「あんまり、おおげさに、考えすぎないようにしろよ。なんでも、大きくしすぎちゃ、だめだぜ」
ぽつり、そう云って旅に出ていくスナフキン。
みなさんは子どものころ、空想するのは好きでした? 夕暮れどき、空に舞う名前もない虫の群れをみて、空想する時間がわたしは大好きでした。うしろで飼い犬が、またして今宵も空想しているわたしをみつめていました。
スナフキンのキャラクター紹介。ムーミントロールの親友。ハーモニカが得意。自由と孤独を愛し、春にムーミン谷へ来て秋に旅に出る。〝所有〟することに興味がなく、禁止を示す立て看板を嫌う。〝Blowin' in the wind〟を歌うボブ・デュランに似ているような…
「朝早くから、なにか奇妙なわびしさが、私を苦しめはじめたのである。まったく藪から棒に、この孤独な私をみんなが見棄てようとしている。みんなが私から離れようとしているというような気がしはじめたのだ」
或る朝の青年の孤独。だれしもにふとよぎる朝の孤独。
白夜のペテルブルグに一瞬煌めいた恋―― 貧しい空想家のインテリ青年はうら淋しい下宿部屋で空想だけに生きています。ドストエフスキーの『白夜』の主人公。ふとしたことから白夜に出会った女性に恋をし、愛をいだき、恋心は妄想へ膨らみ、ふたりの想いが最高潮に達しようとした瞬間に、もろくくずれ去ります。
「ぼくは空想のなかで無数の小説を想像するんです」と彼は恋する女性に語ります。
空想はものを書く人の特権ですね。でもときに空想が妄想へむくむく膨らみ独り歩きし、暴走までしてしまいそうなとき、自由と孤独を愛し、だからこそ云いすぎない、秋の月夜のスナフキンのハーモニカを聴いてみよう。スナフキンのような友だちがいたらたいせつに。