奈良マラソン2023
シネマイレージ018:ノマドランド
ノマドランド ☆☆☆☆
(監督:クロエ・ジャオ)
アカデミー賞直前のタイミングでレビューします。
映画の前半は話が陰鬱としていて、またどこへ話が向かっているのかわからず、なかなか観ていて手持ち無沙汰な印象でした。何といっても若い人がほとんど出てこずに、ノマドの人たちの危険や病気と隣り合わせの生活を描いているので楽しいわけではないです。そんな中でも主人公の女性は力強くとは言えないけれどもしたたかに生きていきます。途中のシーンでノマドの先輩女性に住まいとしている車(バン)について注意あるいはアドバイスを受けるところがあり、ノマドとしてはまだまだ未熟なのかもしれません。
後半になって、主人公がノマド生活から“解放”される可能性が描かれます。一度目は車の故障の費用のためお金を借りに行った姉、もう一度は好意を寄せられた男性から。その結果についてはここでは伏せますが、主人公および他のノマドの人たちがノマド生活を“悲惨な”ものと考えているわけではなく、それによって得られる自由であったり、他の人々との交流を大切なものと思っていることが感じられます。姉のセリフだったと思いますが、アメリカ人はもともと東から西海岸に向けて移っていったのがルーツにあるということを言っており、主人公の意識の深部にあるものを考えさせられます。実際、この映画はアリゾナ州やネバダ州など西海岸の手前の内陸部が舞台となっています。主人公がその辺りの観光地を仕事を変えながら渡り歩くため、アメリカ人にとっては有名観光地を満喫できる内容なのかもしれません。少し話がそれましたが、その舞台設定があるため、終盤に出てくるカリフォルニア州のまさに西海岸が大きな意味を持ってくるのだと思います。
このように、書いてみるといろいろ書ける内容ですが、全体的には悪く言うと地味、よく言うと映画ファンにはたまらない内容といったところでしょうか。一点挙げたいポイントは好意を寄せられた男性とその息子のピアノの連弾のシーン。音だけで何かを表現しようとしているところに味わいを感じました。最後に、エンドクレジットでもわかると思われますが、主演者の大半は実際のノマドの人たちだということです。