8.ワシントンナショナルズとスミソニアン その1
宿泊したハイアットプレイスは1階カフェで提供されるブッフェ朝食が料金に含まれていた。ブッフェ台には普通必ず置かれているスクランブルやオムレツなどの卵料理やベーコン・ハムなどの加工肉がなかった。その替わりにチーズやヨーグルトなどの乳製品、グラノーラやミューズリーなどのシリアル類そしてフルーツが充実していた。
高タンパク、高カロリーから低カロリー、ヘルシーへと時代は変わっている今のアメリカを映し出す朝食のようだ。そんなヘルシー朝食を食べ過ぎないように気を付けながら美味しくいただいた。
最後のMLB観戦は16時開始の薄暮ゲームだったのでそこまでの時間を有効に使える。
薄暮ゲームの開催は少ないので、旅の実質的最終日の私とってとても好都合だった。
まずはワシントンの象徴「リンカーンメモリアル」へ行くことにして、スマホでウーバーを呼んだ。数分でラテン系兄さんが運転するトヨタヤリス(ヴィッツ)がホテルの前に来た。
15分位の乗車で料金は$7.5、昨日の失敗を繰り返さないようポケットに予め入れてあったチップを渡した。ラテン兄さんは、
「Thank you.」と言い笑顔で去っていった。
リンカーンメモリアルはその名の通り、第16代アメリカ大統領エイブラハム・リンカーンを記念して建てられたギリシアドーリア様式の荘厳な建物だ。内部には大きな大統領の座像が置かれていて、ワシントンを表すアイコンのひとつになっている。
ここでは何度も歴史的な演説が行われた。その中でもキング牧師の「I have a dream ‥.」という人種差別反対演説は英語の教科書に載るぐらい有名なものだ。
メモリアルの前に立つとその大きさに圧倒される。上空をひっきりなしに飛行機が通り過ぎて行くのは、国内線主体のロナルド・レーガンナショナル空港(DCA)に発着する航空機だと思う。
建物前の階段を上がり、英語の教科書で見た大きなリンカーン大統領の石像と面会を果たした。面会後に振り返って見た景色は、メモリアルの階段先から長く続くリフレクティング(反射する)プール、ワシントン記念塔、更にその先に国会議事堂を望む見通し良いダイナミックなものだった。
私の大好きな映画「フォレスト・ガンプ」の中でベトナム戦争から帰還した主人公フォレストが、このプールの周囲で開かれた反戦集会に集まる群衆の中で、ヒロインのジェニーと再会した感動的場面甦ってきた。オリジナルサウンドトラックアルバムに使われた60年代音楽が聴きたいと思った。
金曜日の午前中ということもで、人出が少ないリフレクティングプールの周りを歩いてみる。ここがリフレクティングプールと言われるのは、ワシントン記念塔がプールの水面に映り込むことに由来しているそうだ。プールの大きさをスマホで調べてみると、長さ618メートル、幅51メートルもあり、競泳用公式プール25面分にもなる広大なものだ。天気が良かったのでとても気持ちの良い散歩をと楽しんだ。
リンカーンメモリアルの反対側には「第2次大戦記念碑(National World War ⅡMemorial)」があった。
メモリアルを正面に見て、左側が太平洋戦線、右側がヨーロッパ戦線の記念碑だった。太平洋側に「珊瑚海」「ガダルカナル」「硫黄島」「沖縄」などの主な戦場名が掘られている石碑があった。太平洋戦争では日本軍兵士や市民が数多く犠牲になったと同時にアメリカ兵士も多く犠牲になっていることも事実だと再認識する。
ナショナルギャラリーに行こうと再びウーバーを呼ぶ。近くに空車が無く少し待ったが、やって来たのはヒュンダイ・ソナタに乗ったシニア年代の大人しそうなおじさんだった。乗車して少しの間はお互いに無言だったが、他車の急な割り込みに対して
「危ないですよね〜」
と私が言うと、おじさんは共感を感じ嬉しかったようで急に饒舌になった。
「今までに50カ国以上の人を乗せたよ」
おじさんは色々な国名が書かれたファイルを見せて来た。勿論JAPANも書かれていた。そして航空宇宙博物館前を通った時には、
「スペースエアーはいつも混んでるよ」
「シカゴとニューヨークへ行った?人が多かったでしょ。何
せ今週末まで春休みだからね」
「僕は自然史博物館が大好きなんだ。あそこには恐竜がいる
からね」
ウーバー代金は$6.5で、チップを多めに渡すと、おじさんは笑顔になり
「素晴らしい絵を見て楽しんで来てね」
と言い去っていった。