他人事ではない「死亡退院」 | 狭山与太郎のどですかでん

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「死亡退院」とは精神病院から退院したくてもさせてもらえない。

退院できる時それは死んだときだけ。

先週の土曜日のNHK ETV特集「死亡退院 さらなる闇」を見た。

この放送を見た人は日本で一体どれくらいいるのだろうか?

おそらく見た人は殆どいないだろう。

大谷の成績に一喜一憂する多くの日本国民。

彼がどんなにホームランを打って活躍しようが大谷とその家族以外の日本国民にとっては全く関係のないヴァーチャルな世界の出来事である。

しかし、ここで報じられていることは決して他人事ではない。

いつ自分の身に降りかかってくるかもしれない現実なのだ。

ここに存在するのは大谷の活躍と違って誰も知らず誰も関心も持っていないという事実だけだ。

今や何らかの精神疾患を患い、しかも、入院治療が必要な病気になるなんてことは誰にでも容易に起こりうることである。

しかし、・・・・

 

番組紹介には

「去年2月、東京八王子にある精神科・滝山病院で虐待が発覚。

看護師らが逮捕され、東京都は改善命令を出した。

事態は解決するかに見えた…。

しかし、患者の転退院は思うように進まず、死亡退院率は高いまま。なぜなのか?独自取材から見えてきたのは、患者の引き受け手をめぐる精神科病院や行政の現実、家族会の本音。

さらに、滝山病院の「過剰医療」をめぐる不可解な実態だった。

その内実に、内部資料や関係者の証言から迫る。」

と記載されている。

 

驚くべきことはこの滝山病院のあくどい病院長は責任を追及され辞任することになっていたが後任が見つからないため今も病院長にとどまったままだということだ。

各方面から非難を浴びてあれほど問題になっていたのに何も変わっていない。

そうして相変わらず「死亡退院」は継続して多いままなのである。

何故か?

それは単なる滝山病院だけの問題ではないからだ。

日本の精神医療体制の根本的問題や日本の医療行政や精神病患者に対する社会の偏見や差別、それを正し改善しようとしない政府など様々な問題の終着点がこの滝山病院ということなのである。

だから当然滝山病院だけを改善しようとしても不可能であり、廃院にしたくてもできない。

できることは世の中に知らせないこと、できるだけ注目を浴びないこと、関心を持たせないこと。要するに「臭いものには蓋」をすることだけなのである。

この放送では関係者から普通では考えられないような驚くべき事実が次々と証言されている。

これを見ていると、ナチスの強制収容所や満州での731部隊を連想してしまう。

先日優生保護法の下に不妊手術を強制されたのは憲法違反であるという最高裁の判断が下されたが、こと精神障碍者に対する人権無視は闇に埋もれたままだ。

被害者は勿論、多くの家族も声を上げないために問題がなかなか表面化しない。

彼らは社会からも家族からも見捨てられ滝山病院はまるで現代の「姥捨て山」だ。

要するに「精神病院」という名前を纏った現代の強制収容所、さらに言い方を変えれば「最終処分場」なのである。

一度ここにぶち込まれると外部とは遮断されいくら助けを求めても外に声は届かない。

そうして「ガス室」こそないが、いずれあらゆる手段で「合法的に」抹殺されてしまう。

政府も自治体も実態をわかっていても必要悪として放置している。

あまりにも問題が大きいために手が付けられないのだ。

退院しても行き場もなく家族からも社会からも受け入れてもらえないことは病院が一番よく知っている。

だからそのような日本の社会を反映し、まるで社会に奉仕しているかのような感覚にとらわれて何のためらいもなく患者を虐待し、死に追いやる。

そこには人間に対する尊厳も人格尊重も人権意識も全く存在しない。

2016年に知的障碍者45人が殺傷された相模原の「津久井やまゆり園」事件と根は同じである。

 

もしも、あなたが躁うつ病やてんかん、統合失調症などの精神疾患を患い、入院治療中にガンの治療や腎障害で人工透析をしなければならなくなったらどうなるだろう?

おそらく、この「滝山病院」送りとなる筈だ。

何故なら、癌其の他の病気になって入院治療が必要でも精神疾患を患っている人は「滝山病院」以外どこも受け入れてはくれないからだ。

かと言って滝山病院で適切な治療を受けられるわけではない。

これは決して他人事ではなくいつ自分の身に降りかかてくるかもしれない問題なのである。

 

このような問題が放置されたままなのは他人事だと思っている我々にも多大な責任があることは言うまでもない。

 

原発問題、沖縄の問題も然りである。

勇気ある「ETV特集」の制作スタッフにはいつも頭が下がる思いなのである。