乱歩の「二銭銅貨」
「大変な天才が現われたと思った。」
少年時代に乱歩の「二銭銅貨」を読んだ松本清張は、その時の衝撃を後にそう語っている。(「黒い手帳」)
この作品は、その天才のデビュー作で、日本の推理小説の原点とされている。
改造された二銭銅貨を偶然手に入れた青年が、中から出てきた暗号文を解読し、一攫千金をもくろむが・・・・・・ というのが大体のストーリーである。
しかし、暗号メモが入るほど大きな硬貨って、どんなものなのか?
どれくらい大きかったのだろう?
中学の時にこの作品を読んで以来、それがずっと気になっていた。
いつか実物を見てみたいと思いながら、数十年が経っていった。
だが8年前に、あるコイン店の前を通った時、なぜか突然二銭銅貨が見たくなった。
そこで店主に聞くと、「これがそうです」と言って出してくれた。
価格は1300円だった。
たった2銭が1300円!と思ったら、なんだかアホらしくもなったのだが、
ずっと気になっていたし、まあいいか・・・
と思って買ったのが、下の写真(左側)である。
右側の500円硬貨より一回り大きく、厚さ・重さとも上回っている。
「日本貨幣カタログ」で調べると、直径が約3・2センチ、重さが約14グラムだという。
確かにこれだけ大きければ、内部を空洞にしてメモを仕込む・・・というアイデアも浮かんでくるだろう。
なお黒島伝治という作家も「二銭銅貨」という作品を書いており、少し気になっている。黒島作品も、いつか読んでみたいと思う。
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入場無料
夕闇の都会。あるホールの裏口に、「入場無料」の立て看板が立っている。
その看板を見た者が、一人また一人とホールに吸い寄せられて行く。
やがて客席は埋まったが、舞台に下がった緞帳はいつまで経っても上がらない。
観客たちの不安と不満は次第に大きくなり、そこかしこで小さな紛争が発生する。
そして開演予定の時刻を数時間も過ぎた頃、おもむろに緞帳が上がり始める。
観客たちは一斉に舞台に目をやった。
そこには書き割りもスクリーンもなく、彼らの方を見つめる多勢の観客たちがいるだけだった。
舞台の上の観客たちは、「入場無料」という演劇を見るために、金を払って入館していたのだった。。。
1971年の秋、上のようなドラマを見た。日曜の夜だった。
タイトルは「入場無料」。放送局はNHK教育だった。
なぜ見たのかは思い出せないが、なんとなく見ているうちに画面に引き込まれ
てしまい、最期まで見てしまった。
多分、いつまでも上がらない緞帳の向こうが気になって、途中で目が離せなく
なってしまったのだろう。
それと全編に漂う不気味なムードが、怪奇ドラマ好きな自分にとって魅力的
だったのだと思う。
その後、ずっとこのドラマが頭の隅に残っており、暇を見てはデータの追究に努めていた。
そして20年ほど前に、脚本が岩間芳樹によるところまでたどり着いたが、そこから先へは進めなかった。
だが、インターネットが普及したお陰でかなり詳しいことが判ってきた。
現在判明したのは以下の諸点である。(テレビドラマデータベース等による)
放送日:1971/10/17(日)
放送時間 :21:00-21:50
番組名: NHK劇場
出演: 殿山泰司(殿山泰二)、浦辺粂子、横森久、石井くに子、早崎文司、田島和子
脚本:岩間芳樹
プロデューサー: 山田勝美
演出: 椿恭造
制作会社 :NHK(大阪放送局)
備考:芸術祭優秀賞受賞
このドラマの制作者が訴えたかったのは、一体何だったのだろうか?
当時の自分にはよく分からなかったし、今見ても分からないかもしれない。
しかし、異色のサスペンスドラマとして見ても、十分に楽しめる内容である。
今では完全に埋もれてしまっているが、いつの日か再評価されることを祈っている。




