今もそうなのでしょうか？ ロシアを旅する女の人にロシアの男の人がたずねます。
「キエフからおみえですか？」と。
誉め言葉なのだそうです。エキゾティックな魅力に充ちた女性ですねと云う意味が。
アルメニア人の少女に惹かれた少年をチエホフは短篇『美女』に描いています。訪れたドストフ・ナ・ドヌ（アゾフ海の付け根に位置）で美しい少女に出逢い、惹かれ、やがて彼女の醸す哀愁に惹かれていることに気づき… キエフがキーウに代わり、オデッサがオデーサに代わりました。
クレミア半島が戦地へ。ヤルタはチエホフが『犬を連れた奥さん』を生んだ地です。黒海を臨み森に囲まれた保養地ヤルタへうつり棲み、この名作を描きました。映画『黒い瞳』では、保養地での曖昧模糊な恋へのいざないがみごとに描かれていました。舞台となる地。どうか消滅しないで欲しいと願います。諍う国に棲む人々はそれぞれに懸命に生きてきた…
トーベ・ヤンソンの若き日の葛藤を描いた映画『TOVE』。恋に揺れ、芸術と漫画に揺れる葛藤が描かれています。マイノリティへのやさしさがムーミンと同化して伝わりました。ザイダ・バリルートと云う女性監督をはじめスタッフたちのトーベへのリスペクトが充ちあふれています。それはスェーデンを代表する著名人へのリスペクトではなく、一愛すべき女性へのリスペクトであり、作り手の眼（eye）とは揺るがないものであることに感動しました。
ラストシーンでは実物のトーベが踊ります。トーベとパートナーのトゥーリッキがオフの日に過ごしたクレーヴ島でトゥーリッキが撮った映像です。多忙を極めたトーベがオフを満喫する月夜のダンス。その姿を愛いっぱいで撮るトゥーリッキのeyeが伝わります。
著名な写真家がカメラはバカチョンでいい、撮る人のeyeがたいせつと仰っていました。eyeは愛――
アルメニアのアーティスト
ティグラン・ハマシアンのCD