佐高信・渡邉美樹・高杉良鼎談。 | 一撃筆殺仕事人:佐高信先生追っかけブログ

佐高信・渡邉美樹・高杉良鼎談。

数年、このブログを書かずに、ツイッターを主として佐高ファン活動を続けてきたわけですが、久しぶりに書きます。前に話題になった佐高さんと、ワタミの創業者渡邉美樹さん、その渡邉さんの伝記的小説「新・青年社長」の作者の高杉良さんの2010年の鼎談がウェブ上で見られなくなってしまったことがあります。角川サイトから削除。ま、こういう時の為にウェブアーカイブというものが存在しているわけですが、やはり歴史的資料として転載しておくべきではないかと思い、実行したいと思います。

なお、表題が、高杉良・渡邉美樹対談で佐高さんは司会となっていますが、これは事実上司会というより鼎談の参加者と見たほうがいいのではないかと思っています。

 

参考エントリー。
http://ameblo.jp/sataka/entry-10691563549.html

http://ameblo.jp/watanabemiki/entry-10690208183.html
 

 

『青年社長』から『新・青年社長』へ
2冊の本が描き出したワタミの変化と不変について
経済小説の第一人者・高杉良氏が、渡邉会長とワタミの新たな展開を実名で描いた小説『新・青年社長』が刊行されました。40万部を超えるベストセラーとなった前作『青年社長』から11年。この間、ワタミにどんな変化があったのか。高杉氏と親交が深い評論家・佐高信氏に司会進行役をお願いし、高杉氏と渡邉会長に語り合っていただきました。

 


 

人と出会い、人を育てる 新たな展開を描いた新作


佐高:『新・青年社長』を読んでみて、前作の『青年社長』の続編ではない感じがしました。単なる儲けの拡大ではなく、有機農業の話が出てきたりして、新たな広がりが感じられたのですが。
 
渡邉:もともと、ある時期からは儲けよりも別のものを大切にしていこうという思いがありました。それは、さまざまな活動を通して「ありがとう」を集めていこうというものです。ただ、『青年社長』は東証二部上場までの段階ですから、企業として力を蓄えるというか、企業としての体を成すというか、その闘いの時期だったわけです。その後、おかげさまで、東証二部上場と一部上場で「たくさんのありがとう」が集まり、それが元になって、グループとしてさまざまな次の展開に入っていくことができました。その結果、前作と『新・青年社長』とでは、全く違う会社のように見えるということなのだと思います。
高杉:「続」ではなく、「新」というタイトルにしたのは角川書店ですが、いいネーミングだったと思います。
かつては渡邉さんが一人でこのグループを取り仕切っていたわけだけど、持ち株会社にして、けっこう権限を委譲していますよね。若い人が社長になってきている。そこが『青年社長』の頃との違いだと思います。かなり変わってきたなという感じがします。例えば、外食にしても、介護にしても、農業にしても、任されるほうは大変だと思いますが、その代わり、頑張るでしょうから、どんどん発展が望めるということになるんだと思います。
佐高:会社が変わってきた要因の一つが、『新・青年社長』にも描かれている、いろいろな人たちとの出会いですよね。有機農業や海外での外食事業が展開されるシーンなど。
 
渡邉:不思議なことに、こんなことをやりたいと思うと、ちゃんとめぐり合わせがあるんです。98年頃から、これからは中国の時代になるので中国への進出を考えていると、ぜひ中国でやらせてくれという男が現れる。有機農業について言えば、いろいろやってみた結果、日本では有機農業は無理なんだという結論に至りかけた時に、有機農業の第一人者(のちのワタミファーム社長、現・顧問)に出会った。本当に不思議な出会いが続いたと思います。そんな出会いの面白さが、『新・青年社長』にはあるのではないでしょうか。
高杉:結局、企業は人なんですよ。人との出会いというのは本当に大事なんだけども、ある意味で渡邉さんは「運」がいいとも言える。ただ、「運」も実力のうちと言うし、やっぱり渡邉さんには、今も昔も、人を惹きつける力があるんですね。いろいろな経営者を見てきた中でも、渡邉さんはリーダーシップがあって、すごい人だという印象です。今回改めて取材をしてみて、前作の、若い、闘う経営者とはまた違う姿に触れることができて、新作を書いて良かったと思います
企業としての人格を
さらに高めていきたい
 
