栄光と悲劇の "テルスター" | Get Up And Go !

Get Up And Go !

音楽を中心に、映画、文芸、スポーツ など・・・。

より高く! より深く! けれど優雅に・・・ 冗談も好きなんですけどね (*゚.゚)ゞ






テルスターは1962年7月10日、アメリカ航空宇宙局が打ち上げた通信放送衛星です。 アメリカとヨーロッパのテレビ通信を目的とするものでした。 パリからアメリカ、西ドイツからアメリカへのテレビ中継に成功したそうです。当時の人々にとっては、別の大陸からの映像が生中継によって見られること自体が驚愕の出来事だったのでしょう。 日本でも大きなニュースとして伝えられています。

この通信衛星・テルスターの打ち上げのニュースを見て、そこからインスピレーションを得て曲を作った人がいます。 日本では知る人ぞ知るの音楽プロデューサー、ジョー・ミークです。






子供の頃から電気に興味を持ち、英国空軍の技師として働いた経験を持つミークにとっては、宇宙に飛び立つロケットからは何かを掻き立てられるものがあったのでしょう。

ジョー・ミークによるプロデュースのもと、イギリスのインストゥルメンタル・バンド、トルネイドーズによって演奏されレコード化された 「テルスター」 は、62年10月に全英1位となり、12月には全米でも1位を獲得。 爆発的なヒットとなります。 イギリスのバンドがアメリカで1位となったのはこの曲が初。 64年のビートルズより2年早かったことになります。

フィル・スペクターも興味を持ったというミークの作り上げた不思議なサウンドは、当時の人たちにとっては異次元的な音として響いたようです。 ミークは音楽家ではなく技師であったわけですが、「テルスター」 のメロディは魅力的です。 宇宙とつながるミークの心の中の宇宙を感じさせる、ロマンチックはメロディです。 多くのカバー曲が生み出された要因は、不思議で異次元的なサウンドと、そのメロディの組み合わせによるところが大きかったのだと思います。






現在もジョー・ミークが、イギリスでは伝説的なプロデューサーとして語られているのは、2008年に文字通りの 『TELSTAR』 という、ミークの生涯を描いた映画が製作されたことからもわかります。 鬼才といわれたミークの心の闇は映画でも語られていますが、その闇に飲み込まれたミークは女性を殺害、その後 自らも銃を頭に当てて自殺してしまいます。

通信衛星テルスター1号は、当時の核実験による電磁パルスの影響によって、わずか七ヶ月でその機能を停止してしまいますが、現在も衛星軌道上に留まっているそうです。