トランプが大統領に就任してからのアメリカは外交 国内政治共に完全に破綻しており、日本以外の同盟諸国は皆愛想をつかすといった状況だが、実は戦争の陰であまり注目されていないが米国経済も破綻の一歩手前の状態が続いている。
株や債券や仮想通貨などの値上がりによって覆い隠され見えにくくなっているだけなのである。
先日アメリカ政府の債務は第二次世界大戦後初めてGDPの100%を超えその後も増え続けている。

アメリカの家計負債総額は2026年第1四半期末に過去最高の19兆9000億ドル(3.213兆8500億円)に膨れ上がった。
米国人は今や借金で生活していると言ってよく、個人の貯蓄率も過去最低水準を維持している。
相変らず消費水準が高いのは株や不動産などの資産価格の上昇によって「豊か」になったと錯覚しているだけなのである。
現在の株高も値がさのAI関連株に支えられているが、それ以外の業種の株は殆ど上がっていないどころかむしろ下がっている。
しかもAIバブルがはじけるのは時間の問題と指摘されている。
アメリカの経済が衰退しているのはトランプ以前からの傾向で彼がさらに追い打ちをかけていると言った状況なのだ。
米国企業の純利益は、1960年代から1990年代まで、GDPの4〜6%で推移していた。
それが、2000年代に入ってからは6〜8%で推移するようになった。
その原因は、労働分配率の低下である。
企業の利益が労働者に還元さていないのだ。
過去、福利厚生を含めた労働報酬のGDPに対する比率は、1960年代以降62〜65%で推移してきたが、2000年からは大きく低下し始め、現在のレベルは57%という歴史的低水準となっている。
技術発展と海外からの移民労働力の活用により労働生産性が大きく高まり、企業がビジネスをするために必要な人件費が節約できるようになり企業は利益を増やすことができた。
だがその利益は株主への配当や自社株買いなどの資金に回り労働者の賃金や将来への投資には回されていない。
米国経済は既に2000年にピークを迎え以降はダラダラと下がり続けている。
この要因を様々な分野の膨大なデータや文献を元に10年がかりで分析し解き明かしたのがこの本なのである。
著者トマ・フィリポンはアメリカで教鞭をとるフランスの経済学者。
彼はIMFで現在最も有力な経済学者に挙げられた25人の中の一人だ。勿論この中に日本人はいない。
因みに、25人の中には 中村恵美(33歳、UCLA経済学部教授、マクロ経済学、金融・財政政策、景気循環、金融、為替レート、マック経済測定などの研究者)が挙げられている。
しかし、彼女は日本名であるが「日本人」ではない。
日本には世界に認められるような経済学者はいないのである。
米国は数多くのベンチャー企業が輩出されるAIやITの発祥の地であり軍事目的のインターネットやGPSを開発し民生用として普及させた。
しかしインターネット接続料や携帯電話の通信費は先進国中で最も高くスマートフォン自体の値段も高い。
又、航空運賃もEUに比較し割高なのである。
何故このようなことになっているのか?
この著書によれば、アメリカの様々な分野で企業の合併や吸収が繰り返され、本来熾烈な価格競争が行われるはずの市場が寡占化することによって競争自体が妨げられてしまっているからだという。
その典型的な例として航空業界を説明している。
1978年アメリカは航空規制緩和法によって航空業界の自由化が始まった。
多くの格安航空会社が市場に参入したが現在ほとんどが姿を消し、
今では上位4社が市場の80%を支配している。
その理由は国内の主な都市の空港の発着枠がほぼ既存の航空会社によって独占されており、後発の会社は不利な条件を強いられ利用客が増えず経営が成り立たなくなったというのである。
しかもアメリカは海外の航空会社が国内を飛ぶことを禁止している。
競争原理が働かないのだ。
電気通信業界にも同じようなことが起きたことを各種のデータで示す。
アメリカでは活発な技術革新が行われても創業者たちが一端国内市場で地歩を築くと政治に対するロビー活動を活発に行い、早い時期から後発の参入を阻害する規制や基準が導入されてしまうというのである。
世界一の大金持ちイーロン・マスクなどFAGAMと言われる巨大ベンチャーの首脳がトランプにすり寄り、多額の献金をし、就任式に出席したり一緒に中国を訪問したり、政権に深く食い込み利益を享受しているさまは記憶に新しい。
今や政治献金することは彼らにとって十分な回収が見込める「投資」なのだ。
同時に政治の世界は腐敗と堕落を呼び政界と産業界がいびつな関係を結び正常な発展が妨げられる。
まっとうに利益を追求しようとする彼らの競争相手は大きなハンディを背負うこととなりいずれは消えてゆく。
1976年の上場企業数は4943社。1997年のピーク時には約7500社もあった。それが40年後の2016年には3627社になっている。
あらゆる産業で寡占化が進行しており、その結果競争が減り活性化が損なわれているのだ。
金融業界のシステムはITの恩恵をフルに受け、大幅な効率化が図られた。しかし金融サービスに費やされるGDPの割合はむしろ増加している。
ここでも市場支配力を強めるための買収統合による寡占化が進んでおり、ロビー活動によって新規参入が妨げられ競争原理が働かず預金者など外部の関係者に不利益を及ぼしている。
結論としてアメリカ経済の殆どの分野で競争が減っていると著者はいう。
競争の欠如は資金の減少、投資の減少、生産性の低下、成長の低下、格差の拡大をもたらすと著者は警鐘を鳴らしている。