瀬口利幸(せぐちとしゆき)の思考日記A -12ページ目

スラれた内臓

 

 

「最悪だ・・・この世の終わりだ・・・」
電車内でスリに遭った僕は、交番に向かった。

 

 

「あのー・・・」
「はい」
書類を作成していた警官が顔を上げた。
「スリにあったんで、被害届を出しに来たんですけど」
「あー、そうですか。で、何をスラれました ?」
「終電で酔っ払って寝てたら、内臓を根こそぎ盗まれたんですよ・・・」
と言って僕は、コートの前を開き、パックリと口を開けたお腹を見せた。
「えー ! ! ! ・・・内臓を根こそぎ ! ! ! ・・・」
「はい・・・」
「なんで、生きてられるんですか ? ・・・内臓を根こそぎ盗まれてるのに」
「まあ、病は気からって言いますからね」
「気持ちでどうにかなるレベルじゃないでしょ」
「・・・でも、まあ、財布は盗られてなかったんで、不幸中の幸いですけどね」
「いやいや、不幸のど真ん中ですよ。内臓が一つも無いんですから・・・あなた、優先順位の付け方がおかしいんですよ。普通、内臓がダントツの一位ですよ。内臓に比べたら財布なんて、はるかに下の方ですよ」
「へー、時代は変わりましたね」
「いつの時代もそうですよ」
「なんか、凄くお腹が空いたんで、食べる物ないですか ?」
「お腹が空いたって・・・まあ、確かに空いてますけど、意味が違いますし・・・食べたって、ただ、体の中を通過するだけですよ」
「それにしても、犯人は、なんで内臓を盗んでいったんですかね ?」
「さあ・・・まあ、内臓が売買される事もあるって言いますからねえ・・・」
僕と警官が、そんな会話を交わしていると、スーツ姿の中年男性が、スーパーのレジ袋を手に交番に入って来た。
「あのー・・・」
「はい」
「落し物拾ったんですけど・・・」
そう言って、中年男性は、手にしていたレジ袋を警官に差し出した。
「これが落し物ですか ?」
警官は、それを受け取りながら聞いた。
「はい・・・内臓一式みたいなんですけど・・・」
「内臓一式 !!! ・・・」
「僕のですよ ! それ」
と言って僕は、そのレジ袋に手を伸ばした。
「ちょっと待ってください」
警官は、僕からレジ袋を遠ざけながら言った。
「どうしてですか ?」
「あなたは、内臓一式を落としたんじゃなくて、スラれたんでしょ」
「そりゃそうですけど、内臓一式の落し物なんて、僕の以外に考えられないでしょ」
「仮に、そうだとしても、落し物ですから、本人確認をしないと・・・」
「本人確認って言われても・・・あっ、そうだ ! 名前書いてますよ」
「名前 ? ・・・」
「ええ。小学校の時に、自分の持ち物全部に名前書かされたんで」
「内臓に名前 !?」
「ええ。内臓も自分の持ち物なんで、一応・・・」
「内臓に名前ねえ・・・」
警官は、納得できないような顔で、内臓を調べ始めた。
「あっ、本当だ。名前が書いてある」
内臓には、白いマジックで名前が書いてあった。
「あなたの名前は ?」
「田中一郎です」
と言って僕は、財布の中から免許証を取り出して見せた。
「確かに・・・あっ、分かった ! スリの犯人は、内臓を売り飛ばそうとして盗んだけど、名前が書いてあったから、足が付くと思って捨てて行ったんじゃないですか ?」
「ああ、なるほど・・・そうかもしれませんね」
「じゃあ、これは、お返しします」
警官が、レジ袋を僕に渡そうとした時、
「ちょっと待ってください」
