ゲートを無難に出たとき、私は勝利を確信した。
4コーナーの外めをスムーズに回って直線を向いたとき、私は圧勝を確信した。
ブエナビスタが2歳女王のタイトルを奪取の瞬間は、だが、そこに感動という言葉は似つかわしくなかった。
アンカツはもう次の戦いのために手綱を緩めていた。
私も彼女の脚元ばかり見ていた。
ケガさえなければ牝馬3冠は間違いないと、直線のどこかで確信していた。
レース後、
アンカツは「大きいレースをいくつも勝つつもりでいます」と言った。
松田博師は「獲れるものは全部獲りたい」と言った。
彼らが自らに課したハードルは、ブエナを持ってすれば実はそれほど高くない。
今回の最も大きな敵は、17分の6の抽選。
この、自らの力ではどうにもならない壁を越えたとき、そこに残る小さなハードルは想定外のアクシデントだけ。
普通に回ってくれさえすれば…
95秒間の“すばらしい光景”は完成した。
運もある。
もう同世代の牝馬には負けない。
かつてディープインパクトで無敗の3冠を達成したときもそうだった。
POである自分も一つ一つのレースに感動している余裕はなかった。
もちろん勝てば嬉しいが、それは達成感であり、安堵感。
常にもう一人の冷静な自分が客観的にレースを分析し、脚元への負担と次への課題を考えていた。
周りが思っているほど楽しくない。
初めて心から喜べるのは、
夢から目標となり使命になった無敗の3冠を達成したとき。
そこまでの10か月以上に及ぶ時間は、絶えず恍惚と不安を行き来する。
この苦しさこそ、勝って当然の超一流馬にめぐりあわなければ味わえない感覚。
ブエナビスタとの苦しい1年を満喫したい。