22Days:「いつかどこかからのメッセージ!?」の巻 | 天然100%!今日もがんばるオレンジブログ!

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基本的にはポケモンの二次小説で、時折色んなお話を!楽しく作りたいですね!

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 なんとかソラやココロと持ち直せたのは良かったな。なんだかんだペラップもアドバイスしてくれるし、ビッパやソラのおかげでこの世界のことを少しずつわかってきた。…………それにしてもお尋ね者ってどんな悪事を働いてるんだろう。それも一般のポケモンがあまり近づかない不思議のダンジョンで………。


 「もう、ススム!!寄り道ばっかりしないで早く“カクレオンのおみせ”に行こうよ!!ビッパのことを待たせてるんだよ!?」
 「まあまあソラさん、落ち着いてください…………色んなポケモンとお話しできるチャンスだと思えば良いんですから………」


 ソラは機嫌を斜めにしていた。ココロがまるでお姉さんのようになだめている。でも自分にはそんなやり取りが目に入ってなかった。ぼく自身まだ“ヒトカゲ”になってから3日目ということもあって、この世界のことをほとんど知らないのだ。仮に周りから話しかけれてその内容を理解出来ず、話が合わない変な“住民”のように思われるのも嫌だし。


 (昨日のダンジョンで自分は“孤独に生きてきた”みたいなことを言っていたらしいし………。もしかしたら人間だった頃は周りの意見とかをちゃんと聞き入れなかった難のある性格だったかもしれないな…………。だとしたらそれを抑えるためにもちゃんと今のうちに色んなポケモンと触れ合える努力をしよう)


 「もうひとつの気持ち」に対してまだ何にも確証は無いけれど、そうやって交流を深めていけば………もしかしたら自分が人間に戻れる方法だって見つかるかもしれない。都合の良い解釈だろうけど、そうやって微かな物に希望の光を当てていかないと前に進めないような気がする。


 (決してソラやココロと一緒にいることが苦しい訳では無いんだけどね。でも人間だった記憶が残っている以上、仮にそれが戻ったときが嫌だな………。今とは気持ちがガラリと変わる可能性だってあるし、そうしたらソラやココロをガッカリさせてしまうことになるのかも知れない。それだけは嫌だから…………そうなる前に人間に戻るべきなんだ)
 「ススム?ススム………?ねぇ、ススムってば!!聞いてるの!!?」
 「うあっ!!近い!!」


 突然ソラの不機嫌そうな顔がぼくの目の前にアップされた。種族的にぼくより背が小さいから目一杯背伸びしていたのだろう。一歩間違えばそのままキスをしてしまう状態だった…………と言えば、どれだけ至近距離かをお分かり頂けるだろう。


 「な、なんでそんな至近距離なのさ………!?」
 「なんで………ってススムがちゃんと聞いてないって思ったからだよ!!」
 「ごめん、ちょっと考え事していただけだから………」
 「大丈夫ですか?ススムさん」


 ココロが心配そうにぼくに寄り添おうとする。ソラがまた怒りそうな雰囲気だったけど、昨日ほどではない。でも少しだけムッとした表情をしているのは事実。よほど嫉妬してしまうのだろう。いや、嬉しいんだけどね。ココロが寄り添ってきた瞬間にそっとぼくの両手を握り、このように声をかけてきたのである。


 「ススム。困ったことがあったら私に相談してね?私、ススムの力になれることならがんばれるから!」
 「え、あ………ありがとう」


 ソラが目を真ん丸に開いてじっと見つめてくるものだから、自分も凄く恥ずかしくなっていた。だってぼくも彼女が好きだから。そんなに尽くそうとしているなんて自分はなんて幸せ者なんだろうか………とか思った。おかげであっという間に不安な気持ちも消えたのである。だからこそ昨日自分が感じた「もうひとつの気持ち」がぼくの本当の姿でないように願うばかりだった。


 「あ、あたしだって………!!ススムさんが困っていたら力になりますからね…………!!」
 「あ、ありがとう………」
 「何なの!?私の真似しないでよ!」


 ココロにも言われてしまった。若干潤んだ表情をしているのは気のせいだろうか。そしてソラに負けじとまじまじと見つめてくるものだから、恥ずかしいったらありゃしない。二倍の幸せを感じていた。ソラは顔を真っ赤に怒っていたけど。もしかしたらココロにも何かしらぼくへの気持ちがあるのだろうか。もちろん恋愛的な意味で。でもまあぼくの勘違いかも知れないし、ここで余計なことを口にするのは止めておこう。ただ、ココロも最高のメンバーには変わりはない。感謝の気持ちが自然と溢れてくるのであった。


