ビートルズとグラミー賞 | Get Up And Go !

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ビートルズの「I'm Only Sleeping」が、今年グラミー賞を受賞しました。最優秀ミュージックビデオという賞です。 そう言われても、「ビートルズは50年以上前に解散したグループだし、だいたいがビートルズとグラミー賞ってなんかピンとこないよね」、というのが大方の反応ではないでしょうか。と言ってもビートルズは何度もグラミー賞を受賞しています。部門は様々ですが。

もはやどんな賞よりも大きな存在であるのがビートルズだし、それは現役活動中であった60年代からそうであったはずです。受賞によってビートルズに箔がついたなんてことはなかったと思います。ただ、ビートルズを音楽家として最初バカにしていた当時の大人たちからすると、自らの見識の誤りを "見直した" にシレっと転化し、言い訳とするために賞を与えたなんてことはあったかもしれません。

おそらくはノミネートされた「Yesterday」(1966) あたりからではないでしょうか。あの曲が発表されるや、ジャズ歌手などのいわゆる大人のスタンダード歌手たちが次々にカバーし始めたと言いますからね。決定的になったのはアルバム『RUBBER SOUL』に収録された「Michelle」だと推測します。1967年、グラミー賞の ソング・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。「正式に才能を認めます」という、大人たちの上からの権威付けが透けて見えるようです。これは考えすぎかもしれませんが。





「Michelle」の実質的な作者であるポール・マッカートニーは受賞を素直に喜んだでしょう。 ポールはロック・ミュージシャンである前に音楽家であるという、そういったタイプです。ジョン・レノンのように、権威者たちの前で「宝石じゃらじゃら」なんてことは、決して言わない人ですからね。

2010年、ポール・マッカトニーがホワイトハウスにおいて、オバマ大統領とミシェル夫人の前で「Michelle」を歌ったというのは、象徴的な出来事であり、運命的な出来事であったようにも思います。





ビートルズは、活動中に6個のグラミー賞を受賞しています。毎年最も注目されるソング・オブ・ザ・イヤー(最優秀楽曲賞)は、「Michelle」の1回だけです。 解散後も7個受賞しています。今年 最優秀ミュージック・ビデオ賞を受賞した「I'm Only Sleeping」は、ジョン・レノンによって作られた曲です。

ジョン・レノンは天国で喜んでいるとは思いますが、「なんだよ!曲そのものじゃなくて、映像が評価されたのかよ!」なんてことも言ってそうですが。もっともジョンは、賞だの権威だのには興味はなかったみたいですからね。女王陛下に勲章を突っ返すなんてことは、ポールにはけっして出来ません。


I'm Only Sleeping (1967)
私たちがグラミー賞という場合は、たいていがポピュラー・ミュージックの分野における最優秀アルバム賞、最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞といったところを指します (持論としては、最優秀楽曲賞は "ビートルズ賞" と名称を変えるべきだと考えています)。 実際には84ものカテゴリーによって分けられています。ノミネートを合わせれば、膨大な数の楽曲、アーティスト、あるいは音楽制作者たちがこの賞に関わっていることになります。

今年「I'm Only Sleeping」が受賞したのは、最優秀ミュージック・ビデオという賞です。それがどれだけ価値ある賞なのかはわかりませんが、ビートルズが受賞という事実だけでも、ニューズバリューはあるということなのでしょう。

「I'm Only Sleeping」は、テープの逆回転サウンドを用いた曲としてよく知られています。それは、深い眠りと現実の狭間の状態にある世界を表現したものだそうです(薬物使用によるものという説もあり)。

2022年11月に制作されたビートルズのための新たな映像は、1600枚以上の油絵を使用して作られた映像とのこと。イギリスの映像作家・エム・クーパーによって製作されています。ビートルズという、現在も巨大な存在であるアーティストの映像作品を、公式なものとして作ることに躊躇する気持ちも最初あったようです。

ジョン・レノンの眠りの世界を描いた作品として、これも「I'm Only Sleeping」という映像作品のひとつとして、受け入れても良いのではないかと思っていますが、皆さまはどう思われるでしょうか。