会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。
会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。著者 青野慶久そもそもカイシャは実在しない。働くひとは社員。建物は仕事する場所。机や椅子は備品。カイシャとは少なくとも目に見えるものではない。その答えのカギを握るのは「会社法」。集団で活動しやすくするために決められている。カイシャを生み出した創業者が死んでも、カイシャは死なない。とても美味しい「代表取締役」のポジション。お金の使い方や、時間のコントロールなど、自分の好きなように決められる。公私混同し、痛みを伴わず感覚が麻痺してる人もいる。問われるのは、カイシャではなく、生身の人間である代表取締役が本当に信頼できる人なのかどうか。年功序列。「我慢すればするほど、もらえるお金が増えやすい仕組み」になっている。「今やめると損するでぇ。もうちょっと我慢した方がええんちゃうか?」。となる。自分主体で、楽しく働きたいと思ったら、どんな人が代表なのかをよく見ておいたほうがいい。この代表のためなら働いてもいいなと思う気持ちが持てないと、我慢ばかりのつらい時間を過ごすことになってしまう。創業時、カイシャが作られたときは、元々ははっきりした目的があったはず。カイシャが大きくなり、世間に知られていくと、経営者が周りの目を気にするようになり、企業理念に「お客様第一」と掲げていても、実際の現場では「今月のノルマ達成が一番大事だ」と、優先順位が入れ替わってしまう。カイシャの理念に人を惹きつける力がなくなっていったら、そこでリフレッシュしないと、カイシャに人が集まる目的がなくなってしまう。※企業理念⇒社会でまだ解決できていないニーズを満たそうとして作られるもの。組織に最も重要なことは、社員が一体感を持って取り組める「企業理念」自分は何のために働くのか、企業理念は働く一人ひとりにとって、モチベーションの根幹なのである。カイシャと事業は別物。継続すべきは顧客に必要な事業。カイシャが生まれるとき、それはとてもドラマティックな瞬間。理念がぼんやりしたカイシャは、さっさと解散してしまって、新しくエキサイティングなカイシャを作ったほうが、遥かに楽しい。今の時代、「楽しく働ける環境」を探すのであれば、売上を基準にカイシャを選ぶのは危険。楽しく働けるカイシャかどうかを判断する際には、利益よりも、どこにどれくらい分配しているか、というところを見たほうがいい。伊那食品加工業の塚越会長「利益はカス」。いただいたお金を仕入先、パートナー、従業員、社会に還元して、絞った残りカスが利益。「どちらかというと従業員の給料のほうが目的で、利益はあくまでもカス。そのほうが少なくとも働くひとには幸せ」。分配することが目的。オフィス環境が快適で、そのカイシャに通うのが楽しくて、そこで働く人たちがいい気分で仕事ができて、いい仕事ができたのでお客様が喜ぶとなれば、関係する人たりはみんな幸せになれる。社会に対してきちんと価値を生み出して売上を上げているのか?それとも巧みに競合を排除することで楽に売上や利益を上げているのか?そこを見ないといけない。クラウドサービスの浸透により、人間はもっと柔軟に働ける。時間や場所にとらわれず、育児や介護をしながらでも社会に貢献できる。そうなれば、日本で起きている少子高齢化の問題を解決できるかもしれない。社会を変えていかなければならない。赤字のカイシャは悪い会社か?法人税等、払われた税金が本当に国民のためになっているのかどうか、わからない。税金を払う代わりに、自分たちが自分たちで納得の行くことにお金を使ってもいいんじゃないか。税金が社会のために使われていない。むしろ法人税を払って喜んでいてはいけないんじゃないか。自分たちが集めたお金は、自分たちの理念を実現するために、徹底的に自分たちで責任を持って使っていこう。カイシャの利益が出ずに法人税を払わなかったとしても、恥じる必要はまったくない。面白いアイデアを思いついた人が、クラウドファンディングなどの仕組みを使ってたくさんのお金を集められるようになった。新しいビジネスにリスクをとって資金を提供するベンチャーキャピタルも増えている。そこで大事になってくるのが、やはり理念、夢、ビジョン。「協力したい」と思えるようなビジョンがあるかどうか。イノベーションを起こし、長期で大きな利益を出すために、現状に甘んじることなくチャレンジするのが成功者。カイシャの代表の思いと自分の思い、この二つがしっかり重なっていると、仕事が楽しくなる。これが基本。自分がカイシャで得たい報酬は何なのか。お金以外の報酬に目を向けることができれば、楽しく働けるカイシャを選びやすくなる。これからの時代は、70歳、80歳まで働いていくことが珍しくない社会になる。自分が楽しく働くために、まず「カイシャ、楽しいですか?」と聞く。