この記事は『落雷対策・建物の電気火災対策』シリーズの**基礎編(SPD/コヒーラ型)です。
全体像や基礎から確認したい方は、
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まずは40秒で要点だけ:https://youtu.be/nIAgFKJ9N5Y?si=RbXdZwkVPTIcF0Cd
詳しくはLP(解説・実験・図表等):https://inazuma-spd.com/
雷サージ対策を最短で理解するための基礎ガイド。
UL・JIS/IEC・CEの“どこを見るか”と、
二段保護・**コヒーラ型(相間中和法)**の要点を、
調達・稟議に通る言葉で整理します。
このガイドでわかること
- SPDの役割と“内部雷”(配線経路から侵入するサージ)の正体
- UL 1449 / JIS・IEC 61643 / CE の見方と、仕様書で使う指標
- 二段保護の設計(分電盤+機器直前)と選定手順
- **コヒーラ型(相間中和法)**の位置づけと現場での利点(後付け性・低クランプ)
SPDの基本:何を守る?どこが壊れる?
- 外部雷は避雷針等で“空間”の対策。
- 一方、内部雷(配線経路から侵入)+開閉サージは、電源ライン等に瞬間的過電圧を載せ、
誤動作/基板破損/通電火災の引き金に。 - だから建物内はSPDで電位差を抑え、回路を守るのが基本。
規格の見方:UL/JIS・IEC/CE
UL 1449(北米) ― 調達で“ここを見る”
- Type(設置区分):Type 1(引込側/サービス装置前後)/Type 2(分電盤負荷側)/Type 3(機器直前)/Type 4・5(組込用)。
- VPR(Voltage Protection Rating):実力の保護電圧。小さいほど機器に優しい。
- MCOV(Maximum Continuous Operating Voltage):常時印加できる許容電圧。系統電圧に適合しているか。
- SCCR(Short-Circuit Current Rating):短絡耐量。既設遮断器の定格と突合。
- Modes of Protection:L–N / L–G / N–G など保護モード。実運用に必要なモードが入っているか。
JIS・IEC(JIS C 5381-11 / IEC 61643-11系) ― “波形とクラス”で理解
- Type 1 / 2 / 3:設置区分(建物入口/配電盤/機器直前)。
- Iimp(10/350μs):直撃雷相当の大電荷試験(主にType 1)。
- In(8/20μs):繰返し耐量の基準放電電流(Type 2中心)。
- Up:保護レベル(クランプ電圧)。低いほど良い。
- Uc:最大連続使用電圧(=ULのMCOV相当)。
ポイント:ULのVPRとJIS/IECのUpはいずれも保護電圧の実力目安。
調達文面では「VPR(またはUp)≦機器耐圧の安全域」と書けると通りやすいです。
CE(欧州) ― “何の指令で適合?”が肝
- LVD(低電圧指令)/EMC指令/RoHSが中心。
- DoC(適合宣言書)+試験レポート+技術文書が揃っているかを確認。
- “CEマークがある=第三者証明”ではない(自己宣言が基本)。
**引用規格(EN 61643-11等)**の適用を明記する。
選定手順(分電盤+機器直前の二段保護)
- 系統と設置位置を決める
- 入口(分電盤)=Type 1/2、機器直前=Type 3(UL)/Type 2/3(JIS/IEC)。
- 電圧クラスを合わせる
- 単相/三相・接地方式・MCOV/Ucの適合を確認。
- 保護電圧の目標を置く
- 重要機器前は低クランプを狙う(例:≤300V目安、実測≈280V相当の低クランプが理想)。
- 耐量の整合
- 入口側はIimp/InやSCCR、機器前は繰返し耐量とTOV耐性(過電圧持続)をチェック。
- 運用要件
- 表示灯/交換指標があると保全が回る。
性能要件の“現実解”(文面サンプル)
- 保護レベル(クランプ):≤300V
- 応答:1ns未満(実測限界:数ns未満)
- 耐量:8/20μs 2kA×2000回、10/350μs 10kA×1回相当の実績
- 運用:表示灯で交換判断、点検チェックシート付
仕様書テンプレ(抜粋)
「落雷対策/建物の電気火災対策のため、分電盤一次および重要機器直前にSPDを設置。クランプ≤300V、応答1ns未満、8/20μs耐量・TOV耐性を有し、UL 1449またはJIS/IEC 61643適合相当、**CE(LVD/EMC)**の適合宣言書を提出できること。」
コヒーラ型(相間中和法)の要点(方式の一例)
- 相間中和:相間(L–N等)の電位差を瞬時に均衡化し、差電圧を素早く押さえ込む考え方。
- 特長
- 低クランプ×超高速(例:≤300V/<1ns目安)で、デジタル機器の誤動作/基板破損を抑制。
- 接地が弱い現場でも効果を狙いやすい(差電圧重視の制御)。
- 後付け性:機器直前の“ポイント保護”に向き、停止時間を最小化しやすい。
現場の言い換え
「L–Nの差をすぐゼロ方向へ引き戻すから、機器が受ける痛みが小さい」—これがコヒーラ型/相間中和法の価値。
配置例と5分セルフ診断
- 分電盤(入口)にType 1/2、重要ラック/制御盤の直前にType 3。
- 長い屋外配線・避雷針接続周りは導通・接地を再点検。
チェック
☑ 分電盤入口にSPDがある
☑ 重要機器直前にもSPDがある
☑ VPR/Upが機器耐圧に見合う
☑ MCOV/Uc・SCCRの整合が取れている
☑ 交換時期が表示灯や記録でわかる
よくある質問(FAQ)
Q. 避雷針があれば十分?
A. 直撃は避雷針、配線侵入のサージはSPD。役割が別なので併用が前提です。
Q. UPSがあるから不要?
A. UPS前後で波形は変わりますが、差電圧を抑えるSPDは併用が基本。特に機器直前が効きます。
Q. 接地が弱い現場では?
A. 理想は改善ですが、相間中和型等で差電圧を抑える設計なら実用域に乗せやすいです。
次の一歩
- 40秒で要点だけ(ショート):
▶︎ https://youtu.be/nIAgFKJ9N5Y?si=RbXdZwkVPTIcF0Cd - 詳しい解説・実験・図解(LP):
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