柚月裕子「孤狼の血」 | 八ヶ岳南麓の里小屋から -for comfort life-

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静岡県と山梨県、2拠点居住のおじさんです。思ったこと、美味しかったこと、楽しかったこと、等々を気ままに綴っていきたいと思います。

濱嘉之さんの「完全黙秘」を読んでいて↓

無性に「やくざや悪徳警官が出てくるノアール作品」が読みたくなりましてね口笛口笛口笛

 

そんなキーワードで検索して出てきた(おススメされた)のが本作でした。

(こんなドロドロ濃厚作品を女性が書いてるの?と驚きました)

ん~、警察小説はたくさん読んでますが、おそらく「僕史上ベスト5」(←そんなん誰も聞いてないし)に入る作品でした。

概要はAmazonから引用します。

昭和63年、広島。所轄署の捜査二課に配属された新人の日岡は、ヤクザとの癒着を噂される刑事・大上のもとで、暴力団系列の金融会社社員が失踪した事件の捜査を担当することになった。

 

飢えた狼のごとく強引に違法行為を繰り返す大上のやり方に戸惑いながらも、日岡は仁義なき極道の男たちに挑んでいく。

 

やがて失踪事件をきっかけに暴力団同士の抗争が勃発。衝突を食い止めるため、大上が思いも寄らない大胆な秘策を打ち出すが。正義とは何か、信じられるのは誰か。日岡は本当の試練に立ち向かっていく。


初版が2015年ですから今から約10年前・・・

「もっと早く知っておけば良かった!」なんて言いません。「あ~、気づいて良かった!」と思い、次の作品を読もうと思いますウインク

(想像通り、映像化もされてました)

 

印象的だった個所です。
(もう初版発行から10年近く経っているので、ネタバレOKですよね~)

序盤、大上(悪徳警官でありながら超良い男:巡査部長)が日岡(大上の部下:巡査)にこう言います。「日岡。お前、二課の刑事の役目はなんじゃ思う」「暴力団を壊滅させることです」・・・

 

「お前、自分の飯の種を自分で根こそぎ摘むんか。暴力団がのうなってしもうたら、わしらのまんまの食い上げじゃろうが」屁理屈だ。日岡は唇をかんだ。だいたいのう、と大上は煙草をふかしながら言葉を続ける。


「世の中から暴力団はなくなりゃァせんよ。人間はのう、飯ィ食うたら誰でも糞をひる。ケツ拭く便所紙が必要なんじゃ。言うなりゃあ、あれらは便所紙と同じよ」・・・実際、大上は対立する暴力団の片側について行動しました。

大上と日岡が古いタバコ屋に寄る良いシーンです。「これ、なんぼするんない」大上の視線の先には、銀色のジッポーがあった。中央に狼の絵柄が彫り込まれている。月でも見上げているのだろうか。一匹の狼が踏ん張り、首を伸ばして遠くを見やっている。少しの間の後、老店主はぽつりとつぶやいた。「八千円」・・・

「えろう、高いのう」大上が驚いたように声を上げる。「その狼は、特注の手彫りじゃけん」ふうん、と鼻をならし、大上はしばらくそのライターを眺めていたが、かがめていた腰を伸ばすと、後ろにいる店主を振り返った。「こいつをもらおう」・・・風景が浮かぶとはこういうことでしょうね~。ちょっとシビれました。

物語後半、大上は謹慎となり表に出られず、日岡が対立する暴力団で大上が味方する方の若頭の言葉・・・「極道は喧嘩が商売ですけ。喧嘩相手に逃げも隠れもせんですが、警察は別じゃ。いま身柄を捕られたら、しばらく外に出れんかもしれん。

 

ガミさん(大上のこと)がおりゃァ別じゃろうが、いまは土井(大上とは別班の班長)の旦那が仕切ってるけェ、逮捕状が出る可能性もある。いま警察に身柄を預けるいうんは、一か八かの勝負みたいなもんじゃ」まあ、お約束のヤクザの言葉ですが、広島弁で聞くとさらにカッコいいですね~。

本作のW主人公(大上と日岡)の一人、大上は何と本作で殺されてしまいます。僕は次作以降もこのコンビを描くと思っていたので、かなり驚きました。そんな大上の葬儀のシーン。


日岡は遺影の前に置かれている遺骨の隣に、手にしていたパナマ帽を置いた。葬儀が始まる前に、探して買い求めた品だ。色も形も、大上が愛用していたものとほぼ同じ帽子だった。


「おお、気が利くのう。これがのうて、落ち着かんかったんじゃ」…大上の上機嫌な声が聞こえるような気がした。このシーン、ちょっと泣きそうになりました。

同じ葬儀のシーン。
大上がいつもショートピースを買っていたタバコ屋の婆さん(カツ)が良い味を出します。「これ(煙草のカートンふたつ)、香典代わりに供えてもらえんじゃろうか。恥ずかしい話じゃが、急じゃったもんじゃけ、現金の持ち合わせがのうて、のう」(中略)カツは喪服のポケットからハンカチを取り出し、泣き腫らした目元に当てた。


「わしはガミさんにはほんま世話になった。わしがこの歳まで生きてこれたんは、半分はあん人のおかげじゃ。あがなええ人間は、滅多におらん。ガミさんより、もっと先に逝かにゃァいけんやつがごまんとおるのに、神さんはなに…しとるん…」

 

最後は嗚咽が混じり、言葉にならないようだった。日岡は頭を下げて、カツから煙草を受け取った。全般がハードボイルドの物語の中で、こういう緩急は素晴らしいです。

(印象的だった箇所が多くて困りましたグラサン

 

うーむ、柚月さん作品にハマる予感、大ありです。

(どうやら3部作らしいですニコニコニコニコニコニコ

 

昼間は暑くなりそうな朝を迎えた静岡の自宅にて

 

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