ワクワクして働くための思考法「モチベーション創造メソッド」モチベーションが高い状態とは「やりたい」「やれる」「やるべき」という3つの条件が重なっている。「やりたい」仕事はモチベーションが上がる。ひとは「やれる」と思っていないことを楽しめるようにはできていない。自分のスキルの向上によって乗り越えられると信じているときは、モチベーション高く取り組むことができる。「やるべき」というのは周囲からきたいされているかどうか。周りから嫌いされないことをやっても、残念ながら感謝されることがない。「やりたい」のポイントは「変化する」。自問自答を繰り返し、自分の「やりたい」を把握し続ける必要がある。答えは自分の中にしかない。「やれる」のポイントは、「拡大可能」だということ。素直に「人の力を借りる」のがよい。そのために大事なのが「頼むスキル」。しかし単純にお願いしてもダメ。相手のモチベーションもあげなければ動かない。相手の「やりたい」ことを理解し、相手が「やるべき」ことだと感じてもらえるように、周りの環境を整えていく。仕事の意義や報酬を伝えていく。「やるべき」の難しいところは、周囲からのどの期待にどれだけ応えるか、という選択を迫られること。自分で意思決定を行い、そしてその責任を取っていく。自分の意志によって、何かを選択し、その結果を受け入れる覚悟をする。楽しく働きたいのであれば、常に仕事を整理する、考える。自分がやりたいと思っている仕事ができないなんて、どのカイシャでもよくはる話。頭を使って工夫すれば、自らモチベーションを創り出せる。お互いにWin-Winになる交点を探す。Win-LOOSE、LOOSE-Win、その関係になってしまうところを、深く考慮して、そして交渉してふたりとも得するカタチに持っていく。「衝突」とネガティブに捉えがちだが、じつはとてもクリエイティブな瞬間で、これこそが仕事の醍醐味とも言える。コンセプトとは、「相手に何と言わせたいのか」という定義。相手はどんなコンセプトを望んでいるのか。自分はどんなコンセプトを望んでいるのか、その両方を満たすための手段を考える。これが交渉の基本。交渉や議論ができるようになると、相手の理想を確認し、そこに自分の理想を重ねていけるようになる。そうなれば、相手も楽しいし、自分も楽しくなる。交渉力は、楽しく働くためにとても大切なスキル。どの選択肢を取るにしても、自分で選択して、自分で責任を取る覚悟が大事。他人のせいにしているうちは、主体性から生まれる楽しさを享受できない。経営者は外圧に弱く、内圧に強いという一面がある。経営者は、社会の風評は気にするが、社員の風評はあまり気にしない人が多い。「給料をはらってるんだから、、、」社員を下に見ているのかもしれない。ひとりでできないことは、チームを組んでやる。情報は「発信するところに集まる」という性質がある。たくさんの情報を集めている人は、たいていたくさんの情報を発信している。自分から発信しないと、なかなか見つけてもらえない。情報を発信することは、共感する人を呼んでくるための基本戦略。ひとに見つけてもらうためのひとつのキーワードは「ユニークさ」。すでに量が溢れている状態においては、質を重視した、つまりエッジの効いたユニークさがないと、注目を集めることが出来ない。今までの製品と差別化できれば、利益率を高めることにもつながる。これからの時代は、自分という「製品」がコモディティ化の波に飲み込まれないよう、個性を磨いていく必要がある。いかにユニークさを出すか。ひとつの鍵は「掛け算」の発想。たとえば「クラウド」と「農業」。どちらも100人にひとりのスキルだったとしても、ふたつを組み合わせると10,000人にひとりの貴重なスキルになる。イノベーションは「新結合」。つまり「掛け算」ただ、ニーズがあるかどうかは意外とわからないもの。判断基準は「物の豊かさより心の豊かさ」。現代はグローバル化が進み、人件費の安い人たちが量の勝負を挑んでくる。日本のカイシャよりもはるかに大規模なグローバル企業が、規模を生かして効率化の進んだ勝負を仕掛けてくる。もしくは、多様なニーズに応えるべく、多様なカイシャが競争に参加してくる。さらに、そうやって量さえこなせればいい仕事は、どんどんAIやロボットに置き換わっていく。頑張っていればなんとかなった時代は終わった。いつまでも量の勝負を続けるのではなく、質の勝負に転換しなければならない時代がきている。質の勝負に必要なのはアイデア。ニーズの多様化に応えるための差別化戦略。独自のこだわり。イノベーティブ、クリエイティブなアイデアは、多様な個性から生まれる。量の競争は、量が多い方が勝つようにできている。例えば、今治のタオル。佐藤可士和が始めた「ブランドづくり」。他国のタオルとは違う「やわらかさ」「軽さ」などの特徴を明確にするとともに、「5秒ルール」と呼ばれる厳しい吸水性などの基準を作り、「今治タオル」のブランドを作っていった。結果、タオル職人がちゃんと儲かるようになった。そしてなにより、そのことを誇りに思い、楽しく働けるようになった。