この記事は『落雷対策・建物の電気火災対策』シリーズの
**業界別(相間中和法の実務)です。
全体像や基礎から確認したい方は、アメブロのテーマ「落雷対策・建物の電気火災対策」を開き、
「全体像 → 基礎(SPD/コヒーラ型) → 業界別(相間中和法)」**の順にご覧ください。
まずは40秒で要点だけ:https://youtu.be/nIAgFKJ9N5Y?si=RbXdZwkVPTIcF0Cd
詳しくはLP(解説・実験・図表等):https://inazuma-spd.com/
止めたいのは「誤停止」と「基板破損」。
本稿はデータセンター/工場/医療の現場で使える、
**二段保護+相間中和法(コヒーラ型)**の配置・運用を要点だけでまとめます。
まず押さえる共通の型(全業界共通)
- 二段保護:①建物入口/分電盤(面の防御)+ ②機器直前(点の低クランプ)。
- 目安スペック(機器直前):クランプ≤300V(実測≈280V)/応答<1ns未満(実測限界は3ns)/8/20μs 2kA×2000回、表示灯で交換判断。
- 方式:相間中和法(コヒーラ型)=L–N等の差電圧を瞬時に均衡化。接地が弱い現場でも後付け効果を狙える。
- 規格:入口=UL/JISのType1/2、機器直前=Type3(JISでは2/3)。VPR/Up・MCOV/Uc・SCCRを突合。
ここでの「突合」は、**仕様を“つき合わせて整合を確認する”**という意味です。
対象はこの3つ:
- VPR / Up…SPDがサージを受けたときの保護電圧(UL表記=VPR、JIS/IEC表記=Up)。
小さいほど機器にやさしい。 - MCOV / Uc…SPDが常時印加に耐えられる電圧(UL=MCOV、JIS/IEC=Uc)。
系統電圧より十分上であること。 - SCCR…短絡耐量。その場所で発生し得る短絡電流に耐える力(配電盤や上位遮断器の定格と合わせる)。
仕様書に書くときの一文(コピペ可)
「SPDは系統電圧に対し MCOV/Uc適合 とし、保護電圧(VPR/Up)は機器耐圧の安全域(目標**≤300V**)以下。 設置点の短絡条件に対し SCCRは盤/上位遮断器の定格以上 とする。」
入札仕様版一文(規格名も併記)
SPDはUL 1449 又はJIS C 5381-11(IEC 61643-11)適合相当とし、系統電圧に対しMCOV/Uc適合であること。
保護電圧(VPR/Up)は機器耐圧の安全域(目標300 V以下)とし、8/20 (μs ) 2( kA )時の値を提示すること(参考:10/350 (μs) 10(kA) 時 1,250 V)。
SCCRは設置点の短絡条件に対し盤/上位遮断器の定格以上(例:ヒューズSCCR 500 A、内蔵遮断器SCCR 200 kA)とする。
上記の仕様書要件は、“電気サージ抑制装置” の公開資料で満たせています。
データセンター(サーバ室/PDU/UPS)
配置の型
- 入口:主分電盤にType1/2。
- ラック:PDU入力側またはラック上流の分岐盤に低クランプType3。
- UPS併設時:UPS入力側に一次、PDU側にポイント保護。
- 長配線(外灯・空調屋外機・アンテナ)は別系統で保護/結合は避ける。
要点・落とし穴
- N線の電位差でNIC/ストレージが不安定→相間中和でL–N差を抑える。
- ラック間の等電位ボンディングを忘れない。
- 「UPSがあるから安心」は誤解。差電圧抑制のSPDは別物。
5分チェック
☑ 主分電盤Type1/2 ☑ PDU/ラック前Type3
☑ VPR/Upが機器耐圧に見合う ☑ 表示灯の巡回ルール
工場保全(インバータ・PLC・サーボ)
配置の型
- 入口:動力盤にType1/2。
- インバータ/サーボ/PLCの電源直前に低クランプType3を機器別で配置。
- 屋外センサや長いケーブルは電源系と分離、必要に応じ信号用サージ保護も併用。
要点・落とし穴
- インバータ起因の過渡+雷サージでDCバスやI/O破損→機器直前の相間中和で誤停止抑制。
- 盤内の接触不良・腐食は保護性能を落とす。トルク管理/再締付けを点検票に。
5分チェック
☑ 動力盤Type1/2 ☑ 各制御盤/機器前Type3
☑ 端子の変色・緩みなし ☑ 予備機・予備SPDの保守体制
医療(画像診断・検査・院内ネットワーク)
配置の型
- 入口:受変電または医療エリア分電盤にType1/2。
- CT/MRI/検査機器の電源直前に低クランプType3。
- ネットワーク・PACS周辺は電源系の差電圧を抑え、データ破損を防止。
要点・落とし穴
- 停止コストが高いため、表示灯で予防交換を運用に組み込む。
- 接地改善が難しい場所は相間中和型で差電圧中心に対策。
5分チェック
☑ エリア分電盤Type1/2 ☑ 機器直前Type3
☑ 交換基準が書面化 ☑ 年次点検でログ化
稟議・見積で使える短文テンプレ
「落雷・開閉サージ対策として、入口盤にType1/2、機器直前に相間中和型Type3を二段で配置。
目標:クランプ≤300V/応答<1ns。UL1449/JIS/IEC適合相当、表示灯で交換判定。
既設UPSとは併用(UPS入力側=一次、PDU/機器前=ポイント保護)。」
よくある質問(FAQ)
Q. グランドが弱い現場で効きますか?
A. 理想は改善ですが、相間中和法はL–N差を主に抑えるため、後付けでも効果を狙いやすい方式です。
Q. 何から先に入れる?
A. 停止リスクが大きい重要機器直前→分電盤の順。二段になって初めて安定します。
Q. UPSやノイズフィルタと競合しませんか?
A. 役割が違います。**差電圧抑制(SPD)+電源保持(UPS)**で相補関係です。
次の一歩(CTA)
- 40秒で要点だけ:▶︎ https://youtu.be/nIAgFKJ9N5Y?si=RbXdZwkVPTIcF0Cd
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