
新宿。 初めて足を踏み入れたのはいつだろう。 中学生の頃、西新宿の輸入盤店には何度か行った。どうしても欲しいレコードがあったのだ。70年代半ば頃の話だ。 高校に入ると誰でも行動がアクティブになるよね。今はもうない新宿厚生年金会館にはライヴを見る目的で何度か行った。新宿ロフトには何度も行ったよ。80年代初頭、西新宿のあのあたりを歩けば、必ずひとりふたりのパンクファッションに出くわした。そんな時代だった。
『竜二』という青春映画をご存じだろうか。あの映画は、公開時に新宿で観た。収容・数十人規模の小さな映画館だった。一緒に行った女性の勧めだったのだが、家庭を捨てた男を黙って行かせた永島暎子に、彼女がいたく感激していたのを思い出す。今はそんな女性っているのかな。 金子正次は鮮烈な姿をスクリーンに刻んで、最後に新宿で弾けて逝ってしまった。あれ以来、あの映画を観て何も感じない男は信用しないことにしている。それにしても「男らしい」とか「女らしい」という言葉を、相手の顔色を見ながら話さなければならない今の時代って何なのだろう。

新都心交差点歩道橋から捉えたショット。 現在でもテレビドラマや映画でたまに見かけるアングルです。『竜二』でも

歌舞伎町タテハナビル。映画『竜二』の聖地のひとつ。

YUNIKA VISION。 アルタヴィジョンはもうない。
90年代に入ると、イギリスの大型外資系音楽店舗が2つ、日本に進出してきて、日本の業界は激動の時代に突入した。新宿店にいた5年ほどは業界の先端に居たわけで、エキサイティングな毎日であったことは確かだ。いろいろな種類の人間と音楽についてを話すことが出来たからね。
新宿は今も好きだ。 正と負が混ざり合って得体の知れない混沌としたエネルギーを発している。ただ人があふれているわけではなく、普通の人間も特殊な人間も混ざりあって動いている街。店のほとんどが入れ替わってしまった現在も、そのエネルギーの本質は変わっていない気がする。お上がいくらクリーンにしたって、人間の欲望に根差したものはいずれ戻って来る。そういうものだ。

変わりゆく風景。小田急解体。

歌舞伎町の新名所といわれて久しいゴジラ

2023年オープン、東急歌舞伎町タワー。地上48階、約225m。 かつてよく利用した映画館、ミラノ座がこの地にありました。 欲望を見下ろす最新高層建築。 アンバランスな気持ち悪さが21世紀の歌舞伎町を象徴している。
中央線に乗って新宿に向かう時、車窓からは近づいてくる高層ビル群が見える。都会の心臓へと向かっていくようで、10代の頃はその景色にいつもわくわくしていた。 現在もその時の気持ちを思い出す時がある。あの高層ビル群の真ん中にステージを作って演奏したバンドがいたけれど、彼等はどんな気持ちだっっただろう。
どぶ川に真っ赤な薔薇を
散らしたようなここが吹き溜まり

今回はいつもの「です・ます文体」ではなく「常体」で文章にしてみました。