いいタオルを作りたい人が、いいタオルを作って、それが世界でも認められた。今治のタオル産業は、量から質への転換を遂げた。「自分らしいタオル」。キーワードは量から質。何かを残して何かを捨てる、という取捨選択が必要。(ランチェスター戦略も同様)顧客ニーズの中でも、自分たちが応えられるニーズに絞り込む。そのニーズに関しては、圧倒的な質をもって顧客の満足を獲得する。何倍ものお金を払ってでも買いたい人を想像し、その人のためのマーケティング活動をする。自分自身の個性的なこだわりこそが、質を追求することに繋がる時代になってきた。人は一人ひとりが違う存在。好きなことも違えば、嫌いなことも違う。好きなことをどんどんやればいいし、嫌いなことは人に任せたらいい。過去に残した成果ではなく、未来に対する期待値で年俸が決められる時代がやってくる。人件費が高くなり、そして労働人口が減少している今の局面において、もっと働くひとりひとりの個性に目を配り、市場性に基づいて給与を決める仕組みに変化する必要がある。自分のスキルを伸ばし、市場価値を高める場所を作ること。「すごい雇用」とは。「他のカイシャでは採用されない人」とか、「制限が多い人」とか、「採用するのに勇気がいる人」を採用すること。例えば「1日に4時間しか働けない」「週に3日しか働けない」「オフィスに出社することが難しい」・・・そういうひとたちをたくさん採用し、活躍してもらえるカイシャはすごい。制限のある人たちを生かすには、高いマネジメント力が必要。従業員を一律に扱うのではなく、一人ひとりの個性に注目し、その個性を生かすための戦略を考え抜く必要がある。少子高齢化による人で不足など社会的な儒教が変わってきたことで、「すごくない雇用」をしているカイシャは、むしろ厳しい状況に追い込まれるつつある。私たちが「楽しく働ける職場」にこだわるのは、それが社員ひとりひとりにとって大きな報酬だと思う。それば人生の充実度に直結する。「楽しい」はメンバーにとって報酬であると同時に、重要な経営戦略だと考える。長期的に差別化できる「質」を追求するためには、ビジョンへの強い思いが必要。本来、人は多様。多様な人材のポテンシャルを大いに活かす2つの触媒。「公明正大」と「自立」。「公明正大」とは嘘をつかないこと、そして情報を隠さないこと。「自立」とは、自分で責任を持って行動を起こすということ。面白い化学反応が起き始めると、その変化に興味を持った人が集まってくる。さらに、様々な背景から様々な意見が出され、誰も予想できなかった面白いアイデアに昇華されていく。萎みゆくこれからの時代、既存の活動による目標は下げざるを得ない。足してほしいのは、気合や根性による目標数字のストレッチではなく、今までになかった新しいアイデアとチャレンジ。現場で様々な実験を繰り返し、情報を共有し、議論し、未来に向けたチャレンジを続けていく。多様な個性を生かすカイシャでは、「貢献」と「感謝」が大きな報酬となる。成果主義は個人プレーを促進しがち。一方、市場主義は、より多面的に個人を尊重できる。本人の成果だけでなく、他のメンバーへの貢献も評価できる。多様な意見を奨励し、活発に議論できるカイシャでは、社員の学びも早くなる。多様な意見を尊重する風土は、成長の阻害要因を取り除く。人の意見に耳を傾けられなくなったとき、成長は止まる。重要なのは、ビジョンに向かってベストを尽くしているか。いちばん大事なのは、ビジョンに沿って判断しているかどうか。ということ。カイシャが職場として提供できる楽しさとは、仲間と同じビジョンに向かう一体感、個性を活かした貢献、そしてお互いの感謝。活動が顧客の喜びを生むとともに、その先にある社会貢献への広がり。それらがカイシャという仕組みを生かして得られる「楽しさ」。「デジタル・ディスラプター」最新のデジタル技術を活用する企業が、既存事業者が築いてきたビジネスモデルを破壊し、新しいビジネスモデルの想像者になること。「デスバイAmazon」という言葉もあるとおり、様々な業種の企業が不振に陥った。日本の大企業は、世界の中小企業に過ぎない。今まで既得権益で利益を上げていた日本の大企業たちが、短期間で収益を大幅に悪化させるというシナリオは、決して的はずれの予想ではない。少子高齢化による働き手の減少を受けて、日本では人工知能やロボットの活用が、積極的に進むだろうと予想される。上手に無人化を進めた企業は、人件費を削減することができるから、今まで以上に利益を上げ、さらに広範囲に無人化を進めていくと思われる。これからの時代は、やりたくないことはどんどん機械に任せていくことになっていくであろう。日本では、失墜すべきカイシャが失墜してこなかったから、カイシャの新陳代謝が遅れている。これから変わりゆく新しい環境を生かせるかどうかは、自分自身の心の壁を乗り越え、本当に楽しいことを楽しもうと行動できるかどうかにかかっている。 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