 (でも…………しばらくはソラとココロが火花を散らす関係は収まりそうもないな。どうしたら良いんだろうか…………)


 一番手っ取り早いのはぼくがハッキリとソラへと気持ちを伝えることだろう。ココロがどんな反応をしようとも。でもそんなことをするのは早い。なぜならこの作品はまだまだ序盤戦だし、勝手な行動をすると作者さんの手によってぼくの存在を抹殺される可能性もあるからだ。やれやれ、頭が痛い。


 「へい!お前たち!この間ギルドに入ったリア充な新入りじゃねぇか!おいらはヘイガニ!おいらもプクリンのギルドの弟子なんだぜ!ヘイヘイ!なんか困ったことがあったら何でも聞いてくれよな!ヘイヘイ!」
 「あら!ギルドの新入りさんじゃない!こんにちは!ここは色々揃ってるから便利ですわよ!探検に役立つものを揃えてくださいね!」


 気を取り直して“カクレオンのおみせ”に向かう途中、ぼくたちはヘイガニ、別の場所でキマワリにも逢った。二匹とも探検活動に向かうための準備をしていたのかもしれない。いずれにせよ先輩の弟子に気にかけて貰えるのはありがたい気持ちになれた。自分たちだけで抱え込む必要が無いのだから。


 「ギルドのメンバー、みんな優しいね…………」
 「そうですね。本当にありがたいですね」


 ソラやココロもしみじみと感じているようだ。いつか自分たちも成長したら、同じように誰かを励ませるようになれたら良いなぁなどと思った。


 道中ではプクリンのギルドには所属していない他の探検隊のポケモンとも出逢った。まずはことりポケモンと呼ばれている種族、ポッポ。それからどんぐりポケモンと呼ばれている種族、タネボーで構成されている“ポッポボー”だ。



 「よ、新入りチームらしいな!ここには多くの探検隊が集まっているんだ!オレたち“ポッポボー”もその一つだがな!」
 「オレたち二匹は探検隊!ポッポのオレと相方のタネボー。名前も合わせて“ポッポボー”だ!よく覚えておくんだな!」


 二匹とも威勢が良く、キリッとした表情が印象的だった。ぼくたちもあんな風に自信を持った堂々とした振る舞いをしたいものだ。


 続けて出逢った探検隊は“タベラレル”という不穏な名前を持ったチームだった。ちょうど“エレキブルのれんけつてん”の前にいたわけだが、そのメンバーはツバメポケモンと呼ばれている種族…………オオスバメ。それからいもむしポケモンと呼ばれている種族、ケムッソ。


 「オレたちは探検隊“タベラレル”!探検隊の名前は隣にいるケムッソが考えたものだ!」
 《え!!?》


 オオスバメの発言に全員が一瞬フリーズしたのは言うまでもない。


 「どうだ!良い名前だろう!」


 誇らしげに語るオオスバメの言葉にぼくらはただただ苦笑いするだけだった。せっかくなので隣にいるケムッソに詳しい話を聞いてみる。


 「え?なんで“タベラレル”なんて名前にしたのですって?それは………そのう………。いずれ……そうなるんじゃないかと思いまして………。うう………ブルブル……」


 ケムッソの言葉にもぼくたちは苦笑いを浮かべることしか出来なかった。そうして何もないことを願いながらその場所を離れ、小川にかかっている小さな橋を渡ったのである。








 橋を渡った先にも別の探検隊に逢うことが出来た。というのもソラが何かを思い出したようで、今ぼくたちが持っている大事な道具を“ガルーラのそうこ”に預けておこうと言うことになったのである。それには経験者であるココロも賛成し、ぼくたちは“カクレオンのおみせ”のその先にある“ガルーラのそうこ”へと足を運んだ。


 「私たちは“マックロー”。今までにもう色んな場所を探検してきてるのよ」


 そんなときに出逢った探検隊が“マックロー”。にんぎょうポケモンと呼ばれる種族のカゲボウズ、それからくらやみポケモンと呼ばれる種族のヤミカラスというメンバーで構成されているようだ。しかし…………、


 「ワタシ、光り輝くものに目が無いザマス!ピッカピカに光るお宝を求めていこうって提案するザマスが………いつもカゲボウズに反対されるザマス。何度頼んでもちーっとも聞いてくれないザマスのよ。キーーーッ!」


