まだネットや携帯電話が普及していなかったころ、POGはお手製のノートに新聞や雑誌の記事を切り抜いて貼り、愛馬のクラシックまでの軌跡を保存版として楽しんでいた。
写真は95年の阪神3歳牝馬S(現阪神JF)の結果を報じる『週刊競馬ブック』の切り抜きだ。
この年、私はバブルガムフェローとエアグルーヴのPOになっていた。すでに3歳秋の時点で来春のクラシックの有力候補に挙げられていた両馬は、当然のように暮れの3歳王座決定戦で最初のGⅠを狙いにいった。
しかし、先陣を切ったエアグルーヴがまさかの2着に敗れてしまう。
スタートから好位2番手に取り付きいつでも前を交わせる態勢で流れに乗ったものの、直線勝負で鞍上キネーンの仕掛けがわずかに遅れたために、ハナを切ったビワハイジにまんまと逃げ切りを決められてしまったのだ。その差はわずか半馬身。最も強い競馬をし、最後もしっかり伸びていたにもかかわらず、負けて強しの代償はあまりにも大きかった。
馬は最優秀3歳牝馬のタイトルを逃し、私も馬券を外した。それだけではない。翌週からチューリップ賞までの3か月の間、常に大きく報じられるのは女王ビワハイジであり、準女王はあくまで2番手の扱い。そんな記事の見出しに必ず付け加えられるのが、「力負けだとは思わない」という伊藤雄二調教師の悲しい叫びだった。
その後、グルーヴはチューリップ賞で天敵ハイジを5馬身もぶっちぎって勝つと、熱発で桜花賞をパスして直行したオークスで念願の母子制覇を達成。一気に女傑への道を駆け上がっていった。対するハイジは桜花賞15着後、オーナーの意向でダービーに挑戦(13着)するなど目標を見失った走りを続け、翌年1月の京都牝馬特別(1着)を最後に繁殖入りした。
女王と準女王の運命は、わずか3か月でその立場を大きく変えてしまったが、私にはその3か月の悔しさが今でも忘れられない。競馬は内容ではなく結果がすべて。勝たなければ何の意味もない…。
“世紀の敗戦”から10年を経た2005年春。私はのちに無敗の3冠馬となるディープインパクトのPOになっていた。すでに「怪物」と称されていたディープにとって弥生賞は単なる通過点のはずだった。
が、そんなVロードに再び天敵「ビワハイジ」の名前が亡霊のように浮かび上がってきた。
アドマイヤジャパンだ。
ビワハイジの3番子でディープと同じサンデーサイレンス産駒の栗毛馬は、弥生賞でディープに首差まで迫ると、皐月賞3着、ダービー10着、菊花賞2着と、先行粘り込みのクセ者脚質で3冠の最大のライバルとして怪物を苦しめ続けた。結果的にすべて勝つことができたが、私にとってはグルーヴからの因縁が代を重ねてもなお追い掛けられているような怖さを感じた。
転機は突然やってきた。
ディープの3冠の翌年、06年初夏のPOGドラフトの際、これまでビワハイジの子を所有し続けてきたPOが不参加を表明した。2歳世代にはアグネスタキオン産駒の牡馬「アドマイヤオーラ」がいる。本当なら“兄弟馬優先ルール”で絶対に手に入らない血統がフリーになったのだ。
もちろん、私にはビワハイジのと因縁があるため指名する気はない。しかし、この年からフッキーと共同参戦を決めたチーム「3冠日」には、ライバル陣営とのしがらみがないのと同時に核になる血統もなかった。ならば1位で行こう。
ひょんなことからビワハイジが母として私の味方になった。
95年「ビワハイジ対エアグルーヴ」
05年「ディープインパクト対アドマイヤジャパン」
06~07年「アドマイヤオーラ皐月賞4着・ダービー3着」
07年「アドマイヤテンカ急死」
13年に及ぶ私とビワハイジの因縁は、どうやら今年の2歳産駒で一つの区切りをつけられそうだ。
【阪神JF】
◎⑬ブエナビスタ
勝たなければ意味がないことを教えられたビワハイジの子が、新馬戦で3着に敗れながらも負けて強しで評価を上げた。軽い皮肉である。おかげで無駄な未勝利戦を叩いての抽選待ちになってしまい、17分の6の抽選を突破したものの、まだこの馬の経験不足を指摘する声があるのも事実だ。しかし、リーチザクラウンに勝るとも劣らない末脚で鋭く迫ったあの伝説の新馬戦は、牝馬同士の重賞など比べものにならないほど収穫があったはず。それは、その後の調教の動きや気性面の成長に如実に表れている。
2戦目で人気通り圧勝し、私の元には関係者から安藤勝が「春は(桜花賞かオークスの)どちらか間違いなく勝てる」と言っている、という情報が入ってきた。そう、陣営は2歳女王のタイトルなんて行きがけの駄賃くらいにしか考えておらず、すべては来春のクラシック勝利に向いているのだ。一部のマスコミからは「女ディープインパクト」なんていう肩書きまで与えられているが、それも今回のレースを見ればファンに受け入れられるかもしれない。それくらい同世代の牝馬とはレベルが違うはずだし、ここは勝ち負けではなく勝ちっぷりを求められるレース。ここを勝って来春は…実は密かな野望がある。桜花賞も圧勝して母に続きダービーに挑戦し、あのリーチザクラウンにリベンジしてほしい。けっして夢物語ではないだろう。
さて、相手探し。
アタマが鉄板なので、絞って買うか手広く買うか迷ったが、波乱の歴史から絞るのは危険と踏んでフォーメーションで買うことにした。
★②⑨⑪⑫⑭⑰
△③⑤⑥⑦⑩⑯
3連単◎→★→★△66点
ヒモ次第では100万馬券も含まれる“2、3着なんて何でもいい馬券!”で、夢も一緒にゲットしたい。
