ポール・コゾフ | Get Up And Go !

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今回は60年代末から70年代半ばまで、英国の伝説的なロック・バンド、フリーのギタリストとして、フリー解散後もソロ、バックストリート・クロウラーでも活躍した、ポール・コゾフについて。

フリーは、英国ロック史に残るブルース・ロック・バンド。本来ならまずポール・ロジャースからじっくり取りあげたい所ですが、私自身が一応ギター弾きということもあり、また思い入れのあるギタリストであることから と言うことで・・・


ポール・コゾフは1950年、ロンドン出身。子供の頃からギターが好きで、クラシック・ギターの訓練も受けていたとのこと。彼の青年期の60年代。英国はブルース・ブームと言うこともあり、ブルースに魅了されたコゾフは、ポール・ロジャース、アンディー・フレイザー、サイモン・カーク等と共に、ブルースを基調にしたロック・バンド、フリーを68年に結成します。この時点でメンバー全員がまだ10代。深みさえ感じるデビュー・アルバム 『TONS OF SOBS』 を聴くと、早熟という言葉で簡単には片づけられないほどの、何かがすでに音に宿っています。


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このアルバムの 「Going Down Slow」 でのコゾフのギター・ソロにおける激情のプレイは圧巻です。そして 「The Hunter」 では彼のトレード・マークとも言える振幅の大きいヴィブラートが凄まじいばかりに展開されています。

ヴィブラート
ロック・ギターの場合のそれは、押弦した指そのものを震わせるのではなく、ギターのネックに掛けた親指を支点にして手首から先全体を震わせ音程を揺らす。その際、手首の使い方と小指を振り子のような感覚を持って振る という事がポイントになります(解かってもらえますかね?)。その振幅の幅やスピードにギタリストの個性が出たりします。ヴィブラートとチョーキングは、ロック・ギターでは欠かせない技術ではありますが、ヴィブラートをかけないということもまた、個性になりうるのですが・・・





私自身の話で恐縮ですが、中学時代にギターを始め、高校で本格的に取り組みはじめた頃、クラプトンのプレイをよくコピーしました。クリーム時代の演奏にはロック・ギターの基礎技術がすべて詰まっていると あのチャー先生も言っていたので。そしてチョーキングやヴィブラートの会得で苦労をしているとき、友人に教えてもらったのがフリーのポール・コゾフのプレイです。ショックでしたね。「これトレモロ・アームだろ」 なんて思ったほどです。参考になるどころか、かえって混乱してしまいました。

ONE TRICK PONY
日本語にすると 「一芸に秀でたひと」、あるいは 「それしかできないひと」 といった意味になるようですが、ふたつの意味のニュアンスは異なります。コゾフの場合はどうなのでしょうか。

デビュー前、ポール・コゾフはクラプトンのプレイを聴いて大変な衝撃を受けたそうです。当時のクラプトンのプレイは、ロック・ギターの歴史からすれば革命的であったそうですが、ここではそれについての言及は避けます。そして同様にジミ・ヘンドリックスのプレイにも大きな衝撃を受けたと言います。

これは個人的な見解ですが、その事がコゾフのプレイに影響を与えたのではないかと思うのです。音楽の世界で生き残る術として、ヴィブラートの技術を磨くことに心血を注いだのではないかと。後にそのクラプトンから、チョーキング・ヴィブラートについて 「どうやっているだい?」 と声をかけられたそうですが、コゾフは嬉しかったでしょうね。







ポール・コゾフというギタリストを表現する際、「感情移入」 「魂のこもった」 という言葉がよく使われます。まさにそういったタイプのギタリストです。「一音入魂」。正確に言えば、「ひとつひとつの音の揺れ」 の中に魂をこめたと言うべきか。

ポール・ロジャースは、「多くのギタリストと組んだ中で、ポール・コゾフが最も相性の良いギタリストであった」 と語っています。また、共演したいギタリストとして、すでに亡くなったコゾフの名前をあげて 「彼が恋しい」 と言っていたこともあります。ロジャースのソウルフルなヴォーカルとコゾフの泣きのギター。鉄壁です。



ポール・コゾフは、ドラッグ中毒によりそれが遠因で心臓発作を起こし、移動中の飛行機の中で眠ったまま帰らぬ人となりました。
1976年3月19日。25歳でした。








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