学生のころゼミ旅行でロシアへ行きました。ロシアの若きクリエイターたちの活動を学ぶことが目的でした。前衛劇団の公演や映画撮影所、ディスコへまで。斬新な息吹を感じました。
旅の終わりの夜にレニングラード(現サンクトペテルブルグ)の「サトコ」と云う名前のレストランで打ち上げの会食をしました。日本女性のサトコさんがロシアの男性と出会い、レニングラードでレストランをしてらしたのかしら。銀の食器の並ぶテーブルを縫って給仕する和服姿の美しい女性。とロマンティックに妄想をふくらませたのですが、由来は「Садко」と云う題名のロシアオペラからきているそうです。
おはなしはグースリと云う弦楽器弾きの旅芸人のサトコが海の王女の助けを得て富と幸福を求め大海原へ挑む冒険物語。「虹の世界のサトコ」(アレクサンドル・プトゥシコフ監督)と云う題名の映画になっています。
映画はビッグスケールのロケとモブシーンと特撮。莫大な製作費。さておきファンタジー映画として邪気のない悠々たる世界観が伝わります。〝受け狙い〟のないピュア―な世界。このところの現実の出来事からの不安感と、日々目の当たりにする映像の受け狙いに距離がありすぎ戸惑います。大いに学ばなければと思います。
Садкоでの夜会を終えた翌朝、空港へ向かうバスの車窓に息を吞むようなひまわりの大草原が広がりました。ガイドさんの「ひまわりの下には多くの戦士が眠っています」と云うおはなしにわたしたちは長らく言葉を失いました。
レニングラードのネヴァ河沿いの公園の木陰のベンチで道を教えてくださったロシア人のふたりのお婆ちゃん。じゃが芋をいっぱい食べてこられたふくよかな大きな体で、日本からきた小さな体のわたしたちに背をかがめてやさしく教えてくださいました。そのときのお婆ちゃんたちのぬくもりを思い出しました。