【5. 文献5 : (題名)尺八の音色に及ぼす管材の影響】


(原題)尺八の音色に及ぼす管材の影響

(原文日本語)

著者:Toshiyuki Sasaki
名古屋大学


http://www-eng.kek.jp/giken/procedng/paper/met062.pdf


尺八は竹製でなければ本来の音が出ない。という通説により、初心者であっても、高価な竹製を購入しなければならない状況がある。


そこで、竹、塩化ビニール、硬質プラスチックス(アクリル)、木、鉄、アルミなどのいろいろな素材による尺八を製作し、尺八の材質による音色の違いを研究した論文。


 ******以下【文献5】の要約******


尺八の音色に関するパラメータ

(大項目のみ下記に示します。原文ではそれぞれの項目の下に多くのパラメータが列挙されています。)


今回は材質だけを問題にするので、他のパラメータは極力一定に保つ必要があります。


形状関連

 全体形状関係

 中継ぎ関係

 手孔関係


音源関連

 歌口関係

 吐息関係


実験


5.1 供試尺八の製作


材質による違いの検討:

内径および肉厚が同一の塩化ビニール、透明アクリル、木、鉄、アルミ合金製パイプ

および上記に近似の内径と肉厚を有する竹管。

内径20 mm、肉厚3 mm、全長545 mm(18寸管)


肉厚による違いの検討:

内径20mm、肉厚2 mm、3 mm、5 mm の透明アクリル管3種類。


5.2 試験装置

演奏者の吹き方による違いをキャンセルし、実験条件を揃えるために、尺八吹鳴装置を製作した。

製作した装置は下記。


AKIRA F くまのブログ

エアコンプレッサ、圧力計、圧力レギュレータ、吐出ノズルを有し、噴出し口は縦、横、高さ、回転の4自由度で微調可能。さらに顎あたりの調整装置まで付いている。


フルートの材質と音色 (その12)で、実験結果を示します。


フルートの材質と音色 (その12)へ


2. リスナによるブラインドテスト


実験は、同一の演奏者がそれぞれ3本の異なるフルートを吹奏した際、その違いをリスナが認識可能かというものである。


実験には27人のリスナが集合した。内訳は、20人がプロまたは上級アマチュア演奏家であり、さらにそのうち13人はフルート奏者である。残り7人は学習者である。


テストは、音響的に十分配慮されており、室内楽の演奏にも頻繁に使用される教室の中に、アルミニウムメッキを施した小さなマイラスクリーン(750μm厚、音響透過性は優に15Hz以上)を張り、その陰で演奏者が3本のフルートを吹く。という環境で行った。


各テストにおいて、全く同一のフレーズを3回吹奏する。そのうち2回は同じ材質のフルートによるものである。


リスナは、音色が異なって聞こえたフルートの演奏順を紙に記入する。これを1セットとする。

(例えば1回目に演奏した音が他の2回の演奏と異なる音色と感じたら「1」と記入)


この手法は、音色が「良い」あるいは「悪い」という印象による判断や、「木製フルートや銀製フルートの音色はこのように聴こえるに違いない」という先入観による判断を出来る限り除去し、音の違いだけを感じ取るようにするために考案された方法である。


実験は36セット行った。


最初の6セットは、銀管および木管を使用し、フルートの第一モード(低音)による一息のロングトーンを吹奏した。


そのうち3セットは、2回の銀管に1回の木管。残り3セットは、1回の銀管に2回の木管である。


同様に、次の6セットは銀管と銅管で行った。


次に、音色をフルートの第二モード(高音:約800Hz)に変更し、上記の条件で12セット(6セットを2回)を行った。


さらに、より複雑なフレーズを吹奏して12セット。


各セットでの確率的な正解率は3分の1になります。従って、36セットでの期待値は


36 ÷ 3 = 12


つまり、でたらめに判定しても36回のうち12回は当たることになる。

勿論、全問正解すればスコアは36になります。


結果の抜粋は下記。


プロまたは上級アマチュア演奏家のスコア平均: 12.9

学生のスコア平均: 14.1

全体のスコア平均: 13.1



【感想】


ブラインドテストを行った結果、プロよりも学生のほうがスコアが良かったのはご愛嬌^^


しかも、音色の違いを確かに認識しているという有意な数値は出ていないようです。



要約には入れられませんでしたが、この論文では実験結果を統計解析の手法を駆使して分析しています。


また、演奏者が常に一定の角度で吹き込めるように特殊な装置を考案し、フルートを持ち替えたときの条件の変化を極力ゼロにするような工夫もされているようです。






























【5. 文献4 : (題名)フルートの音色に対する材料の影響】


(原題)EFFECT OF MATERIAL ON FLUTE TONE QUALITY

(原文英語)

出典:The Journal of the Acoustical Society of America 521

著者:John W. Coltman


http://ccrma.stanford.edu/marl/Coltman/documents/Coltman-1.06.pdf


フルートの研究に関して第一人者であるジョン・コルトマン博士の論文。


ジョン・コルトマン博士に関しては下記が詳しいです。


http://homepage3.nifty.com/mikms/page3004.html


 ******以下【文献4】の要約******


1. フルートの構造


銀、銅、木製の3本のキーを有しないフルートを製作した。


内径は全て1.90cmである。


銀パイプは肉厚0.36mmを有し、以前銀製フルートを製造した際に使用した銀管のストックを使用。


銅管の肉厚は1.53mm。銀管に比較し、約4倍の厚さを有している。


木製管の原木は木管楽器に多用されるgrenadilla材であり、標準的な木管フルートの4.1mmの肉厚を有する。木管フルートは、銀管の1.7倍の重量である。


各管とも長さ32.7cmであり、Delrin社製プラスチックマウスピースを接続している。接合した3本のプラスチックヘッドは、内径にテーパを有する同寸法構造である。


唄口の直径は1.75cmである。


次に、プロアマ交えたリスナによるブラインドテストとその結果を示したいと思います。






フルートの材質と音色(その10)へ  














3319 Scathelocke Road, Piltsburgh, Pennsylvania 15235