というわけで私は

甥っ子のことに関しては

色々言葉を選んでブログに

書いているのでございますが。

 

この件だけは

匿名ブログをいいことに

皆様とわが感慨を

分かち合いたいため

書いちゃう書いちゃう。

 

・・・甥っ子たちを

色々なところに

観光に連れ出しましてね。

 

毎回毎回私の当初計画とは

微妙に異なるところ

甥っ子たちが喜んだ点は

それはそれで楽しかったのですが

(例1:大道芸を見ようと

某フリンジに出かけるも

博物館のほうが受けた)

(例2:某美術館に連れ出すも

美術品より『移動で乗った

地下鉄』に大興奮された)、

まあそんなこんなで

ある日某お城を訪れたわけです。

 

平日とはいえ夏の最中(さなか)、

広い場内はどこも観光客で一杯で、

しかしこれはこれで

観光地らしい風情がある、と

城壁や地下牢をせっせと

歩き回っておりましたら

ある一室が『中世の音楽室』の

ようなしつらえになっていて、

そこにハープや太鼓が

「ご自由にお弾きください」

という形で展示されていました。

 

 

 

 

 

その奥に鍵盤楽器があり

鍵盤を押すと微妙に調子が

おかしい音が出るものの

これはこれで

ハープシコード風で

悪くない、と

私は日本産甥っ子を呼び

「こういう展示物は

活用してあげないと

施設管理者に悪い、

さあ何か弾きたまえ」

 

 

 

 

「えっ・・・

楽譜もないのに?」

 

「暗譜している曲で何か

・・・JRの発着メロディ

私一人が愉快だからやめてくれ、

『きらきら星変奏曲』とか

風情があってよかろう、

さ、私のために弾いてくれ」

 

 

 

 

そこまで言うなら、と

わが甥っ子は調子はずれの

キーボードで『きらきら星』を

弾き始めたのですが

・・・私は己を

誉めたいと思いましたね、

弦がピアノのように

『叩かれる』のではなく

『弾かれる』あの音に

『きらきら星』は

非常に似合っておりました。

 

 

 

同じ部屋の反対側にいた

眼鏡の女の子

(小学校低学年くらい)は

主題のトリルの音を聞くと

それまで叩いていた

タンバリンを手放して

鍵盤に向かう甥っ子の背中に

視線を釘付けにしていて、

第一変奏の16分音符が

始まると夢遊病患者のような

ふらふらした足取りで

甥っ子の背後に近づいてきて

・・・わかる!

 

その気持ち、

私は本当によくわかる!

 

ピアノってさあ、

演奏者の背後とか横でこそ

音を聞くのが醍醐味だよね!

 

でも人間、大人になると

理性と体面が邪魔をして

興味の対象物にそこまで

一直線には近づけなかったり

するじゃないですか。

 

そこをこの女の子は

旋律に一途に心を捕らわれて

気が付くと甥っ子の背中の

リュックサックに鼻先を

押し当てる位置にまで

近寄っていて、ああ、

音楽の力って凄いなあ!

 

で、甥っ子は

第二変奏に入る前に

リュックサックを

担ぎ直したんですよ。

 

もうその時点で

女の子の鼻は完全に

リュックのポケットに

押しつけられている

感じだったので

私は横から甥っ子に

「おう!気をつけな!後ろ!」

 

甥っ子は後ろを振り向き、

そこに眼鏡の女の子が

じっと立っているのを見て

「ああ、この子もこの楽器を

弾きたいのか」と思ったらしく

にっこり笑うと

鍵盤の前から身を退けて

「ごめんね!どうぞ!」

 

私の年代からすると

これはもう・・・

 

これはもう、

令和版・丘の上の王子様

(スコットランド古城編)

なんですよ・・・!

 

 

 

 

女の子はもう完全に

ぽーっとなってしまっていて、

これは私だけでなく

周辺にいた大人たち全員が

その純粋な憧れの芽生えに

気が付いていて

「うわあ良いもの見た」

みたいな雰囲気になっていて、

しかしこの事態に

当の甥っ子だけが気づかず

「Norizoさん、じゃあ次の

展示物を観に行きましょうよ!」

 

・・・こっ!

 

この色男!

 

色悪!

 

隣の展示室に移動する時、

戸口から振り返ると

女の子は上気した顔のまま

なおも一歩も動けずに

その場に立ち尽くしており、

そんな女の子の肩に手を置いて

親御さんらしい女性が優しく

「・・・ね!素敵な演奏を

偶然聞けて良かったわね!」

 

・・・わが甥っ子は

とんでもないものを

盗んでいきました!

 

あの子の!

 

心です!!

 

 

 

 

今回甥っ子たちをダシに様々

遊ばせていただきましたが

ある意味これが私には

一番印象深い光景でした。

 

いいものを見ました。

 

 

いやー10年後くらいに

あの女の子が飲み会で

「私、どうしてか

わからないんだけど

ピアノを弾く東洋人を

見ると熱が出る」とか

「ピアニストを背中側から

見上げたい欲がある、

これって何だろう」とか

「きらきら星の旋律を聞くと

何故か泣きそうになる」とか

言っていたら私は黙って

2杯目を驕ってあげたい

 

タイトルで私は『初恋』と

書いちゃいましたけど

あれはでも恋とは違うのかも

 

濃縮された打算のない憧れが

出現する瞬間であったのかも

 

・・・でもそれを人は

恋と呼ぶのかもしれない

 

私のこの

『いいもの見た』感が

わかるアナタも

Norizoさんの覗き趣味!と

物を投げたくなったあなたも

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