悟りとは その111 『永遠』 | 岐鑑の悟りブログ

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悟りとは その111 『永遠』


私はある美術館を訪れている

若い頃から絵に描かれた歴史とか

画家の芸術に対しての葛藤など

目の前でそのストーリーを

見られる事に悦ばしい満足感を得ていた


愛も憎しみも全てを含めた絵

画家の強みと弱みも含めて

それらの秘密をその絵の具の裏に隠している

画家の心は深く

彼の才能の裏に悲しみがある


私は久しぶりに

何時も見慣れた絵を見ており

風景画であるその絵は

山と木々と岩などが

印象派的に描かれている

木の黄色とか草花の緑色とか

空の水色など華やかに光っているように

映し出されている


もう見慣れているので

今回はキャッバスに近づいて

細かい所を見る事にした

ゆっくり時間を掛けて筆使いなど

普通はあまり気を付けない細部を見ていた


しばらくしてある箇所に来ると

『ん』と感じる何かがあった

私は何だろうと思いよく見つめてみた

なんと

縦の中央線からちょっと外れた所

場所としてはキャンバスの

ほぼ中央だが少し右側の所の

約一平方 cm のキャンバス面積には

絵の具が塗られていないのである

驚いてもう一度見てみたが

確かにキャンバスがそのまま

むき出しになっている余白なのである


これは大発見であった

今まで完全に見落としていた

この画家の文献に余白を

利用していたと言う記事は知らない

直感的に何故この小さな余白があるのか

思いが走った


距離を置いて見てみた

そうすると分かった

この小さな余白がキャンバスの中で

無限を作り上げている事を

絵の全体を見た時

目が最終的にその余白の場所に

行く事を知った

何も塗っていないこの白い空白が

キャンバスの表面をつき抜いており

計り知れない深い底を作っている

私はこの画家の秘密を

発見した事を嬉しく思った

と同時に改めてこの画家に敬意を表した


私が感心してしばらく見ていた時

雲が動いたのだろ

サァーと天井の天窓から光が射して来て

その絵を照らした

今までよりより一層に色が映え

美しくその絵が目の前に広がった

しかし色が輝いたので

余白の白は退きその実体感は消えた


その時

私の思考が一瞬止まった

ちょっとの間を置いて

私は気が付いた

この余白は

無限ではない事を


私は間違っていた

この画家が

常に心に置いていたもの

愛情を浮かべて

探し求めていたもの

この小さな一センチ四方で

描きたかったもの

それは無限ではなく

『永遠』であると覚った


誰もが気が付かず!

何時も見誤る!

この小さな宇宙に

彼の全てを託して

彼の秘密をこの余白で描いている

余白の存在感は少しも誇張されず

エゴがなく清らかであり

価値観が消滅しており

慎ましく神聖なる余白

この余白が彼であり

彼自身が芸術になっている


今、私の人生の中で求めている

全てが私の目の前に広がっている

私は深い感謝の気持ちに浸っており

一粒の涙を流している

後書き

碧巌録第13則 『巴陵(はりょう)の銀椀裏(ぎんわんり)』