ④男女差別
近年の中村元などの見解では平和主義で、業と輪廻には無記(回答を控える)
各種の差別に関しても平等主義と解釈されて来た。
しかし著者によると、この解釈は現代人の理想像が反映されているだけで
実際のブッダの実像とは異るらしい。 実際のブッダは下記の通り。
①平和主義:戦争を肯定も否定もしない。
②業と輪廻:明らかに肯定していた。(信じていた。)
③階級差別:世俗での差別は肯定も否定もしてないが出家集団内では否定(平等)。
④男女差別:明らかに女性蔑視であった。(後に女性の出家も認める)
著者の五蘊についての解釈も従来と少し異なる様に感じた。
五蘊は人間を構成する5つの要素で、色(しき)は肉体を示すとなっていた。
従来の著書の大半は五蘊は心(我・魂・霊魂・精神・概念など)を構成して
行く5つの要素と考える方が多かった。
色(しき)は五感や心情への外界の刺激(存在)全てを表すとされて来た。
当時のインドに於けるバラモン教の呪縛を脱し、少し先行するジャイナ教の教え
とも異なるブッダの先駆性は縁起(現代の因果律)と無我の思想でしょうか。
無我とは我を構成する5つの要素(色・受・想・行・識)は何れも突き詰めれば
無常のもので無となり、我と言うものは存在しないと言う考えです。
著者のブッダ解釈は今までの解釈と全く異なりました。
この事が仏教研究界に大きな波紋を投げかけました。
あとがきに東大B教授との仏教論争の件があからさまに書かれていた。
ネットでも話題になっておりましたので長く成りますがコピペです。
【ネット情報:コピペ】
2016年より、Bはブッダゴーサの仏教史における位置づけを巡って、清水俊史と論争を行っていた。
2021年、大蔵出版のウェブサイト上で、清水の著書『上座部仏教における聖典論の研究』の出版に際し、「さる先生」が清水に研究不正があるとして清水および大蔵出版に出版停止を求める動きがあったが、第三者委員会で検討した結果不正はなかった、という声明が出された。
大蔵出版によれば、「さる先生」は「出版したら書評で清水を潰す。大蔵出版の姿勢も叩く」「清水君が出版をあきらめれば、彼の就職を応援する」という脅迫的ハラスメントを行っていたという。
2022年、佐々木閑*1)が論争を整理する評論を出し、「さる先生」がBであることを示唆し、2017年に行われた日本印度学仏教学会においてもハラスメントがあったと述べた。佐々木によれば、大蔵出版の声明後、全国紙からの取材もあったが、清水および大蔵出版は大きな動きに出ず、清水は一時学界でも行方知れずという状況にあったという。
2023年12月、清水は著書『ブッダという男』(ちくま新書)を刊行した。
同書のあとがきで、Bとその恩師である方から当時圧力を受けたこと、全国紙から取材もあったがBや某、およびBの指導教官だった方は取材を拒否したこと、清水自身は断筆するほど憔悴したが他の学者や出版人の後押しを受け復帰したこと、などを明かした。
2024年2月、Bはresearchmapにおいて、清水の2016年の論文に研究倫理上の問題があるため、論文発行元の佛教大学仏教学会に追補するよう請求したと発表し、加えて清水が主張するような出版妨害や圧力をかけたりはしていないと述べた。
これに対し清水も、同じくresearchmapにおいて、Bへの反論を発表し、Bの請求が不当なものであること、出版妨害やアカハラはあったことを述べた。
2月29日、佛教大学仏教学会は、清水の主張を認め、Bの請求を却下した。
*1:佐々木閑(1956~)仏教哲学専門の文学博士。
この方の本は”出家的人生のすすめ” 2015.8.17第1刷発行を読んでいた。