僕にとって初めての”悠月裕子”作品「孤狼の血」(以下記事ご参照)がキョーレツにおもしろかったので・・・本作を読んでいるの後半戦に入った頃にはもう(第2弾となる)この「凶犬の眼」を借りてました。
概要はAmazonから引用します。
所轄署から田舎の駐在所に異動となった日岡秀一(前作の主人公・大上の部下)は、穏やかな毎日に虚しさを感じていた。そんな中、懇意のヤクザから建設会社の社長だと紹介された男が、敵対する組長を暗殺して指名手配中の国光寛郎だと確信する。
彼の身柄を拘束すれば刑事として現場に戻れるかもしれない。日岡が目論むなか、国光は自分が手配犯であることを認め「もう少し時間がほしい」と直訴した。男気あふれる国光と接するにつれて、日岡のなかに思いもよらない考えが浮かんでいく。
初版発行(2018年3月)から5-6年も経っているので、ネタバレしちゃって良いと思うので、本作で最も驚いたことを書いちゃうと…
読者(僕はこういうヤクザと刑事が登場する小説を山ほど読んでる読者です)にとって、刑事と大きなヤクザ組織の幹部が近いし関係になることは、普通に想定内ですが「兄弟の盃を交わす」ことは、全くの想定外でした。ん~、柚月さん、おじさん参っちゃいました。
以下、印象的だった個所です。
関西ヤクザの隠語「グリコ」について。「要するに見捨てられたちゅうこっちゃ。そりゃグリコしかないがな」 グリコというのは関西ヤクザの隠語で、白旗を上げる、という意味だ。キャラクターの万歳ポーズからきている。業界、しかもヤクザの世界の隠語って興味ありありです
日岡が立て籠もった国光たちの人質になった時のシーン。国光がテレビに目を向けたまま、ぽつりと言った。「なあ、あんた。わしと兄弟分にならへんか」「兄弟分?」声が裏返る。
日岡に向き直り、国光が膝を正した。「ああ、五寸や」五分の兄弟分、この俺と」(後略)…ん~、前述しましたが、このシーンには驚きました。そして、おもしろいです。
長い立て籠もりから国光が逮捕されるシーン。県警本部の捜査員が、手錠を手に駆け寄ってくる。「国光だな」言いながら手に手錠を嵌めようとする。
「待たんかい!」国光が凄みを利かせ、睨んだ。「手錠は、この駐在さんに嵌めさせたれや」(中略)一課長の二瓶が頷く。「日岡、お前が手錠をかけろ」ん~、映画のワンシーンみたいで震えちゃいました。
その後、日岡はまるで先輩の大上と同じように非情な手段で覚せい剤保持の犯人を検挙するが、その犯人からこう言われます。「お前みたいなヤツ、刑事じゃないわい。極道以下の外道じゃ」笑いがこみ上げてくる。
近藤(犯人)が言ったことは正しい。国光と盃を交わした自分は、刑事という名の極道だ。国光同様、目的のためなら外道にでもなる”凶犬”だ。
単行本333ページの282ページ目に本作のタイトルでもある柚月さんが作った造語「凶犬」が登場しました。
ん~(決して女性蔑視の発言ではないんですが)こういう「にわかには信じがたい男と男の世界」の物語を女性が書いていることには驚きを隠せませんでした。
いよいよ次は本三部作の完結編ですか~
比較的爽やかな朝を迎えた静岡の自宅にて