中年男性が、それを制止した。
「なんですか ?」
「実は、私、外科医でして・・・」
「ああ・・・それで、内臓に対して抵抗が無かったんですね」
「さっき、内臓を確認した時、胃に、腫瘍らしい物を発見したんですよ」
「えっ !!! 腫瘍 !!? ・・・ガンですか ? 余命は何年ですか !?」
僕は、パニックになって外科医の男性に聞いた。
「余命って、内臓を根こそぎスラれた人が気にしますかね・・・本当なら、とっくに死んでるはずですよ」
警官が冷静に言った。
「まあまあ、落ち着いてください。私が、さっき見た感じでは初期段階だったんで、手術で腫瘍さえ取れば、100%治ると思いますよ」
「あー、良かったー !!!」
「良くないでしょ・・・内臓を根こそぎスラれてるのに・・・外科医としてどう思います ? この人、内臓を根こそぎスラれてるのに生きてるんですよ」
警官は、外科医に聞いた。
「まあ、病は気からって言いますからねえ・・・」
「お医者さんが、それ言います ?」
「早速なんですけど、ここで手術してもいいですか ?」
「えっ !!! ここで !? ・・・」
「ええ。簡単な手術なんで・・・丁度、今、往診の帰りで、簡単な手術道具なら持ってるんで・・・早い方がいいでしょ」
「えー・・・でも、僕、痛いの苦手なんですよね・・・」
「もう既に、お腹パックリ開いてますけど」
「麻酔は、かけてもらえるんですか ?」
「だから、お腹パックリンチョの時点で痛くないんだから、必要ないでしょ」
「じゃあ、手術始めてもいいですか ?」
「はい、お願いします」
こうして、患者本人に見守られながらの手術が始まった。
そして、あっという間に手術は終了した。
「手術は、無事、完了しましたよ」
「ありがとうございます」
「無事ではないですけどね」
「で、どうします ?」
外科医が、僕に聞いた。
「えっ ?」
「内臓」
「内臓 ?」
「このままにしておきます ?」
「ああ・・・」
「このままにしておけば、また、何か病気が見つかった時に、手術が簡単に済みますけど・・・」
「そうですねえ・・・でも、そうすると、常に、内臓をレジ袋に入れて持ち歩かなきゃいけないって事ですよね」
「そうなりますね」
「僕、手ぶらで歩きたい主義なんで、元に戻してもらっていいですか」
「そういう理由 !?」
「わかりました・・・あっ、そうだ ! ・・・もし、良かったら、内臓を戻した後のお腹にチャック付けときましょうか」
「えっ、チャック ?」
「ええ。今着ているフリースのチャックを切り取って、お腹に付けとけば、手術する時に、チャックを下ろすだけでいいから便利だし」
「ああ、それ、いいですね」
「いいのかよ」
外科医は、僕の望み通り、内臓を戻し、チャックを付けてくれた。
「なんか、さっきまで、凄くお腹が空いてたんですけど、やっと、満腹になりました」
僕は、チャックを付けてもらったお腹をさすりながら言った。
「だから、意味が違うって」
「そうだ、手術代を払わないと・・・いくらですか ? ・・・あっ、それに、内臓を拾ってもらったお礼も・・・」
「結構ですよ、凄く貴重な体験をさせていただいたんで・・・」
「いや、でも、そういうわけには・・・」
「いやいや、本当に。困った時はお互い様ですから・・・」
「困ってなかったと思いますけど」
「じゃあ、私はこれで・・・くれぐれも、お体を大切に」
そう言って、外科医は立ち去って行った。

