こんにちは。 札幌出身の皮膚科専門医/美容皮膚科女医のSatokoです。

 

前回は、皮膚の保湿成分3種類についてお話ししました

今日は、ターンオーバー(皮膚の生まれ変わり)について見て行きます。

 

この図をまた載せておきますね。

 

【皮膚全体の構造】

940705

 

 

【角質層の構造と保湿成分】

ターンオーバーとは、新しい細胞が基底層から生まれて、

分化しながら(機能を変えながら)徐々に上方へ移動し、

最終的に角質層の表面から剥がれるまでのサイクルを意味します。

 

基底層から新しく生み出された細胞は、14-21日かけて上に行き、

顆粒層・角質細胞の第一層となり、

 

さらに皮膚から剥がれるまで14-21日かかります。

(これが角質層に留まる時間ですね)

 

表皮の細胞は、基底層が1層、3-5層の有棘層、

1-2層の顆粒層から構成されています。

 

計算すると、細胞が一段上の層に行くのに、

2-4日間かかるのが正常だと推定されています。

 

つまり、

新しい皮膚の細胞が1層できるのに、2-4日間かかる

ということです。

 

このサイクルに合わせて、

新しい天然保湿因子や角質細胞間脂質ができてきます。

 

毎日、角質ケアと称してゴシゴシこすったり、剥がすパックをしたり、

強いメイク落としとクレンジングで保湿成分を奪い続けていたら…

一気に何層も角質細胞が剥がれてしまい、肌が追いつかないですよね。

 
もちろん、皮膚はこれに対抗するために反応します。
まずは皮脂膜をたくさん作ろうとします。
前回書いた通り、保湿成分3つのうち、すぐに補充されるものでしたね。
 
皮脂は、毛穴にある皮脂腺からタイムリーに分泌されるものの、
年齢とともに皮脂の分泌量は減ってくるため、
補いきれない場合もあります。
 
逆に、ニキビ世代の10代の方が顔を洗いすぎたり、過剰な角質ケアをすると、
皮脂が大量に出て、脂性肌がひどくなったりします。

 

もう一つ、皮膚の対抗策としては、

ターンオーバーの速度をあげようとします。

早く角質層に細胞を供給しようとするのですね。

 

角質層は、水分の保持と外界からのバリアという大切な役割があります

人は全身の角質層を失うと、24時間も生きられないと言われています。

 

なので、全力で角質層を作ろうとするのですね。

ターンオーバーが早まるのは、一見いいように見えるのですが、

実は落とし穴が。

 

無理やりターンオーバーを早められた細胞たちは、

顆粒が作られる前に(顆粒層を経ずに)、

ちゃんと死ねないまま角質層を形成してしまいます。

 

つまり、角質細胞になる準備ができていないまま、

角質層へ押し上げられてしまうのです。

 

(実際、こうしたメカニズムが原因の皮膚病があります。)

 

前回の記事を思い出してくださいね。

 

天然保湿因子や角質細胞間脂質は、

顆粒層の顆粒が由来で、

角質細胞になるとき(細胞が死ぬとき)に作られるんでしたね。

 

ということは、

ターンオーバーが早まると、

天然保湿因子や角質細胞間脂質を作れないままに

表層にあがってきてしまうということですね。

 

こうなると、角質細胞同士がきちんと接着できないので、

水分を保持できず乾燥します。

 

見た目には、皮膚表面がゴワゴワしたり、すぐ皮膚がめくれたりするので、

また角質ケアをしなきゃとゴシゴシこすってしまう…

 

そして、保湿をしなければとたくさんの化粧品を使うも、

バリアが壊れているゆえに、かぶれを起こしてしまったり、

化粧水パックをして皮膚が更に乾燥してしまったり。

 

悪循環にはまってしまいますよねえーん

 

でも、実際には、こういうケアをしている方がすごく多いように思います。

 

私が、メイク落としとファンデーション選びに気を付けましょう、というのも、

この事実と関係しています。

落としすぎ、洗いすぎ、ケアしすぎは、皮膚を傷めてしまうのです。

 

睡眠不足や食生活の乱れなどで、

ターンオーバーが遅れてしまうことも問題なのですが、

ターンオーバーが早まることが良いわけではないのです。

 

細胞のサイクルを正常化させることがとても大事です。

そのためには、頑張り過ぎない、という視点も必要です。

 

スキンケアは、誰もが気を付けることのできる美肌の基本なのですが、

この部分を意識せずに高級な化粧品を追い求めたり、

結果的にケアを頑張りすぎて、

肌がボロボロになってしまうのは大変残念なことです。

 

スポーツ選手が基礎練習や素振りを大事にするように、

私も皮膚の基本、スキンケアの大切さを伝えていけたらと思っています。

 

【読者の皆様へ】

 

前回、今回と2回にわたって、

乾燥肌や敏感肌にとって、過剰な角質ケアや洗いすぎがなぜ良くないのか、

皮膚科学の知識をスキンケアに応用して書いてみました。

 

できるだけ専門用語を使わないように気を付けましたが、

わかりづらかった、これはどういう意味?などありましたら

コメントや個別メッセージを下さると嬉しいです。

 

追記や補足記事を書き、

皆様によりわかりやすくブラッシュアップしたいと思っております。

ご感想、お待ちしております照れ

 

いつも最後までお読みいただき、ありがとうございます。