デイヴィッド・サンボーン | Get Up And Go !

Get Up And Go !

音楽を中心に、映画、文芸、スポーツ など・・・。

より高く! より深く! けれど優雅に・・・ 冗談も好きなんですけどね (*゚.゚)ゞ







アメリカのジャズ・サックス奏者、デイヴィッド・サンボーン氏が、現地時間2024年5月12日に死去されました。 78歳。ここ数年 前立腺がんと闘っていたそうです。

ジャズ/フュージョンという分野で語られてきた人ではあります。 アルト・サックス・プレイヤーとしてリーダー作は20枚を超え、グラミー賞も受賞しています。 ですが、ポップ/ロックを好んで聴く洋楽世代であっても、サンボーンのプレイを聴いたことのない人はおそらくいないでしょう。

皆さんが好きなアーティストたち。 例えばビリー・ジョエル、エルトン・ジョン、エリック・クラプトン、ローリング・ストーンズ、デヴィッド・ボウイ、ブルース・スプリングスティン、スティーヴィー・ワンダー、トッド・ラングレンなどなど。 皆さんが持っているそれらアーティストのアルバムのクレジットを探せば、必ず David Sanborn の名前を見つけることができるはずです。伴奏者としても、サンボーンは引っ張りだこであったということです。

個人的な話になりますが、90年代の半ば頃の数年間。 ジャズ売り場を担当していたことがあります。 サンボーンは人気アーティストであり、新作がリリースされれば必ず売れました。最も思い出に残るアルバムは、95年にリリースされた2枚のアルバム『Pearls』と『Love Songs』 です。

ファンキーで乗りの良いプレイを特徴とするサンボーンですが、この2枚のアルバムでは、やはりサンボーンのプレイの特徴である "歌心" の部分を前面に出しての演奏。サンボーンのアルバムの中では希少とも言えるバラード集です。これはすべての楽器演奏に言える事かも知れませんが、遅いテンポのバラード演奏こそ、プレイヤーとしての力量が出るんですね。

『Pearls』にはストリングスまで入っています。アルバム全体がゴージャスです。サンボーンの音は、一聴してわかる特徴を持っていますが、このアルバムはサンボーン独特の泣きのプレイが全開となっています。当時は大好きなアルバムで随分と聴き込んだのですが、今回あらためて聴き直してみて、現在のほうがさらにしっくり入ってくることに気づきました。

シャーディーの「Perals」、レオン・ラッセルの「This Masquerade」「Superstar」、プラターズの「Smoke Gets In Your Eyes」など、名曲、スタンダード曲で構成された、バラード集です。夜、静かに聞きたいときにはお薦めのアルバムです。

以下「Everything Must Change」は、最も好きな曲です。





もう一枚の『Love Songs』は、同じ95年にリリースとなったアルバム。 サンボーンのアルバムの中からラヴ・ソングだけを選び出し構成したコンピレーション・アルバムです。日本盤には「ベスト・オブ・デイヴィッド・サンボーン Vol.2」という邦題がついています。こちらはサンボーンのオリジナル曲中心で構成されています。

サンボーンのプレイは、いわゆるジャズ的なアプローチによる演奏というよりもメロディックなフレーズを特徴としています。「シンガーのようにサックスを吹きたい」とはサンボーン自身の言葉ですが、それがデイヴィッド・サンボーンの良さであり、日本でも人気があったことの大きな要因であったと考えています。

アルバムの最後に収録されているのは、リンダ・ロンシュタッドとのコラボレーションによる「The Water Is Wide」。『Pearls』の日本盤にも、ボーナストラックとして収録されています。 スコットランド民謡として知られる有名な曲です。多くの歌手によって歌い継がれてきた素晴らしい曲です。1979年、カーラ・ボノフによって歌われた時には "悲しみの水辺" という邦題がついていました。

この曲のサンボーンの演奏は素晴らしいの一言に尽きます。単なる伴奏ではなく、リンダ・ロンシュタッドの歌に呼応して、サックスで歌っているんですね。リンダとサンボーンのデュエットですね。

歌心に溢れたこの2枚のアルバムを、しばらくは聴くことになりそうです。










R.I.P.
David William Sanborn
July 30 1945 - May 12 2024