 

股ズレ

 

 

めちゃめちゃ女好きの友人は、二股し過ぎて股ズレになった。

 

 

 

「怖いな・・・」
大学生の里奈は、崖沿いにある、幅50cm位しかない道を歩いていた。
右下には、数十mはある谷が広がっている。
しかし、やがてその道も途切れ、その代わりに、崖の上から一本の縄ばしごが垂れ下がっていた。
そして、その脇には、安全帯が置かれている。
見上げると、崖は、10m以上はあるように見えた。
「これ登るの !? ・・・」
里奈は、しばらくの間迷っていた。
帰ろうかなあ・・・
でも、ここまで来るのに、二三時間は歩いて来てるし・・・
また、その道を帰るのもなあ・・・
それに、どうしても会いたいし・・・
よし、登るか !
そう心に決めた里奈は、ポケットから説明書を取り出し、使い方を確認しながら安全帯を装着した。
そして、安全帯から延びている金属のフックを、縄ばしごの横のロープの部分に引っ掛け、恐る恐る登り始めた。
最初の内は、まずまず順調に登っていた里奈だったが、中間地点に差し掛かった頃、縄ばしごが、急に激しく揺れ始めた。
このまま順調に登らせては、縄ばしごの名がすたるとでも思ったのか。
それとも、縄ばしご自身、急に、この高さが怖くなって震え出したのか・・・
そして、追い討ちを掛けるように、新たな試練が押し寄せてきた。
それは風。
風が、まるで、自宅に帰って来たご主人様にじゃれ付くペットの犬のように、里奈の体にまとわり付いてきて、縄ばしごを更に激しく揺らした。
「キャー !!!」
里奈は、必死に縄ばしごにしがみ付いた。
なんで、縄ばしごなんか登って来ちゃったんだろう・・・
やっぱり、引き返しとけば良かった・・・
里奈の頭を占領していたのは後悔だけだった。
それから、どれ位の時間が過ぎたのだろう。
気付くと、風は止んでいた。
しかし、縄ばしごの方は、まだ揺れている。
と同時に、負けず嫌いな性格が影響したのか、里奈の脚も、縄ばしごに勝るとも劣らず、恐怖でガタガタと揺れていた。
すると、不思議な事が起こった。
縄ばしごと里奈の脚、それぞれの揺れがお互いの揺れを打ち消しあったのか、それまで激しく揺れていた縄ばしごが、ピタッと止まった。
今だ !
このチャンスを逃してなるものかと、里奈は、一気に縄ばしごを駆け上がった。
一歩ずつ、頂上が近付いて来る。
もう少し
あと少し・・・
縄ばしごを登り始めて20分後。
里奈は、やっとの思いで、頂上付近まで辿り着いた。
そして、右足に力を込めて体を押し上げ、手探りで、崖の上の掴める物を探していた。
その時、全体重を掛けていた右足が滑り、縄ばしごから足が外れた。
あっ !!!
と思った次の瞬間、里奈の右手を、細くてしなやかな手が、しっかりと握り締めてくれた。
里奈が、縄ばしごに足を掛け直してから見上げると、そこには・・・
「ようこそ・・・握手会へ・・・」
里奈が大ファンのアイドル、大城卓也が爽やかに微笑んでいた。
キャー !!!
卓也ー !!!
と、感動したかった里奈だったが・・・
そんな気力は里奈には残っておらず、卓也に、崖の上まで引っ張り上げてもらうだけで精一杯だった。
そして、クタクタになった里奈が地面にへたり込んでいると、
「これ、どうぞ」
マネージャーらしきスーツ姿の男が、ペットボトルのお茶を差し出してくれた。
「・・・ありがとうございます」
里奈は、ペットボトルを受け取ると、一気に飲み干した。
そして、一息付いた里奈が疑問を口にした。
「なんで、こんな所で握手会なんかやったんですか ?」
「新曲のタイトルが『崖』なんで、話題性があるかなと思いまして」
「話題性って・・・そもそも、アイドルが『崖』なんて曲出したって売れないでしょ」
そう言いながら辺りを見回すと、さっきまで近くにいたはずの卓也の姿が、どこにも見当たらなかった。
「あれっ !? ・・・卓也は ?」
「あっ、もう、握手会も終わって帰る準備を始めてるんで、事務所の車で待機してますけど」
「事務所の車 !!?」
男の視線の先を見ると、雑草や生い茂った木で分かり難かったが、確かに、ワンボックスカーが止まっていた。
