こんにちは。 札幌出身の皮膚科専門医/美容皮膚科女医のSatokoです。
 
内科の飲み薬などと違い、
皮膚科の塗り薬は、使い切る前に余ってしまう、
ということがよくあります。
 
たいていの方は、使用期限が切れるまで取っておいて、
また何かの時に使おう~と思うのではないでしょうか。
 
 
余った塗り薬を、美容クリーム代わりに
 

これは、今まで何人かいらっしゃったのですが、

ステロイドの塗り薬を、美容クリーム代わりに使っていたのです。

 

しかし、症状がないのにステロイドの塗り薬をずっと使っていると、

「酒さ(しゅさ)様皮膚炎」という治療が難しい皮膚病を引き起こしてしまいます。

 

実際、この症状で受診した患者様にお話を聞いて初めて、

ステロイドの間違った使い方を知ることになりました。

 

 

「これを塗ると、塗ったところが白くなったんです」

というのは患者様の弁。

 

強いステロイドを塗ると、血管が収縮し、塗った場所が白く見えることがあります。

 

しかし長期的にステロイドを塗り続けていると、

顔が赤くなり、血管が拡張し、ニキビみたいなブツブツができてくる

酒さ様皮膚炎になってしまうのです。

 

治療は、ステロイド外用を止めることですが、

タチの悪いことに、ステロイドを止めると、症状が一時的に悪化してしまうのです。

 

それで結局、ステロイドをこっそり塗ってしまい…という悪循環にはまるので、

皮膚科医でも治療に手こずることが多い病気です。

 

処方箋薬のヒルドイドを美容クリーム代わりに使う人も多い中、

実はこっそりステロイドの塗り薬を美容に使っている、という方も

決して少なくないのではと思っています。

 

そして、かつてネットで「魔法のクリーム」と持てはやされた商品、

実は強力なステロイドが含まれていた、というのは

皮膚科医の間では良く知られた話です。

 

 

困った時のステロイド!になっていませんか

 

そこまで間違った使い方をしていないにせよ、

顔が赤くなった、痒くなった…という時、

残っていた塗り薬を塗ろう!という方は多いと思います。

 

もちろん、本当に病気の場合もありますが、

間違ったスキンケアから引き起こされる症状も多いのです。

 

スキンケアをおろそかにして

ステロイドの塗り薬に頼ってしまうと、

長期的に見て酒さ様皮膚炎のリスクを上げてしまいます。

 

というのは、顔にトラブルが出るのが怖くて、

ちょっとの症状でも安易に使ってしまったり、

そこから予防的に塗ってしまう方も多いからです。

 

これでは、美容クリーム代わりに塗っている方と

本質的に変わらないですよね。

 

 

 

 

スキンケアの大切さを伝えたい

 

「そんなこと、知らなかった」

「だって皮膚科に行ったって、薬くれるだけじゃない」

 

ごもっともです。

 

残念ながら、保険診療では限界があるんですね。

症状に応じて薬を処方する、というのが基本だからです。

 

皮膚科の外来、行ったことがある方はおわかりでしょうが、

2時間待ちは当たり前。

 

もちろん、こちらもフルスピードで頑張っておりますが、

お一人お一人にかけられる時間は、本当に限られています。

 

私も、診察時に「擦らないように」など最低限のお話はしていますが、

スキンケアについてゆっくりお伝えすることはできないのが現状です。

 

そして仮にお伝え出来たとしても、内容が多すぎて、

全て1回で理解して日々実践していただくのは難しいのです。

 

それが、このブログを始めようと思ったきっかけでもあります。

 

実際、私もスキンケアを見直す過程で、

師匠のブログや本を、何回も何回も読み直して確認していました。

 

「魔法のクリーム」は諸刃の剣。

「悪魔のクリーム」になることもあるのです。

 

今日は、過去の自分の診療を反省する意味も込めて書いてみました。

 

いつも最後までお読みいただき、ありがとうございます。 
 
Instagram