天使のくれた時間 | Get Up And Go !

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☆ 天使のくれた時間 (原題: THE FAMILY MAN ) (2000 / アメリカ)
● 監督 ブレット・ラトナー
● 脚本 デヴィッド・ダイアモンド / デヴィッド・ワイスマン
● 作曲 ダニー・エルフマン
○ 出演 ニコラス・ケイジ / ティア・レオーニ / ドン・チードル 他



ストーリー 映画 *ネタバレ注意!
物語は1987年の、空港での別れのシーンから始まる。 ジャック・キャンベル(ニコラス・ケイジ) は、将来を誓い合った恋人のケイト (ティア・レオーニ) に見送られ、ロンドンの銀行研修に旅立とうとしていた。 「仕事だけでは幸せにはなれない。 一緒にいることこそが大切なはず」 と,引き止めるケイトを振り切って・・・。





そして13年後。 ジャックは金融会社の社長となり、ウォール街に君臨する実力者となっていた。 マンハッタンの高級マンションに住み、高級車に上等の女たち。 あの日の空港での記憶は遥か彼方に追いやり、望むべくすべてを手に入れた人生の成功者に。

クリスマス・イヴの夜、ジャックは事件に出くわし奇妙な経験をする。 コンビニで店員とトラブルとなり、拳銃まで振り回すチンピラ、キャッシュ (ドン・チードル)と出会う。 金によって穏便に解決しようと仲裁に入ったジャックは、 キャッシュと共に店を出る。 「銃なんか持たずに働け」 と、説くジャックに対しキャッシュは 「これから起こることはあんた自身が招いたことだ」 と謎めいた言葉を残して去っていく。






翌朝、ジャックは傍らに眠るケイトに気づき、子供たちの嬌声とともに目覚める。 見覚えのないベッドの上であった。何がなんだかわからないジャックであったが、やがてそれが、あの時のもうひとつの分かれ道、ケイトとの結婚生活であることに気づく。

はじめはもとの、緊張感に満ちたマンハッタンでの生活に戻ることばかりを考えていたジャックであったが、美しく成熟した妻・ケイトとまだ幼く可愛い娘と息子、温かい隣人たちにも囲まれて過ごす毎日に、幸福を見出し変化していく。 成功することだけが人生の目標であったジャックは、ケイトと共に送る生活の中で、人間らしい幸福というものを知ることとなる。
そして・・・

「天使のくれた時間」 が終わり目覚めた朝、ジャックはそれが "幻" であったことを知る。 そして "現実世界" では同じニューヨークで弁護士として成功を収めていたケイトを、13年ぶりに訪ねる。 彼女はパリへの栄転が決まっていた。

ケイトがパリへと旅立つ夜、ジャックはケイトを追い空港へ。「天使のくれた時間」 を彼女に話すために・・・。






カチンコ
先日、5日間ほど入院したときの話から・・・。 昼間もじゅうぶんな睡眠を取ってしまうと、夜9時の病室消灯では到底眠れるはずもなく、暗闇の中で目は冴える一方。 嫌でもいろんなことを考えてしまいました。

あんな暗闇の中に強制的に置かれることなんて滅多にないわけで。 やっぱり多少気弱にもなっている状況では、これまでの自分の人生のあれについてもこれについても記憶を呼び起こし、例えば「あの時、彼女に対しては誠意が欠けていたよなぁ」なんて考えてしまって。 まぁ 言ってみれば懺悔ですね。

この映画のことも思い出しました。 パラレルワールドという、SFで良く使われる概念があって、それは誰もが人生の歩みの中では分岐点というものがいくつかあり、右に行くか左に行くか、あるいは真ん中に行くかによってその人の人生は大きく変わって行くわけです。そして 「あのとき彼女と別れていなかったら、俺の人生はどのようになっていっただろう」 なんて風にも考えてしまうわけですね。

パラレルワールド (並行世界) にあっては、どの道を行ったとしても、それぞれの人生が同次元に別枝として見えない形で存在しています。 誰もそれを見たことはないので、これはひとつの仮説と言うか想像の産物なのですが。 この映画は、そのパラレルワールドを基本に据えて展開されています。

物語のはじめ、クリスマスの夜に、いかにもニューヨークのチンピラ風のあんちゃんが出て来ます。 彼は実は天使なわけですが。 これは僕の勝手な解釈ですが、天国から地上に送られた天使と言うのは、それぞれに使命があり、格好も性格も様々。 それぞれが現実社会の様々な階層に送り込まれると考えています。

そしてその天使であるキャッシュは 、嫌味なエリートと思っていたジャックがとてもいい奴であることに気づき、クリスマスプレゼントを贈ってやろうと考えたわけです。 ジャックのパラレルワールドである、慎ましく平凡ではあるけれど、愛に満ちたケイトとの結婚生活を体験させるというプレゼントを。






ラストシーンでは、冒頭とは反対に空港でジャックがケイトを説得する場面となっています。「行かないでくれ」 と叫び、イブの夜に見たもうひとつの人生をケイトに話し 「僕はあの日々を選びたい」 と。 ジャックの真剣さに打たれたケイトは、ジャックの話しを聞くことを承諾する。 そして雪の降る空港のレストランで談笑するふたりが映し出され、物語は幕を閉じます。


ここで誰もが考えるんですね。 あの後、ふたりはどうなったのだろうかと。 ひとしきり楽しかった頃の思い出話に花を咲かせた後、「でももう取り戻せない過去の事。 ふたりそれぞれの人生を歩きましょう」 となるのか。 あるいは ジャックの真剣さに打たれ、ふたりやり直す道を選ぶのか。

僕が脚本家であったなら、もうひとつ最後に書き加えます。 雪の降るクリスマスの背景の中、談笑するふたりがスーッと消えて行く場面を。 あの日の空港へと帰って行く場面を。






すでに60本以上の映画に出演してるというニコラス・ケイジは様々な役をこなす俳優として知られています。 僕は、あのヌボーッとした長く大きな顔は、この映画のようなコミカルな役どころに向いているのではないかと思っています。現在ではあの顔、ネタになっているでしょ (^^ゞ

その圧力ある顔を受け止めるティア・レオーニの瞳がまたとても魅力的です。ラストシーンでは、真剣に説得するジャックを目の表情による演技で受け止めていて、 それがすごく魅力的なのです (*v.v)♥

という訳で、「天使がくれた時間」 ならぬ、「病室の暗闇が与えてくれた時間」 の中でふり返り、思い出すこととなった映画でした (^_^)






SEAL / This Could Be Heaven (2000)
映画のエンドロールで流れる曲。 SEAL が、ふたりを見守る天使役で登場するMVです。