「車で来れるんですか !!?」
「ええ。そんなに高い山じゃないんで、崖の反対側からなら」
「じゃあ、なんで崖を登らせたんですか !?」
「それは、なんと言っても話題性が・・・」
「話題性、話題性って・・・マスコミなんて、一人も来てないじゃないですか !」
「それはねえ・・・ゴッホみたいに、生前は全く評価されなくても、死後、めちゃめちゃ評価されるっていうケースもありますし・・・」
「今、話題にならないと意味ないでしょ !」
「まあ、そう、カッカなさらずに・・・お腹空いてらっしゃるんじゃないですか ?」
「お腹 !? ・・・まあ、空いてますけど・・・何か、食べ物でもあるんですか ?」
「ええ。コンビニがあるんで、良かったら・・・」
「コンビニ !!?」
「今時、コンビニくらいで驚かないでくださいよ」
「いやいや、驚くでしょ ! 山の頂上にコンビニがあるなんて聞いたら」
男に付いて行くと、さっきまでは見えなかったが、大きな岩の陰に本当にコンビニがあった。
「なんで、こんな所に !?」
「いや、実はね、私の知り合いに、コンビニをオープンさせようとしていた人がいましてね」
「・・・」
「で、その人に、この握手会の話をしたら、俺もコンビニをやるからには、ぜひ天辺をとりたい。それには、山の天辺にコンビニを造るのが一番だ、とおっしゃいましてね」
「・・・」
「で、お互いの利害関係が完全に一致しましたもんで・・・」
「一致してますかね・・・」
「まあ、景観に配慮して、岩の陰に造ってもらいましたけど・・・」
「こっちからは丸見えなんですけど・・・ていうか、誰も来ないでしょ、こんな所」
「まあ、これがいわゆる、ウィンウィンの関係って奴ですか」
「完全に、ロスロスでしょ」
その時、里奈は、重大な事に気付いた。
「そういえば ! さっき、もう握手会は終わったって言ってましたよね」
「ええ」
「私、まだ、握手してもらってないんですけど !」
「えっ !? ・・・したじゃないですか」
「してないですよ !」
「しましたよ。縄ばしごから落ちそうになって、崖の上に引き上げてもらう時に」
里奈は、その場面を思い出す。
「えーっ !! ・・・あれで終わりですか !!?」
「もちろん・・・ちゃんと握手されてますし・・・そもそも、そういう主旨の握手会ですし」
「そういう主旨 ?」
「ええ。崖から引き上げてもらう時に手を握ったのを握手とみなすって・・・ちゃんと、説明書にも書いてあったでしょ」
「ええっ !? ・・・」
里奈が説明書を見直すと、確かに、そう書いてあった。
「でも・・・パニック状態で、全然覚えてないし・・・もう一回、ちゃんと握手させてくださいよ !」
「それは駄目ですよ。もう、握手はされてるわけですし・・・もう一回握手したいんなら、もう一枚CD買っていただかないと」
「嫌ですよ ! そんなの。また、崖登って来なきゃいけないんでしょ ?」
「ええ」
「同じ事の繰り返しじゃないですか」
「まあ、そうなりますね」
「お願いしますよ。わざわざ、こんな所まで来たんだから。もう一回、ちゃんと握手させてください !」
「いやいや、それは駄目です。他のファンの方にも、示しが付きませんし」
「私しか、いないじゃないですか !」
「いやいや、本当に、それは・・・コンプライアンスとやらが、もう、訳が分からない事になるんで・・・」
この男と話していても、らちが明かないと思った里奈は、卓也に直接訴えかける為に、男の横を通り抜けて車に向かおうとした。
「ちょっと ! どうする気ですか ?」
男は、里奈の前に立ちはだかった。
「卓也に、直接お願いします」
「駄目だって言ってるじゃないですか」
仕方なく、里奈が横に移動すると、男も移動して、また、前に立ちはだかった。
「どいてください」
「駄目です」
にらみ合う事、数秒間。
意地でも握手してもらいたい里奈は、一瞬の隙を付いて、男の横を強引に突破しようとした。
次の瞬間。
里奈は、男によって、地面に組み伏せられていた。
「卓也ー !! ・・・卓也ー !!!」
里奈の必死の呼び掛けにも、車のドアが開く事は無かった。
・・・こうして、里奈は卓也のファンを辞めた。

