
昨年暮れ、今年の目標のひとつとしてあげたオールナイト上映鑑賞、先週の土曜日15日に敢行しました。 ま、目標と言っても、オールナイトなんて20代の頃は普通にやっていたことなので、精神的な意味での老け込み防止、自分にとってのアンチエイジング・イベントのひとつですね。 映画のタイトルどおりの、逆噴射!ってことで。
場所は80年代から通い、いまだによく行く名画座、高田馬場にある早稲田松竹。「BURST NIGHT!!!! 石井岳龍の石井聰互時代」 と題された、映画監督・石井聰亙作品、オールナイト4本立て興行です。
23時から上映スタートとなった作品は 『狂い咲きサンダーロード』(1980)、『シャッフル』(1981)、『爆裂都市 BURST CITY』(1982)、『逆噴射家族』(1984)、の4本。
石井監督と言うのは、斬新で型破りな作風で知られていて、現在でもカルト的な人気を持つ、映画監督というより映像作家と呼ぶにふさわしいひとかなと思います。僕の年代のロック・ファンの多くが 『狂い咲きサンダーロード』 『爆裂都市』 なんかは当時観ているはずです。
ロッカーズ、ルースターズ、スターリン、泉谷しげる等が出演しているし、劇中での音楽も彼らの音楽が使用されていますからね。 アナーキーでパンキッシュな映像は、エネルギーの使いどころを見つけられずにいた80年代パンクスたちが、当然飛びつくタイプの映画です。 因みに石井監督は福岡出身です。 これは理解できます。
爆裂都市
ルースターズとロッカーズの混合バンド、バトル・ロッカーズ、スターリンなどの演奏シーンも見どころってとこか。
3本目の 『爆裂都市』 で激しい睡魔に襲われましたが、映画の中で夢心地となる感覚ってけっこう好きなのです。 そしてこの日のトリとなったブラック・コメディの傑作 『逆噴射家族』 の過激な可笑しさはやっぱり最高で、明け方の眠さが完全に吹っ飛んでしまいました。
逆噴射家族 (1984 ATG)
出演: 小林克也 / 倍賞美津子 / 工藤夕貴 / 有薗 芳記 / 植木等
サラリーマンの小林勝国 (小林克也) は、郊外に小さいながらも念願であったマイホームを購入する。 妻の冴子 (倍賞美津子)、浪人生の長男・正樹 (有薗 芳記)、アイドルを目指す長女・エリカ (工藤夕貴)の4人は、それぞれにユニークではあったが新居で幸福な生活を送っていくようにも見えた。
しかし、そのユニークさを病気だと考えていた勝国は、都心を離れて暮らせばその病気も治るものだと考えて、長距離通勤も厭わず郊外の一軒家を購入したのであった。 その勝国も庭で見つけたただ一匹のシロアリに慌てふためき、その姿からはもっとも病んでいることがわかる。
ある日、勝国の兄の家を追い出された、父である寿国が上京し、やがて勝国の家に住みつくことになる。家族からは煙たがられ、空き部屋もないことから、勝国はリビングの地下を掘って地下室を作り、そこに父・寿国を住まわせることを思いつく。
やはりユニークな人間であった寿国はそのアイデアを面白がり、勝国と協力して本気で掘りはじめる。会社を休んでまで穴掘りに没頭する勝国は、そこでシロアリの群れを発見し、家崩壊の恐怖におののき、穴の中にガソリンをまいて火をつけ大騒ぎとなる。
原案:小林よしのり 音楽:1984(ルースターズの別ユニット)が担当。
ドリルまで購入し穴を掘り続けた勝国は、ついに水道管に穴をあけてしまい、また家族で大騒ぎとなる。 妻・冴子は離婚して家を出ると言い始め、勉強を邪魔された正樹は怒りから卒倒し、エリカは自殺未遂を起こす。
家族すべてが病気であると思い込んでいた勝国は追い詰められ、家族みんなで毒を飲んで一家心中をしようと持ちかけるが、反対に家族からは 「病気なのはアンタだ」 と責め立てられる。そこから家族それぞれの罵りあいがはじまり、家の中は全面戦争状態となる。
それぞれが部屋で武装して立てこもる。 勝国はドリルで娘・エリカを襲い、正樹は金属バットで戦う。寿国は軍服姿でエリカを人質にとって攻撃する。 勝国はカーテンに火をつけ、家ごと燃やしてしまおうとするが、漏れたガスがその火に引火し、部屋は爆発する。
すすけた顔を出し全員無事であった家族は、妻・冴子の 「朝ごはんですよ」 の声とともに、焼け焦げの残る部屋の中で食卓を囲み朝食をとりはじめる。 そして今度はドリルで家を壊し始めた勝国は家族に向かい 「私たち家族は、この家をすべて壊して真っ白なゼロからスタートするんだ」 と静かに話し、それに賛同した家族とともに念願であったマイホームは破壊され遂に崩れ落ちる。
家は無くなりさら地となった後、家族は青空の下で食卓を囲み、いつにも増した清々しく爽やかな朝を迎え、それぞれに出かけていくのであった。
オールでぐったり、撃沈!
この映画は ATG (日本アート・シアター・ギルド) という、60年代初頭から90年代始めにかけて、非商業的なアート作品の傑作をいくつも生み出してきた制作・配給会社によって作られた作品です。 こういう型破りな面白さを持った日本映画って今あるのでしょうか。
ベストヒットUSAでの、スクエアなDJぶりからは想像できない怪演を見せた小林克也氏は、これが映画デビュー作。 そしてやはり怪演ぶりが光った、映画やドラマでは見かけることの少ない有薗 芳記氏の不気味な演技も、この映画では特記すべきもの。やはりこれが女優デビュー作となった工藤夕貴さんの初々しい可愛らしさも、このパンキッシュな作品の中では特殊な輝きとなっています。
オールナイト上映の良さには、一緒に長旅をしているような不思議な客同士の一体感みたいなものもあります。 今回は、不思議な感動を持った作品ゆえに、みなさん清々しい朝を迎えることが出来たと想像できます。 僕もそうでした。
ただし・・・ 帰りの電車ではやはりぐったり。 家に着くとすぐに爆睡。 当然、昔のように一晩寝たらもとどおり、とはならず・・・。
オールでぐったり、撃沈 ! やはりこういうオチになってしまいました (^^ゞ