何が渡良瀬と違うのか?(手賀沼・後編) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

昨日の続きです。最後に名前の出てきた「水の館」から。

その名の通り水に関する情報館であり、手賀沼のいろはを学べる施設となっています。

大変目立つ建物なので、沼沿いを歩いていれば見逃すことはないでしょう。



 

水の館内部です。シアターや標本、生きた魚の水槽など展示コンテンツは満載。

手賀沼の歴史に関わる資料などもあり、結構勉強になります。

手賀沼に来た際は、まず一度訪れておくことをお勧めします。もちろん休憩にも最適。




 
水の館よりさらに東へ。ここからしばらく、右手にヨシ原と沼を見ながら歩き続けます。

道中、モズ(右)を何度か見かけました。左手は広い田園地帯ということもあり、

この辺りには結構な数が生息しているようです。




アヒル……だよなコレ。

遊歩道から丸見えの場所で昼寝しています

この無防備さからすると、特に警戒する敵が周りにいないということでしょう。

似たような形で、近くでコブハクチョウも寝ていました。




歩~道はつづく~よ~♪ ど~こま~で~も~♪


……地平線が見えてきそうです。この辺で結構疲れが蓄積してきました。




沼に隣接する釣堀にて。コサギが釣り客に魚をねだっています(笑)

バケツの魚を狙わない辺りはある意味良心的といえる(?)かもしれない。




周囲にビルや高木などがないため、見晴らしは良好。

沼の東端まであと少し。ようやく折り返し地点です。


なお、雨除けもなければ建物もなく、近くにコンビニやタクシー乗り場もないので

雨具なしでゲリラ豪雨に見舞われるとほぼ詰みです。今後は気をつけなくては……。



折り返し後、右手に沼を見ながら柏方面に向かいます。
この辺りからヨシ原の面積が広くなり、ホオジロ(写真)等の鳥が増えてきます。




 

カンムリカイツブリ(左)も沼の随所で見かけました。

普通のカイツブリよりも遭遇数が多かった気がしますね。

右はこれまたアヒルです。厳密にいうと中央のマガモっぽいのがアオクビアヒル

右端の白いのがシロアヒルというそうです。どちらも家畜が野生化したものですね。

(右写真の左上にいるのは、純粋に野生のキンクロハジロです)



 

折り返し後の遊歩道。サイクリングロードとなっています。

ジョギングしている人も多く、見晴らしがいいので心地よさそうです。

運動用に使用されることを考慮してか、道中にはいくつかのベンチを設置。

ヨシ原越しに沼を眺めることもできるので、休憩にはもってこいです。




背もたれ付の回転タイプの椅子。

景色を眺めながらリラックスしたい人には最適ですが、1つだけしかないので違和感バリバリ。

見かけても、あまり使おうと思う人はいないかもしれません。

この時期は吹きさらしで風が冷たいのも難点。



さて、右手には見ての通りヨシ原が広がっており、広さこそ劣るものの

かの渡良瀬遊水地に勝るとも劣らない環境条件が手賀沼にも整っているように感じます。

しかし、遭遇する鳥の数・種類に関しては渡良瀬に大きく水をあけられており、

特に猛禽類のバーゲンセールに近いあちらと比較し、この日手賀沼で遭遇した猛禽はトビ1羽だけ。

生物多様性の観点から見ると、明らかに1ランク、いや2ランクほど劣ります。


なぜこれほどまでに差がつくのか? ちょっと理由を検証してみましょう。



1.人の立ち入りが多い

昨日の前編でも写真を掲載しましたが、手賀沼は釣り客による立ち入りが多く、

野鳥が営巣・繁殖するにはあまり適しません。渡良瀬は自然地として保全が徹底され、

釣り客自体は多いものの、鳥の営巣する深いヨシ原にまでは入ってきません。



2.沼と比較して、ヨシ原の面積が狭い

手賀沼は沼を中心に周囲をヨシ原が取り囲む形となっていますが、

渡良瀬が広大なヨシ原中心であるのに対し、こちらは明らかに沼の比率が大きいです。

カモ類はともかく、チュウヒやクイナなどはあくまでヨシ原を棲み家として利用するため

遭遇率が低くなるのは致し方ないでしょう。これらの鳥は、ただ水場があるだけでは飛来しません。



3.決定的に水が汚い




水質の悪さについては昨日もお話ししましたが、手賀沼の場合はゴミが多いのも問題。

酷い所では写真のように、沈没したスワンボートが放置されている場合もあります。

(見えていないだけで、本当は水底にもっと沈んでいる可能性もあり)

こーいうのって行政の判断で片づけられないのか? やっぱ経費の関係で難しいのか……?


言うまでもなくこうしたゴミの散乱は、水の汚染や誤食などによる害を及ぼします。

せっかく近年水質が良くなってきているわけですし、早いところ撤去していただきたいものです。

まあ、つい最近まで水質ワースト1だった沼なわけですし、

ラムサール条約に登録されるような渡良瀬と比較するのは酷かもしれませんけどね。




 

水面から突き出す足場は、主にカワウ(左)に占領されています。

まれにミサゴが現れることもあるらしく、その際にはこうした足場を使用することもあるでしょう。

右は、逆光で申し訳ありませんがオオジュリンです。よくヨシの茎を折って中の虫を食べている鳥。
アオジなどと同じくホオジロ科の鳥ですが、出現率はやや下がります。




大分移動してまいりました。

ヨシ原の奥、沼の対岸に先程の「水の館」があるのがわかりますでしょうか?

写真右奥をよーくチェックしてみてください。あの独特の屋根が見えるはずです。



スタート地点まで残り1キロ程度というところで、白鳥2羽と遭遇。

残念ながらこれもコブハクチョウです。




 

沼の西端から歩くこと約5時間。ようやくスタート地点の北柏ふるさと公園に戻ってまいりました。

対岸の左奥にある鉄塔が、昨日アップした写真の中にあるのがわかりますでしょうか?

この時点で15:30を回っており、日も大分傾いてまいりました。

せっかくここまで歩きましたので、このまま降車した柏駅まで戻ります。

右は夕暮れのヒヨドリです。




歩くこと約30分。柏駅周辺まで戻ってまいりました。ここまで来ると結構栄えています。

その昔はサークルの帰りなどによくこの周辺で飲み会をしたものです。

気になって見に行ったところ、当時の飲み屋はなくなってしまっていました……これも時代の流れか。


とりあえず長~い1日でした。あまり目立った収穫はありませんでしたが、鳥の種類自体はそれなり。

次回にまた期待できそうな気がしました。夏場も面白そうですしね。

2015年には、また何度か足を運ぶことになりそうです。



【12/23 手賀沼で撮影した生きもの】

アオサギ、アオジ、アヒル、エナガ、オオジュリン、オオバン、オナガガモ、カイツブリ、カルガモ、カワウ、カワセミ、カンムリカイツブリ、キンクロハジロ、コガモ、コサギ、コブハクチョウ、シジュウカラ、ダイサギ、ツグミ、トビ、バン、ヒドリガモ、ヒヨドリ、ホオジロ、ムクドリ、モズ、ユリカモメ