 必ずしもこの二匹の意見は一致していないようだ。いわゆる凸凹チーム。ぼくたちはまたも苦笑いをすることになった。


 「よっ!オマエたちかい?最近ギルドに弟子入りしたってのは?オレはあばれざるポケモンのヤルキモノ。じっとしてるのが苦手でよ、いつもやる気いっぱいなんだ!よろしくな!」


 最後に声をかけられたのはどうやら住民のポケモンの様子。探検隊には関係ない一般のポケモンにもこうして噂が広がるなんて…………それくらいプクリン親方と、ギルドはこの世界では有名な存在なんだなぁ…………なんてぼくは思った。


 「いらっしゃい、ガルーラおばちゃんの倉庫よ。アンタたち、ここは初めてのお客さんだね?それなら一応ここのことを説明しないといけないわね?」


 倉庫の経営主、ガルーラが笑顔でぼくたちのことを出迎えに来てくれた。だけど見慣れないメンバーを気遣ってくれたのか、そこからは落ち着いた表情で次のように話をしてくれたのである。


 「倉庫にはダンジョンから持ち帰った道具やお店で買った道具をとっておくことが出来るのよ。例えば冒険中に力尽きると持ち物は無くなるけど………でも、倉庫の道具は大丈夫!!おばちゃんここでガッチリ守ってるから、倉庫に預けた物は無くならないわ!だからもし大切な道具があったらぜひ倉庫に預けてね!」


 自信満々に話されるとぼくらも凄く安心する。せっかくなので今は使わないと思われる“イエローリボン”や、昨日バネブーからもらった貴重な栄養ドリンクなどを預けることにした。まだまだぼくたち“トゥモロー”は未熟なチーム。ダンジョンで倒れてしまう危険性が高いのだから。


 「これでようやく“カクレオンのおみせ”に行けるね」
 「うん!」
 「何か良いものが売っていると良いですね!」






 「いらっしゃ~い♪こちらカクレオンしょうてんです~♪」


 “ガルーラそうこ”の隣、ちょうどぼくたちが渡ってきた橋に戻る形になった店頭には二匹のカクレオンがいたのだが、ソラが言うにはぼくたちから向かって左側のカクレオンが探検活動に使うアイテムや食べ物などを売っているらしく、ぼくはそのカクレオンに声をかけたわけだ。どうやら彼が店主らしい。


 「お客さん、ここは初めてですね?一応お店の概要をお伝えしますと、ワタシたちカクレオンは道具を売ることに情熱を注いでいるんです~。道具はダンジョンの探検で役に立つものです。色々工夫して使ってくださいね~。またお店の道具が品切れになった場合………新しい道具が入るのは次の日になります。それまで一度ダンジョンへ行くなりしてまた来てくださいね~♪なお、ワタシたちカクレオンしょうてんは全国展開しております~。ダンジョンの中にもお店がございますのでご利用してくださいね~♪」
 「そして!こちらは“カクレオンせんもんてん”!不思議玉とわざマシンのお店です~♪せっかくなのでこちらも概要をお伝えしますね!わざ…………それは究極の力。岩を砕き、空を飛ぶ。技にはたくさんの種類があってダイナミックかつエレガント!中には非常に珍しい技もあったりして………それはもうゴーーージャス!!そんな技がなんと!このわざマシンを使って覚えられるんですよ~!?ね?なんか夢みたいでワクワクするでしょ?ワタシなんかコーフンして体がバラ色に変化しちゃいましたよ!これからも隣の兄共々ご贔屓にしてくださいね~♪」


 とのことである。途中からカクレオン兄弟のに熱が入ってるのはよくわかったけど、あまりにも話が長かったので途中から話がよく把握出来なかったことは内緒である。ひとまずこのときはリンゴを3つ、オレンのみを6つ、ばくれつのタネとすいみんのタネをそれぞれひとつずつ、それから“ひでりだま”という不思議玉をソラとココロの要望で購入したのである。


 「ありがとうございました!またお越しくださいませ~♪」


 道具が売れたことで嬉しかったのか、カクレオン兄弟がこのとき一番の笑顔と深々としたお辞儀をしてぼくたちにお礼を伝えてくるのであった。


 「さ、ギルドに戻ろうか」
 「そうですね」
 「早く行こうよ!ビッパも待っているだろうし!」
 「あ、またソラさんってば!一人だけずるい!」
 「だからって寄り添うことないじゃない!」
 「あわわっ、二人とも!やめてくれよ!」


