ちょっとフルートやってみたいな。


という軽い気持ちから調べ始めたのですが、
けっこう古くから議論されている問題のようですね。

どうもこの問題は、議論するからいつまでも結論が見えないのではないかと思い始めています。

例えれば、


「犬の歯は全部で何本あるか」


という議題を物理学者と芸術家が議論していてかみ合わないような‥

「物理と芸術は違うよ。」


という一言で両方が満足していますが、


「じゃ犬の口を開けて数えてみれば」


そうすればすぐに解決するのではないかと思ってしまいます。



寸法を統一した丸棒を、材質を隠して吹いたとき、音色の違いを言い当てられる人が何%程度いるのか。


それだけを調べれば解決するのではないでしょうか。



今のところ、ブラインドテスト(目隠しテスト)の結果、材質の違いを区別できたという実験結果は無いようです。


プロや上級アマ、耳のいいリスナが集合して試験を行い、偶然当たる確率以上に違いが示されないという現実を見るに付け、



もしやフルートの販売というものは、「このプラチナの壺を買えば幸せになります。」という霊感商法と質的に同一なのではないか。

利益率が異常に高い貴金属フルートを、いかにもありそうな、でも全く根拠の無い理由で売りさばいているのではないか。


という重大な疑惑に発展しそうな気配に‥

そうは思いたくありませんので、


今後も内外の文献を調査してみたいと思います。

宜しくお願いします。



フルートの材質と音色(その15)へ

今まで5つの文献を読んでみました。


その結果、


1) フルートの材料を判らないようにして吹いたとき(ブラインドテスト)、プロや上級アマを含め、でたらめに判定して当たる確率以上の数値は出なかった。=材料の違いを言い当てられる人はいなかった。


2) フルートの音色は、材質によって変化する割合よりも遥かに大きな割合で、演奏方法の違いで変化する。(パワースペクトラム上に違いがはっきり出る)


3) フルートの音色は、材質によって変化する割合よりも遥かに大きな割合で、楽器の微小な寸法の違いで変化する。


4) フルートの材料は音色に影響している。と主張する研究には、「私には判る」という以上に客観的事実が示されていない。


ということだそうです。



まだたった5つしか読んでいませんし、今現在一生懸命「材質の違いは音色に影響する」ということを科学的に納得させてくれる文献を探していますので中間的な感想ですが‥‥


*******中間まとめ*******

修行した僧侶は座禅の最中に、線香の灰が床に落ちる音を聞き取るそうです。


‥けっこう大きな音に聞こえるそうです。


それも、木の床に落ちたときと金属製の盆に落ちたときで音色が異なるそうです。


誰でもそうだとは到底言えませんが、人間の感覚は普通想像するよりも遥かに優秀なことがありますので、計測数値やパワースペクトラムの結果で人間が感知できないと言い切るわけにはいきません。

ただし、フルートの場合には、材料によって音色が変化する割合よりも、楽器の寸法差や演奏者の技量で音色が変化する割合がずっと大きいことを考えると、


私達が「銀のフルートは‥」とか「プラチナは‥」と聞き分けているように感じていることは、実は奏者の違いだったり、楽器の微小な寸法差だったりするのではないか。


という疑いが出てきます。

*****

人間の脂肪は一日せいぜい50gくらいしか変化しないのに、朝体重計に乗って「確かに1kg痩せた。」
なんてね。


水分の変動は一日で2kg以上あるのです。


たとえ脂肪が50g減っても、水分で2kg変動していたのでは、体重計に乗って痩せたか太ったかを判定することは不可能。

(何日もダイエットして脂肪が500gくらい減ってくると、ようやく体重計で測定できるようになるわけです。)

*****


それならばと寸法を管理した丸棒を吹き、材料を隠して音色を聞き分けさせると、誰も正解しなかった。


今はここまでしか言えません。


私は実は、「材質によって音色が違っていてくれれば素敵だな」

と心から思っていますので、引き続き内外の文献を調査します。


ゆるい目で見守っていてくだされば嬉しいです。

フルートの材質と音色 (その14)へ














5.1 音響試験および結果

1) それぞれの尺八について空気の当たりを最適に調整し、発生した音をマイク(SONY F-99s)で集音。これをデジタルテープレコーダ(TEAC RD-180T)に記録して、FFTアナライザ(B&K Type 2034)とテクニカルコンピュータ(TEAC PS-90222F)によりスペクトル分析を行った。

2) その結果、材質の異なる各尺八でのスペクトル分布(倍音構造)は一致しなかった。

3) 歌口部の微小な機械加工精度やノズルと歌口の位置関係、顎当たり量の微妙な位置関係などが音色のスペクトル分布に影響しているのではないかと考え、アルトリコーダ(ゼンオン Alto 1000B)の上部を各種材料のパイプにはめ込んで音を出し、スペクトル分析を行った。

4) その結果、どの材質でも同様なスペクトル分布が得られた。

5) 管の肉厚が違う場合もスペクトル分布に差異は見られなかった。


AKIRA F くまのブログ

尺八の音色に影響しそうなパラメータは非常に多い。今回はその中でも管の材料(素材)に的を絞り、その影響を解明するために実験的研究を行った。しかし、被供試尺八の製作段階において、管材以外のパラメータを一致させることが如何に難しいことか、


(中略)


ということは、逆に、歌口形状を含む音源の違いによる音色への影響が、管材のそれと比較して相当大きい事が証明されたと考えられる。


素人尺八愛好者は、素材の竹(しかも高価な竹に)に拘る前に、まず自分の吐息と歌口で構成される音源作りが鳴りを良くする大きな要素であるということを深く認識することが必要且つ重要である。安易に管材のせいにするのは考え物だと感じた。


一方、尺八の音色は音の立ち上がりや立ち下がり時に味があり、音響・振動学では表すことが難しいこれらの音に関する管材の影響や人間の感覚における物理量を試験するのは大変むずかしいことである。


【感想】

材料だけを変化させた丸棒にリコーダの歌口を取り付け、出音をスペクトル解析した研究。

文献1でもありましたが、出音のスペクトル分布をとると、演奏者の違い(文献1)や空気ジェットの吹き付け位置の違い(文献5)のほうが圧倒的に大きな差となって現されるようです。

吹き方の優劣が音色の優劣に大きく影響しているということは、「上手な人は、どんな楽器を吹いても同じ音がする」という、よく感じる経験を思い起こさせてくれます。

吹き方の違いで出音のスペクトル分布がこのように大きく異なるのであれば、楽器の微妙な加工精度の違い(寸法や形の違い)のほうが、楽器の材料による違いよりも遥かに大きいのではないかと考えさせられますね。

フルートの材質と音色 (その13)へ