佐高:権限を委譲するということは、人が育つまで待たなければいけない場面も出てきますよね。
渡邉:我慢の時間が人を育てるのは経験的に分かっていますし、人を育てないことには明日の会社はありませんから、我慢はします。ただし、いつまで待つという時間を決めて我慢するようにしています。本人にも、いつまでにこういう結果を出しなさい、それまでにできないなら私がやるよと、はっきり説明しています。
高杉:渡邉さんは、厳しいけれども社員に対するやさしさがある。やさしさは、経営者に一番必要なものです。とにかく最近は、自分のことしか考えない経営者が多すぎる。自分が社長をやっている時だけ何とか頑張ろうとするから、問題を先送りしたり、研究開発投資にお金をかけなかったりということがあるけど、企業というのは短期だけでなく、中長期的は判断が必要なわけで、その点、渡邉さんは、先を見て的確な判断でいろいろ成し遂げてきたと思います。
佐高:渡邉さんは、会社のイメージというものをも変えてきた印象がありますが、ご自身では会社とはどういうものだとお考えなんですか。
渡邉:会社は「法人」というように、人間と同じだと思っています。人間がそれぞれの価値観を持って、その価値を追求するように、会社にもそれぞれの価値観がある。ワタミの場合には、人間の幸せとは、大きな夢に向かって進んでいくプロセスで「ありがとう」を集めて成長すること、という価値観を持っています。個人個人はもちろん、会社としても大きな夢を目標として進む中で、たくさんの「ありがとう」を集めて、企業としての人格を高めていく。それがすべての目的だと思っています。
会社にはロマンを
佐高:これからは、どういう夢に日付を入れていくことになるんですか。
渡邉:『青年社長』の時代には、夢に日付を入れてやってきましたが、『新・青年社長』では、農業も介護も高齢者向け宅配事業も、夢が増殖していった感じで、日付が入っているわけではないんです。そして、現在始まっているのが、カンボジアでの農業です。これに今、本格的に取り組んでいて、11月には1回目の稲刈りが始まります。さらに来年には農業学校を建てて、カンボジアの農民に有機農業を教えていく。今はそのことが一番ワクワクしますね。以前もそうでしたが、これからもワクワクするようなことを素直にやっていこうかなと思います。
高杉:そういう話を聞くと、大変元気づけられます。今、日本は非常に閉塞感があって、ある意味では国難というぐらいの厳しい時なのですけど、渡邉さんの話には勇気づけられる。ワタミにはやっぱりいつも夢がありますよ。
佐高:私もいろいろな会社を見てきましたが、ワタミは例のない会社という感じがします。
高杉:やはり会社にはロマンがないと。 『新・青年社長』には、そんなロマンを感じてもらえるような新しいメッセージを込めたつもりです。ぜひ皆さんにも読んでいただいて、ワタミを、そして渡邉さんを、さらに応援してほしいと思います。
 
閉塞感がいっぱいの今の日本で
ワタミには夢とロマンがある
(高杉)
 
ワクワクするようなことを
これからも素直にやっていきたい
(渡邉)
高杉 良(たかすぎ・りょう)●作家
1939年1月25日生まれ。東京都出身。化学専門紙の記者・編集長を経て、1975年、「虚構の城」で作家デビュー。綿密な取材に裏打ちされた企業・経済小説の第一人者として活躍を続ける。代表作に「金融腐蝕列島」シリーズ、「小説ザ・外資」など。
渡邉美樹(わたなべ・みき)●ワタミ株式会社代表取締役会長・CEO
1959年、神奈川県生まれ。84年、(有)渡美商事を設立。86年にワタミを設立、2000年3月に東証1部上場を果たした。外食・介護・高齢者向け宅配・MD・農業・環境/メンテナンス事業を手がけ、「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」というスローガンのもと、100年企業を目指す。
佐高 信(さたか・まこと)●評論家
金融界はじめ、企業の在り方に鋭くメスを入れるジャーナリスト。高校教諭、雑誌編集者を経て、フリーのジャーナリストとして活躍。高杉良氏と親交が深く、著書の解説も多く手掛ける。