 
 ひとまず準備でこれで良い。そこまでは良かった。しかしここでまたソラがぼくの手を握って歩こうとしたことで不機嫌になったのか、ココロが負けじとぎゅっとぼくの体に寄り添ってきたのである。これにはソラも両耳をピンと立てて再びココロと火花を散らしてしまう。そんな光景を周りはなんだか気まずそうに見つめてくる。つまりここでもぼくは変な勘違いをされてしまうことになった。


 …………そのときだ。遠くから小さい子供の声が聞こえてきたのは。


 「カクレオンさ~ん!」
 「おお~!マリルちゃんにルリリちゃん!いらっしゃ~い♪」


 ちょうどぼくたちがやってきた方向から姿を見せたポケモンは二匹。一方はみずねずみポケモンと呼ばれている種族、マリル。もう一方はみずたまポケモンと呼ばれている種族、ルリリだった。二匹とも笑顔で元気が良いと印象だ。そんな二匹が可愛くて仕方ないのか、店主のカクレオンもどこかニコニコした感じである。


 「すみません。リンゴください」
 「はいよ!」
 「ありがとう!カクレオンさん!」
 「まいど~!いつも偉いね~♪」


 ルリリが注文し、カクレオンがリンゴを彼らが持ってきたマイバッグならぬマイバスケットに入れて手渡す。マリルが嬉しそうに笑顔でお礼を伝え、カクレオンはそんな彼らのことを褒めちぎるのであった。


 「いやね。あの二匹は兄弟なんですけど………最近お母さんの具合が悪いんで、代わりにああやって買い物してるんですよ」
 「へえ~………」
 「エライですね………」
 「いやホント。まだ幼いのにエライですよね~♪」


 店主の隣にいる…………つまりぼくたちから見て右側にいるバラ色の体をした色違いのカクレオンの説明にぼくたちも感心してしまう。するとそこへ先程の兄弟が慌てた様子で息を切らしながらすっ飛んできた。

 
 「カクレオンさ~ん!」
 「おや!どうした?慌てて戻ってきて……」


 疑問を感じた店主がマリルに尋ねる。するとその理由がわかったのである。


 「リンゴがひとつ多いです!」
 「ボクたちこんなに多く買ってないです」


 どうやら彼らはリンゴの数が注文した数よりも多く入っていてビックリしたようだ。それにしてもちゃんとそういう事も知らせるなんて、凄く素直に育てられてるんだなぁってぼくは思った。


 (ぼくは………人間のときはどうだったのかな?あの兄弟のようにちゃんと素直だったのかな…………)


 ぼくは思わず人間時代の自分のことが懐かしく感じた。…………と言っても記憶が無いから、この表現が果たして正しいのかと疑問には思ったけれど。


 「ああ、それはワタシからのおまけだよ。二匹で仲良く分けて食べるんだよ」
 「ホント!?」
 「わ~い!ありがとう!カクレオンさん!」
 「いやいや。気をつけて帰るんだよ~♪」


 どうやら余分なリンゴは店主の粋な計らいだったらしい。さすがは商いをする者と言うべきか。事情がわかった二匹から曇った表情は消え、店主から見送られているその姿もさっきより楽しそうに見えた。ところが次の瞬間、目の前でルリリが転んでしまったのである。


 「イテッ!」
 「キャッ!!」
 「ルリリちゃん!?」
 「大丈夫!?」


 ルリリの手元からその小さな体と似たような大きさのリンゴが弾みながら、ぼくたちの方向へと転がってきた。慌ててルリリのそばに駆け寄りケガが無いかと確認する。


 「す、すみません。ありがとうございます」
 「どういたしまして。リンゴを落としたよ?はい。気を付けるんだよ?」


 どうやらケガは無かったようで、ひとまずぼくたちは安心する。ぼくは笑顔で起き上がったルリリへ拾ったリンゴを返したのである。


 ……………そのとき!ジワーっと言う波のような音を発しながら変な光と共に、ぼくは苦しくなった!!








 (な………何?今のは?………)


 もう一度同じようにジワーっと言う波のような音や変な光!ますます目の前が眩しく感じてしまう!!直感的に自分ではどうにもならない感じがした。


 (め……めまい?かな?………)


 三度変な光が起きた!と、目の前が真っ暗になり、一筋の白い閃光が走ったのである!!


    た………助けてっ!!


