こんにちは。札幌出身の皮膚科専門医/美容皮膚科医の日景聡子です。
「肌にリッチな栄養クリーム」と聞くと、
塗るだけで肌が若返るような、ワクワクした気持ちになりませんか?
そんな夢を壊してしまって申し訳ないのですが、
「肌の栄養クリーム」に関する誤解について、今回は書いていきますね。
腸は吸収器官、皮膚は排泄器官
栄養を摂取するという観点から、まずは腸と皮膚の違いを見てみます。
口から摂った栄養分は、主に小腸で吸収され、
大腸は、水分の吸収などですね。
小腸は、絨毛(じゅうもう)という細かいヒダがあって、
栄養素を効率よく吸収できるようになっています。
しかし、皮膚はどうでしょう?
皮膚の新しい細胞は、表皮の一番内側の基底層(きていそう)から生み出され、
徐々に外側に向かい、角質層(死んだ細胞)になり、最終的に剥がれ落ちます。そして、汗や皮脂は、外に出て(分泌されて)いきます。
皮膚には外向きの矢印しかないことがわかりますよね。
皮膚の主な役割は、分泌機能と、
外界の刺激から体を守るバリア機能です。
毛穴の内側部分も、実は周りの皮膚と同じようなバリアがあるんですよ。
皮膚からは、特殊なものしか吸収されない
皮膚から吸収されるというと、皮膚科で処方される塗り薬が代表的ですが、
あれは「医薬品」だからです。
病気を治すために特殊な組成になっていて、
まさに「吸収」されるようになっています。
一般的な化粧品は、角質層までしか届かないことになっています。
つまり、死んだ細胞の部分をターゲットにしています。
薬のような特殊なものでない限り、角質層を突破して奥へ吸収させるのは
普通は難しいんです。
化粧品の成分が濃度勾配(濃い方から薄い方へ広がる)によって
角質層の中で広がっていくことはありますが、
死んだ細胞が栄養を取り込んで何かをする、ということはないのです。
角質層から新しい細胞が生み出されるわけでも、
コラーゲンが作られるわけでもありません。
私が「基礎化粧品の目的は角質層の保湿」と言っているのは、こういう理由からなのですね。
洗顔などで失われた保湿成分を補うために、化粧品を塗るのです。
よく誤解されているのですが…
化粧品に入っているヒアルロン酸は、あくまでも水を集める保湿目的であり、
それがそのまま、真皮まで潜っていくわけではないんですよ。
保湿以外の目的での「肌への栄養」というのは、漠然としたイメージなんですよね。
ヒトは肺呼吸していますので、お風呂に浸かっていても死なないわけです。
ガス交換として皮膚呼吸をするのは、カエルなどですね![カエル](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/167.png)
![カエル](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/167.png)
肌への栄養は、皮膚よりも腸から摂りましょう
肌への栄養補給とうたった化粧品が多いものの、
死んだ角質層にしか届かない栄養では、意味がないですよね。
それより奥の、生きた細胞に吸収させるには、
角質層のバリアを壊して奥に入れるしかありません。
通常、角質層のバリアは強固なのですが、
角質ケアをし過ぎて薄くなっていたり…
保湿成分を大量に奪うようなオイルクレンジングをし続けていたり…
酵素(たんぱく質を分解します)が入っている洗顔料などで
角質層のたんぱく質を慢性的に壊していたり…
質の悪い界面活性剤入りの化粧品を何種類も使って
バリアが壊れてしまっていたりすると…
角質層よりも奥に入ってしまうということは、あり得ます。
成分を角質層よりも深く入れるということは、一見いいことに思えますが、
生きた細胞と反応させるということで、
アレルギーのリスクと引き換えになってしまいます。
肌の状態を改善させるには、外側からの刺激を極力抑えて「奪わない」ことと、
新しい細胞がきちんと生み出されるように手助けすることが大切です。
外側から角質層にいくら与えても、
あなたが期待しているような「栄養の効果」は生み出されません。
新しい細胞がきちんと作られるためには、
細胞や保湿成分などの原料になるたんぱく質や、
細胞が生み出される際に必要な酵素反応をサポートする
鉄分やビタミンB群などを、
皮膚の外向き矢印を意識して、食べ物(腸)からきちんと栄養素として摂取することが大切です。
高級栄養クリームを買う前に、食費に投資することを考えましょう![照れ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/007.png)
![照れ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/007.png)
炭水化物製品は安いですが、ビタミンB群を消費したり、
皮膚の老化を早めたりしますので、気を付けたいですね。
いつも最後までお読みいただき、ありがとうございます。