エリック・クラプトン 日本武道館 2016 | Get Up And Go !

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より高く! より深く! けれど優雅に・・・ 冗談も好きなんですけどね (*゚.゚)ゞ









ブライアン・ウィルソンが来日公演を終え、今まさにボブ・ディランが来日中! ポール・マッカートニーが新しいツアーのためアメリカに向かい、ストーンズはキューバで50万人を集め、ニュー・アルバムの制作にも向かっているそうです。
いったい今はいつなんだ? ほんとに21世紀なのか!? What's Goin On ?

と言うわけでエリック・クラプト~ン。行ってきましたよ、武道館!  5夜限定となった楽日の19日。 これまで何度歩いたかわからない九段下からの緩やかな坂道を、やっぱり変わらないワクワクした気持ちとともに・・・。

「最後詐欺」 などと言う言葉もネット上では囁かれてはいますが、何度来たって、いつ来たっていいんですよ、クラプトン先生!

今回は少し理屈っぽく長くなります。 最後まで読んでくれたなら、ありがとうです m(_ _ )m


- SET LIST -
01. Somebody's Knockin'
02. Key To The Highway
03. Hoochie Coochie Man
04. Next Time You See Me (Vo: PAUL CARRACK)
05. I Shot The Sheriff
06. Circus Left Town
07. Nobody Knows You When You're Down And Out
08. I Dreamed I Saw St. Augustine
09. I Will Be There
10. Cypress Grove
11. Sunshine State (Vo: DIRK POWELL)
12. Gin House (Vo: ANDY FAIRWEATHER LOW)
13. Wonderful Tonight
14. Crossroads
15. Little Queen Of Spades
16. Cocaine
- encore -
17. High Time We Went (vo: PAUL CARRACK)


The Band:
ERIC CLAPTON (G, Vo) / ANDY FAIRWEATHER LOW (G, Vo)
CHRIS STAINTON (Piano, Key) / PAUL CARRACK (Organ, Key, Vo)
DAVE BRONZE (B) / HENRY SPINETTI (Dr)
DIRK POWELL (Accordion, Mandoline, Violin, Vo)
MICHELLE JOHN (Backing vo) / SHARON WHITE (Backing vo)






今回の座席、1階北のJ列、真横に近い位置とはいえ、アリーナ席を隔てていないのでステージから近く、さらに全体が見渡せる場所となりました。

19:00のほぼ定刻に開演。 演奏時間は1時間50分ぐらいだったか。 MCが少ないので、あっさりとした印象もあります。 演奏面に関しては完璧に近い充実したもの。 一流どころを集めるクラプトンのライヴって、いつもそうなんですけどね。

初日から話題になっていたステージ衣装。 最終日なので少しはおめかしするのかと思いきや、やはりジャージで登場。3本線 アディダス!? クラプトンと言えば、その時代ごとのスタイルをバッチリおしゃれに決めるひと。 部屋着みたいなスタイルとは、ちょっと驚きましたよ ( ゚ロ゚)

肝心の内容ですが・・・。 セットリストに関しては賛否両論あるようです。 どちらかと言うと否定的な意見が多いんですかね。 ブルース中心の選曲というのは、どうしても地味な印象となってしまいますからね。 ライヴ終了後、駅へ向かう中での帰り道では 「レイラやってくれなかったね」 といった声がやはり聞こえてきました。 う~ん・・・アーティストに求めているものと言うのは、ひとそれぞれですからねぇ。

個人的には、今回の選曲、そして演奏内容ともに、前回2014年よりも良かったと感じています。 「Key To The Highway」 「Hoochie Coochie Man」 「Nobody Knows You When You're Down And Out」 といった曲は、ブルースのスタンダードとしてとても好きな曲であり、またそこでのクラプトンの唸るような歌い方が、また好きなんですね (それを嫌うひともいますが)。

ギター・プレイのほうは、もういつものあのストラトキャスターの音でした。 そしていつものフレージングでした。 ソロの量自体は、80年代末ぐらいから90年代の弾きまくっていた頃に比べると、ぐっと少なくなってはいます。ただその分、フレーズを濃縮してまとめているといった感じですかね。

前回の来日時のメンバーでもあった ポール・キャラック (オルガン) と、クリス・ステイトン (ピアノ) の、2人の鍵盤奏者のプレイが素晴らしく、特にポール・キャラックのオルガンの音が、ソロでは要所を押さえたフレーズとなり、バッキングではバンドのサウンド全体を包む雰囲気にもなっていて、とても素晴らしかったのです (ポール・キャラックは歌も良かった)。 そしてその2人のプレイは、6曲目の 「Circus Left Town」 から 「Sunshine State」 まで続いたアコースティックのセットにおいて、とりわけ良い味を出していたと思います。



(*これは初日のフォトです)

アコースティックのセットでは、クラプトンはもうひとりのギターのアンディ・フェアウェザー・ロウとともにアコギに持ち替え、メンバー全員が椅子に腰掛けて顔を見合わせるようにしての演奏スタイルとなったわけですが、実は個人的には今回のライヴでは、このセットでの演奏がもっとも良かったと思っています。

今回はクラプトン自身も語っている新しい試みとして、ダーク・パウエルというアメリカ人が、アコーディオン、マンドリン、ヴァイオリンの演奏で加わっていて、これがまた、アコースティックのセットでは特に効いていました。

クラプトンは70年代に、ザ・バンドやデラニー & ボニーといったアメリカのルーツ・ミュージックに根ざした音楽に打ちのめされて、いわゆるレイド・バックした土臭いリラックスしたサウンドを追求していた時期があったのですが、このダーク・パウエルの参加は正解であったと思います。

もちろんクラプトンはイギリス人なので、そういった音楽を目指しても、いなたいアメリカの音楽には成り切れなくて、どこかで洗練されてお洒落にまとまってしまい、でもそれが個性にもなっていると、僕は考えているのですが・・・ このアコースティックのスタイルでの音楽は、クラプトンのひとつの到達点なのではないかと思っています。

歳を重ねて演奏活動を続けるアーティストは大きく分けて2つ。 ポール・マッカートニーやローリング・ストーンズのように、エンターテイメント性を重視して昔のヒット曲を多く配しアンチエイジングで行くスタイル。 ボブ・ディランやキース・リチャーズ (ソロ) のように、自分が枯れていくことを肯定的に受け入れて音楽を構築していくスタイル。

そう白黒はっきり色分けできるわけでもないのですが、クラプトンにはやはりブルースを基本に据えての音楽に、歳を重ねることによって得た味わいを加えた音楽をさらに追求していってほしいと考えています。家族を大切にしている現在のクラプトンにとって、家を長く離れるツアーはつらいものでしょう。 でも 「日本は特別な場所」 だと言うクラプトンなので、また来て演奏してくれると信じています。

今回のライヴで最も素晴らしく感じた曲、ゆったりと流れる癒しを持った曲 「I Will Be There」 はもうすぐリリースとなる新作に収録されている曲のようです。アルバムのタイトルは 『I Still Do』 (俺はまだやる)と題されています。




ERIC CLAPTON / Cocain (2015 Royal Albert Hall)
クラプトンにとって武道館は日本でのホームグラウンド。 そして英国でのホームは、ロイヤル・アルバート・ホールです。