 (な……なんだ?………。い、今………確かに助けを求める声が………)


 ひとつだけ声が聞こえたかと思うと、またもや目の前で一筋の閃光が走った!次の瞬間視界が段々と明るくなる。現れたのは先ほどと全く同じ。決して危機的な異変が差し迫っているようには見えなかった。だけど震えが止まらない。心臓もバクバクしている。しっぽの炎もなんか落ち着かない燃え方をしている。すっかり動揺してしまったぼくはキョロキョロと辺りを見渡す。しかし、周りは至って穏やか。特に変わった様子は見られない。だけどあの声はたった今この場所で聴いたばかりである!にわかには信じられないけれど、


 (い、今のは………キミが言ったのか?…………)


 そう。正に今自分の目の前にいるポケモン、ルリリの声だったのだ。だが、なぜこんなことが起こったのか全然理由がわからない。変な恐怖感を覚えてしまったぼくは、思わず一歩、二歩と後ずさりをしてしまったのである。


 「……………?どうかしたんですか?」


 そんなぼくを不思議に思ったのか、それとも心配になったのかルリリが尋ねてくる。と、そこへお兄ちゃんであるマリルの声が聞こえてきた。


 「おーい、ルリリ!どうしたんだ。早く来いよー!」
 「うん。今行くよ!お兄ちゃん!」
 「ヒトカゲさん、本当にありがとうございました」


 ルリリが礼儀正しくお辞儀をしてお礼を伝えてきたが、果たしてそれが自分に届いたのかはわからない。それくらい先ほどの出来事が衝撃的だったのである。


 「大丈夫か?」
 「うん!」
 「買い物も終わったし………あとは落とし物を探すだけだ。早く行こう」
 「うん!お兄ちゃん!」


 心配したマリルがルリリを迎えに来た。“落とし物”という意味深なワードを残して。でも今の自分にはそんなやり取りでさえも気にする余裕がなかった。


 「ウフフ。可愛いね、あの二匹……… !?」
 「そうですね♪」


 マリルとルリリの二匹のことを愛しく感じるのか、ついつい微笑んでしまうソラとココロ。まるで自分の弟を見守る姉、あるいは我が子を見守る母親のように。そして何気なく彼女たちがぼくの方を振り向いたときである。



 「………!ん?ススム、どうしたの?」
 「さっきから顔色が悪いですよ?大丈夫ですか?」


 驚くソラ。心配するココロ。反応はそれぞれ異なっていたけど、直後に寄り添ってくれたことに変わりはない。仕方ない。なんたってそのときのぼくは青ざめた表情で茫然と立ち尽くすのみだったのだから。普段ならそこで温もりを感じるのだが、そのときは全くと言っていいくらいに何も感じることがなかったのである。だけどこのままではいけない。そのように思ったぼくはとりあえず事情を二匹に伝える。


 「えっ?さっき助けてって言う声が聞こえてなかったかって?いや。私、何も聞こえなかったよ?」
 「あたしも特に…………」
 「本当に!?だってあんな大声で叫んでいたんだよ!?」


 ぼくは不思議そうに答えるソラとココロに驚いた。だってあんな至近距離にいて何も感じないなんて…………おかしいじゃないか!!


 「そんなこと言われても困るよ………。ねえカクレオン。さっき何か聞こえた?」
 「いや。何も………」
 「ワタシも何も聞こえなかったですよ?」
 「だよね。カクレオンたちも聞こえなかったみたいだし、多分気のせいだよ、ススム」
 「でも…………」
 「そうですよ。昨日あたしたちのせいでちゃんとベッドで寝れなかったから………疲れが残っているんですよ。考えすぎですって」
 「だよね♪」


 ソラは試しにカクレオンたちにも訪ねてみたが、やはり彼らも先程の叫び声は聞こえなかったようである。それでも納得出来ないぼくをココロが気遣うようにさりげなく更に寄り添ってくる。それを目にしたソラが強ばったような笑顔で負けじとぼくに寄り添う。若干苦しく感じるけれど、いつものようにツッコミをしないところで察したかも知れないけれど、やはりぼくはそれどころではなかった。


 (いや。あれは気のせいじゃない。確かに聞こえたんだ………。あのときの声………)


    た…………助けてっ!!


 (あの声は………間違いない。あれは………ルリリの声だ!)


