東京の日本庭園は「ビオトープ」になるのか?(向島百花園&清澄庭園) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

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雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

そもそもビオトープの定義が少々曖昧なのですが

野生生物のライフサイクルが成り立っていれば

一応OK……なのかな?と思っております。

その観点で考えるならば、向島百花園(墨田区)

多くの昆虫にとってビオトープと言えるでしょう。

 

季節の山野草・宿根草が咲くこの庭園では

花の蜜を求めてチョウやハチが多数飛来しますが

以前からお話している通りここは「草庭」で

ササキリ等の鳴く昆虫の棲み処となっています。

 

 

 

 

 

 

オミナエシやノカンゾウなどが開花する一方

ジンジャーなどの海外の植物もポイントに導入(右写真)。

ちなみに品種名を書いた札には

「じんじゃー」とひらがなで記されています。

そこはやはり日本庭園ならではのこだわりということか?

 

 

 

 

 

9月初旬では、まだハギのトンネルは

ほとんど開花していませんでした。

今年は若干開花期が遅れているようです。

(8月に一時涼しい時期が続いたから?)

 

 

 

 

 

ここでもやはり目立つのはオミナエシ

株数が多いだけでなく、訪れる昆虫の数も

他の植物と比較して明らかに多いいです。

(上の写真にもイチモンジセセリなどが数匹確認できます)

 

 

 

 

 

 

奥にスカイツリーを据えて、池を撮影。

この池周辺ではシオカラトンボやショウジョウトンボ

そしてアジアイトトンボ(右)が確認できました。

前者2種はともかく、移動能力に乏しいイトトンボは

わざわざ別の場所から飛んできたとは思えないので

ここの池で繁殖していると考えられます。

 

つまり、イトトンボにとってもビオトープということか?

 

 

 

 

 

真紅のショウジョウトンボ

もうそろそろ見納めでしょうか?

 

 

 

 

 

 

江戸時代の町人文化の再現ということか

不思議な色・形の朝顔が複数展示されていました。

そのほか、水桶で育てたオニバス(右)など

地植えだけでなく様々な「魅せ方」をしています。

 

 

 

 

 

そして、向島百花園の最大の特長はコレ。

日本庭園でありながら「草むら」が非常に目立ち

大きく育って園路にはみ出してくることもあります。

 

しかし、写真のように若干通りにくくなっても

自然な草庭らしい雰囲気を重要視しているためか

過度な「刈り取り」はしていない模様です。

まあ実際、通れないということはないですしね。

 

 

 

 

 

園路にはみ出さない場合でも

植栽部分で地表が露出することがほとんどないため

日本庭園にありがちな人工美を感じさせません。

 

 

 

 

 

こうした深い草むらの中からは

頻繁にササキリやコオロギの仲間の声が聞こえてきます。

(写真は多分ウスイロササキリ

敢えて持ち込むほどの希少種ではありませんので

恐らくこの百花園の中で自然に繁殖しているのでしょう。

 

 

 

 

 

園芸種ですが、雰囲気に合うからか

カクトラノオも植栽されています。

これも蜜源植物ではありますが

口吻の短いシジミチョウなどはあまり寄り付きません。

(写真はツマグロヒョウモン

 

 

 

 

 

そういえば、百花園の近くでオナガの集団を見かけました。

後日、再度百花園を訪れた際にもやはり集団で現れたので

この近くにねぐらがあるのかもしれません。

心なしか、全体的に今年は都心部で

オナガに会う機会が多い気がします。

 

その後、少々時間が余ってしまいましたので

比較的近くにある清澄庭園に向かいました。↓

 

 

 

 

 

これが清澄庭園です。

同日に続けて見ると、向島百花園との差が

よりハッキリとわかります。

 

 

 

 

 

わかりやすく池を中心とした回遊式庭園で

動植物より、庭の造形美を楽しむための場所です。

かと言って生きものが見られないかというとそうではなく

むしろ広い池に惹かれてサギやカワセミなどが

頻繁に訪れます(実際この日もカワセミがいましたが撮り損ねました)。

 

写真右手にアオサギが、左手奥にコサギがいるのが

わかりますでしょうか?

 

 

 

 

 

特に、池の離れ小島はアオサギの溜まり場になっており

遠目からでもわかるほど多数が屯しています。

少なくとも「巣」らしきものはないので

ここで繁殖しているわけではなさそうです。

(ちなみにアオサギは主に木の上などに営巣します)

 

なお、ここがサギの溜まり場になっているシーンは

今回が初ではなく、以前にも何度か見かけております。

相当お気に入りなんだろうか?

 

 

 

 

 

では、ここはアオサギにとってビオトープなのか?というと

繁殖地として利用されているわけではないようなので

恐らく違うと思われます。あくまで餌場や休憩場所、

あるいは「溜まり場」として利用されているだけなので

向島百花園のトンボやバッタとは別物と言えるでしょう。

 

近いものとしては、都心の花壇に集まってくる

チョウやハチなどに似ているかもしれません。

 

 

 

 

 

 

ちなみに上記の通り、ここは動植物のための庭ではなく

とりわけ石組や名石で魅せる庭として設えられています。

ただし、その石が生きものに利用されることも

決して少なくありません(左のように日よけになることも)。

カワセミもよく足場に使いますしね。

 

なお、今は採り尽されて採石不可能という

貴重な赤玉石(右)もちゃんと健在でした。

 

 

 

 

 

なお、スッポンを始めとしてカメは多数

定住しているようですが、そもそも外来種だったり

飼育場から逃げ出した個体が大半だったりする故に

彼らは基本的にビオトープに好ましい生きものとは

捉えられません。しかもこいつら私が近づいても

一向に逃げる気配を見せないあたり、

誰かに餌付けされている可能性が大です。

 

余談ですが、ここまでスッポンを至近距離で観察したのは

今回が初めてとなります。しかもサイズは巨大で食べ出がありそう

(参考までに、私の靴のサイズは27.5cm)

もちろん人慣れしているとはいえ噛まれると厄介なので

手を出すのはご法度です。

 

 

 

 

 

【9/5 向島百花園&清澄庭園で撮影した生きもの】

鳥類・・・アオサギ、オナガ、カルガモ、コサギ、ダイサギ

昆虫類・・・アジアイトトンボ、アメンボ、イチモンジセセリ、ウスイロササキリ(?)、キンケハラナガツチバチ、コシアキトンボ、コバネイナゴ、シオカラトンボ、ショウジョウトンボ、セイヨウミツバチ、ツバメシジミ、ツマグロヒョウモン、ナミアゲハ、ヤマトシジミ

その他・・・アカミミガメ、クサガメ、スッポン

 

 

 

 

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