カワトンボとハンミョウ、今年も健在で~す(横浜自然観察の森) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

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雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。


5月中旬とくればカワトンボのシーズン。
特に毎年コンスタントに見られるスポットとして、
毎年必ずここ横浜自然観察の森を訪れることにしています。


 
キイチゴ(左・具体的な種類はちょっとわからず……)と、右はコウゾかな?
どちらも熟したら食べることができます(ここは自然公園なのでやめた方がいいでしょう)
なお、キイチゴはこれで完熟ですが、コウゾやクワの実は紫色になってようやく熟したと言えます。
赤い内でも食べられますが、甘みが薄く酸っぱいので素直に紫色のものを選ぶべきでしょう。



ツチイナゴが出ていました。
この手のバッタたちの成体が出てくるのは、大抵5月末くらいからですね。
それまではコンスタントに見られるのは、ヤブキリの幼虫くらいだったりします。





ビジターセンター前の植込みに、小さなゾウムシが出てきました。
ハスジカツオゾウムシというそうです。太く短い鼻(?)が特徴ね。

遭遇率 … 3
インパクト … 2
美しさ … 3
俊敏性 … 2


頭を手前にして上から見ると、前翅に白い「ハ」の字型の紋が見えるのですが
やっぱりこれが名前の由来なんでしょうかね?





大きさはこんなもん。ハムシレベルの小ささですね。
ハムシ同様、葉っぱなどを念入りにチェックしていないと見落としてしまいます。
ちなみにゾウムシの仲間は何となく大きそうなイメージがあるかもしれませんが
実際のところは本種程度のサイズが大半です。




いつものように池に行きました。
オタマジャクシが多いからか、家族連れがよく来ています。



池の畔にシランの姿が見られました。
どこかのブログで、ここに生えているのは自生という話を聞いたのですが……。
本当でしょうかねぇ? キンランとかよりも見つけにくいイメージがあったんですが。




クロスジギンヤンマが縄張りをつくり、パトロールしていました。
この手のヤンマはなかなか止まってくれません。
待機したんですが、無駄でした(泣)





上記の通り、ここはオタマジャクシの多い池です。
種類は不明(たぶんヤマアカガエルと思われる)。数は相当のものです。
よく水面に顔を出してパクパクしているのですが、
やっぱ生息密度が高すぎて水中の酸素が不足しているのでしょうか?

で、このオタマジャクシ、私が手を突っ込むとなぜか我先にと寄ってきます。
それだけでなく、手に吸い付いてきます。くすぐったいことこの上ありません。
あのー、アレ、アレっすわ。魚の汚れを掃除するベラとかエビとかみたいな感じ。
それはつまり、私の手が汚れているということですか?
(テニスをしてからそのまま来ているので、そのせいもあるかも?)

ちなみに突っ込んだ手は、石鹸で洗ったかのようにスッキリきれいになっていました。
……こいつは新しいセラピーとして使えるかも?




手を突っ込むだけで寄ってくるわけですから、
ご覧の通りすくい上げるのも簡単です。アミなんかいりません。

もちろんすぐ戻してあげましたよ。


 
さて、本命に会いに行きましょう。小川の流れる林道を訪ねます。
カワトンボたちは早々に姿を現しました。メタリックな輝きが美しいですね。





間近にいた個体を1匹捕まえてみました。もちろんフリーハンドです。
キバネツノトンボすら素手で捕らえられるのですから、これしきは朝飯前。
見た目通り繊細なので優しく持ちましょう。翅をそっと摘まめばOK。
それほど暴れることはないはずです。

で、これはアサヒナカワトンボなのか? それともニホンカワトンボなのか?
外見からでは見分けがつかないので少々困っております。
何かいい識別の方法はないんでしょうかね?
(ちなみに図鑑によっては、アサヒナカワトンボがそもそも載っていないこともあります)





カワトンボがいるこの林道は、ハンミョウの出現ポイントでもあります。
毎年個体数に差があり、さっぱり見かけない年もあればアホのように出てくる年も。
今年はどうやら後者らしく、林道を中心に園内随所で路上を歩いているのを見かけました。

相変わらず、美しくも残酷なこの表情。魅了されます。
ちなみに本種はまだ私も捕まえたことがありません。
噛まれたら痛そうとかいう以前に、まず絶対素手では捕まえられないのです。
手の届く範囲に近づいた時点で飛んで逃げられるのがオチ。





もちろん、音を立てずに極限まで接近すれば、ここまで鮮明な画を撮ることもできます。
まるで標本みたいな画ですが、ちゃんと生きた個体です。
園路沿いに設置された木製テーブルの上で日向ぼっこ(?)していました。

この色合いと輝き……タマムシと双璧を成す日本トップクラスの美しい昆虫ですが、
私個人としては本種を推したいところ。何というか、ただ単純にメタリックなだけではない
形容しがたい美しさがあるんですよね。人工物でもこのような色合いの再現は難しいのでは?




 
サイハイランというランの一種が群生していました。
戦の際に使われた「采配」に似ているからサイハイラン。遠目だと独特の形状ですが
一つひとつの花をクローズアップしてみるとちゃんとランの形をしているのがわかります。

地中の菌類と共生し、菌類の働きで発芽するタイプであるためか
確実な栽培・移植の方法が見つかっていない特殊なランだそうです。
生息地の開発や園芸目的の採取によって数がかなり減ってきているそうですが
前述の理由で採取したところでどうせ満足に育てることはできないはず。
無駄に終わってしまう以上、採取はやめてもらいたいものですね。

ちなみにここのサイハイランの情報は、前から結構Web上で掲載されていました。
その割にはちゃんと群生しており、採取圧から逃れられているようです。
人目に付く場所なので誰も採ろうとしないのかもしれません。





帰り際に、もう一種のゾウムシに遭遇しました。
2匹いますね。ちょうど交尾中だったのですが私が来たせいでばらけちゃいました。
恥ずかしがることないのに。

種名はクリアナアキゾウムシ。その名の通り、クリの木がお好みだそうです。

遭遇率 … 2
インパクト … 3
美しさ … 1
俊敏性 … 2

前述のハスジカツオゾウムシと違い、こちらは1㎝を優に超える大型種です。
全身にイボがありごつごつしたフォルム。ちょっと敬遠してしまう人も多いかも?
成虫も幼虫もクリの木を食べるそうなので、クリ園の皆さんには忌み嫌われているものと思いきや
サイズが小さいので被害が小さいためか、あまり駆除対象にはなっていないようです。
むしろクリ園の嫌われ者といえばカミキリムシの仲間が該当するらしく、
幼虫の食害によって木が倒されるなんていうこともよくあるそうです。恐ろしや。


【5/14 横浜自然観察の森で撮影した生きもの】
鳥類・・・カルガモ、ハクセキレイ、メジロ
昆虫類・・・アサヒナカワトンボ(ニホンカワトンボ?)、イチモンジセセリ、クリアナアキゾウムシ、クロウリハムシ、クロスジギンヤンマ、コジャノメ、コミスジ、シオヤトンボ、ツチイナゴ、ツマグロヒョウモン、ニッポンヒゲナガハナバチ、ハスジカツオゾウムシ、ハンミョウ、ヒメウラナミジャノメ、ヒメギス、ヤブキリ、ユウマダラエダシャク