 疑いが確信へと変わった。と共に、この正体不明な幻聴が杞憂であることを願うばかりだった。


 「何ボーっとしてるの?早く行こう!ススム!」
 「え!?あ…………うん!!」


 ソラに手を引かれてギルドへの帰途へと向かう。なんだか彼女が不機嫌そうにしている。一体どうしたんだろうと一瞬思ったけれど、なるほど…………またココロと言い争って面白くなかったんだろうな。


 (やれやれ。ぼくもソラのことが好きだし、彼女もぼくのことを好きなのは嬉しいけれど、いい加減どこかでぼくを巡っての争いにピリオドを打たせなきゃな………。仲良く出来てるときはちゃんと出来ているわけだし)


 その為にはぼくの気持ちをココロに伝える必要があるのだが、それで納得してくれるかは正直怪しい。むしろ火に“ばくれつのタネ”を放り投げるようなものかもしれない。だからと言ってこのままズルズルと言わない訳にもいかない…………参ったものだ。さっきの幻聴の件よりも頭が痛いなとか思いながら、ぼくはソラに手を引かれ、笑顔のココロには寄り添ってもらいながら…………という訳のわからない状態で小さな橋を渡って、ビッパの待つギルドへと向かうのであった。





 「あっ!あれは?」


 橋を渡って“トレジャータウン”の中心に差し掛かろうとしたときである。ソラが何かを見つけたらしく、ぼくを呼んだ。彼女の向いている方向、方角で言えば北東に向かって体を向ける。すると、


 「わ~い!」
 「ありがとうございます!」
 「いやいや。御安い御用ですよ」


 そこにいたのはマリルとルリリの兄弟。それからさいみんポケモンと呼ばれる種族のポケモン、スリープの三匹だった。彼らはお互い知り合いなのだろうか?何やら楽しそうにやり取りをしているけれど。何だか自分にはさっきの幻聴の件のこともあってあんまり良い感じに見えない。


 「ススムさん?大丈夫です?」
 「ススム?もう………仕方ないな!そんなに気になるなら話を聞いてみよう?」
 「大丈夫なんですか、ソラさん………って!待ってください!」


 どうやらぼくはまたもボーッとしていたようだ。呆れたソラが三匹のところへとぼくを連れていく。勿論ココロも慌ててついてきた。


 「どうしたの?」
 「あっ!さっきの!」


 ソラがおもむろに話しかける。するとルリリが気づいてちょっとだけビックリしたように返事をする。更にマリルが何か困り果てて落ち込んだ様子で事情を話し始めたのである。


 「実はボクたち前に大切な物を落としちゃって…………。それでずっと探していたんですが………なかなか見つからなくて………」


 この話で先ほどの意味深な発言の謎も解明された。彼らは何かを落としていたようである。


 「………でも………でも!そしたらこのスリープさんが………その落とし物ならどこかで見たことがあるかも知れないって!それで一緒に探してくれるって言うんです。ボクたちもう嬉しくって!」
 「へぇ~!」
 「そっかあ!それは良かったね!」


 マリルが嬉しそうにスリープの方を振り返る。なるほどなぁ。それで三匹で話し合いをしていたんだな。


 「ありがとう!スリープさん!」
 「いやいや。キミたちみたいな幼いコが困ってるのを見たらほっとけないですよ。早く探しに行きましょう!」
 「うん!」
 「うん!」


 マリルとルリリが飛び跳ねるほどに笑顔でスリープに感謝の気持ちを伝えている。そして彼の案内でその落とし物を見かけたかも知れない場所へと出発したのだが、ぼくだけがスッキリしない感覚になっていた。


 (なんだろう、この嫌な予感。なんか話が出来すぎている感じがする。こう………なんか胸が苦しくなるような、重苦しい感じが………)


 もしかしたらこの変な感覚も、ぼくしか感じていないかもしれない。だとしたらソラの言うようにきっと気のせいだろう。………そうだ。きっと気のせいだ………………。


       ドン!!
 「おっと。これは失礼」
 「いえいえ。こっちこそ」


 ボーッとしていたらスリープと肩がぶつかってしまった。だが特に彼は威嚇することもなく、マリルとルリリの兄弟の後を追っていく。…………と、そのときだ!!!!またあのめまいのような変な感覚に襲われたのは。


 (うっ………こ、これは?………)
 「スリープって親切なポケモンだよね。感心しちゃうなあ。世の中ワルいポケモンが増えてるって言うのに………なかなか出来ないよね」
 「そうですね。あたしたちもあんな風になりたいですね」


 ソラとココロが楽しそうに会話をしている。だけどぼくは再び襲ってきた違和感に苦しむばかりだった。


 (ま…また、だ………。………また………あのめまいだ………)


 再び視界が真っ暗になり、一筋の閃光が走る!!



           …………23Daysへ続く。