コレクター | Get Up And Go !

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コレクター (原題:THE COLLECTOR) (1965年・アメリカ・イギリス) 蝶   
● 監督 ウィリアム・ワイラー
●音楽 モーリス・ジャール
○ 出演 テレンス・スタンプ / サマンサ・エッガー


女性の拉致監禁を題材にしたサイコ・スリラーです。 ご存知のように、先月 犯人逮捕に至ったあの事件が記憶に新しいのでどうかとも考えました。 けっして後味の良い映画ではないし、「この時期に不謹慎だろ」 と不快に感じる方もいるかもしれませんが、密室の心理劇を鋭く描いたすぐれた映画なので記事にすることにしました。 興味のある方にはおすすめしたい作品です。


ストーリー 映画 (ネタバレ注意)
若い銀行員フレディは、蝶の収集を趣味とする孤独な男。 職場でも物笑いの種となっている彼に、サッカーくじが当たり莫大な金を手にするという幸運が訪れます。

ひと気のない土地に一軒家を購入した男は、ずっと以前から目をつけていた美しい画学生ミランダ "採集" のため、行動を起こします。クロロホルムを使い "採集" に成功した男は、地下室に彼女を監禁し、望むものすべてを彼女に買い与えるのです。 彼女の "愛" を得るために・・・。





カチンコ
「僕のことを理解してほしい」 と言って紳士的に振るまい、スーツにネクタイまでしてミランダに接したりもします。彼女の趣味嗜好を調べ上げていた男は、気に入りそうな服まであらかじめ揃えておくんですね。

美しくて知性もある彼女に対し "敬意" を示し、それを自分に対しても示してほしい男は、趣味である蝶のコレクションを彼女に見せたりもするのですが、「わたしもこの蝶と同じね」 などと冷たく言われてしまうのです。 裸の彼女を前にしても欲望をコントロールできる男に、観る側の私たちは、むしろ異常性を感じたりもします。

監禁と言う暴力が大前提としてある以上、そこでやさしく振るまいすべてを与えても、愛など得られない、ということに男は気づかないんですね。




いつも冷静で大人しそうな男が、感情的になる印象的な場面があります。 彼女の好きな 「ライ麦畑でつかまえて」 と ピカソの絵画について、議論を戦わせ口論となる場面でのことです。

「恵まれたもののわがままだ」 と言って主人公のホールデンを罵り、「ピカソの絵などおふざけで、誰も良いなどと思ってなどいない」 と言って、感情をミランダにぶつけるのです。知性・教養を持ったものに対して、強いコンプレックスがあるんですね。

ミランダが「これは愛じゃない。 思春期に誰もが描く現実離れした妄想」 だと男に話す場面があるのですが、確かにそれを現実にしたら犯罪となるような妄想って、若い頃は描いたりするんじゃないですかね。 もちろんそれを行動に移したりはしないわけですが。

フレディという男の場合は、強いコンプレックスによる屈折した感情と孤独が、子供のような独善性を自分の中に育ててしまった、そういったことなのでしょうか。 社会に大人がいなくなり、男が幼稚化していると言われて久しい現代、そういう男は現実にかなりいそうです・・・・





80年代のはじめ頃のテレビ放映時に観たのが最初であったと記憶しています。 日本語吹き替え版だったのですが、フレディの吹き替えが沢田研二であったのをよく憶えています。 役者として精神病質を持った犯人役が似合うひとだったので、そのイメージを利用したということなのでしょう。

フレディ役のテレンス・スタンプ、ミランダ役のサマンサ・エッガーともに、カンヌ映画祭で男優賞と女優賞をそれぞれ受賞していますが、それに値する演技だと思います。

監督が 『ローマの休日』 のウィリアム・ワイラーであるのが、意外に思えます。












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