 

 

 

 

最終打席

 

 

僕の友人は、高校生のとき野球部に在籍していた。
友人には、当時、彼女がいて仲良く付き合っていたが、一つだけ、彼女に対して不満があった。
それは、彼女の胸が小さいという事だった。
そんな友人が、高校三年生の夏の大会が終わった後、デートをしている時、初めて彼女の胸を触ろうとした。
しかし、彼女の胸が小さかった為、友人は空振りをした。
「あれっ ?」
その後も二回トライしてみたが結果は同じで、三回連続で空振りした友人は三振となり、結果的に、それが高校時代の最終打席となった。

 

反復横跳び引っ越し

 

 

日曜日の午後、僕が、アパートの部屋でくつろいでいると、不意に、ドアがノックされた。
ドアを開けると、左隣に住んでいる男性が、紙袋を手に立っていた。
「あの、今日、引っ越す事になったんで、あいさつに伺いました」
「ああ、そうなんですか、わざわざどうも」
「これ、今までお世話になったお礼です」
と言って、紙袋を僕に渡した。
「いえいえ、こちらこそ。すいません、ご丁寧に」

 


数時間後、再び、ドアがノックされた。
ドアを開けると、さっき引っ越して行った、左隣に住んでいた男性が立っていた。
「どうしたんですか ?」
「あの、今度、右隣に引っ越してきた者で、あいさつに伺いました」
「右隣に !?」
「はい」
「左隣から右隣に !?」
「はい・・・いやー、良かったです。お隣さんが、あなたみたいな優しそうな方で・・・不安だったんですよ、変な人だったらどうしようって」
「いや、さっきまでもずっと、お隣さんでしたけど・・・」
「なんだか、ずっと以前からの知り合いみたいな気がします」
「その通りですけど・・・さっきまで、左隣に住んでらっしゃいましたから」
「ああ、やっぱり !! ・・・いやー、どこかでお見かけした事ある顔だなあとは思ってたんですけど・・・世の中には、自分と似た人が三人いるって言うじゃないですか。ひょっとしたら、ただのそっくりさんなのかなあと思って・・・」

「そんなわけないでしょ」
「あのー、申し訳ないんですけど、さっき渡した紙袋、持って来ていただけます ?」
「えっ ?」
僕は、言われたとおり、紙袋を持って来て渡した。
それを受け取った男性は、
「あの、これ、隣に引っ越してきたので、お近づきの印に・・・」
と言って、また、紙袋を僕に渡してきた。
「なんなんですか ! 面倒臭いなあ」
「送料無料です」
「そりゃそうでしょ。手渡しただけで、業者を介してないんですから」
「で、一つお願いがあるんですけど・・・」
「なんですか ?」
「あなたに引っ越していただきたいんですけど」
「えっ !? 引っ越す ? ・・・僕が ?」
「はい」
「なんでですか ?」
「引っ越しで反復横跳びしたいんですよ」
「引っ越しで反復横跳び !? ・・・」
「ええ・・・、あなたが引っ越していただければ、左隣も、まだ空いてるんで、引っ越しで反復横跳びができるじゃないですか」
「できるじゃないですかって言われても・・・」
「実は、僕、高校の体育教師やってまして」
「はあ・・・」

「先生は、引っ越しでも反復横跳びやってるんだぞ ! っていうのを、生徒に見せ付けたいんですよ」
「・・・」
「先生って凄いな。引っ越しでも反復横跳びするなんて、体育教師の鑑だなってなるじゃないですか」
「なりますかね ?」
「じゃないと、生徒に示しが付かないですし・・・」
「・・・」
「だから、あなたが引っ越していただければ、思う存分、反復横跳びできるんですけど・・・引っ越していただけないですかね」
「嫌に決まってるでしょ !!」
バタン !!