先日、スーパーマーケットで酒類を物色していたら、小学1年生くらいの娘を連れた若い父親に出くわした。
父親はレモンサワーを1本買い物かごに入れ、2本目に手を伸ばそうとしたそのとき、娘が「パパ!ダメ!一本だけだよ!ママに叱られるよ!」と父親の尻を叩いた。父親は情けなさそうな顔をして手を引っ込めた。
飲んでいる途中で「今日はここまで!」と妻に酒を取り上げられる自分の姿が頭に浮かび、「おお、ここにも同志がいたか!」と妙な共感を覚えた。
高校の頃は、とにかく腹が減った。朝ギリギリまで寝ていて、朝食を食べないから余計に腹が減るのだろう。また、いくら食べても太らなかった。弁当がない土曜日の午前中の授業を終えると空腹感はピークに達し、帰宅せずに高校の食堂に立ち寄ることも多かった。
土曜日の食堂には特別メニューがあった。焼きそばの超大盛りが半額だったのだ。とにかく量が多く、二人でも食べきれないほどだった。鉄板にこびりついた「おこげ」みたいなものも入っていて、これが香ばしくて美味かった。食堂にとっても廃棄せずに済むメリットがあったようである。
腹ごしらえがひととおり終わったら、路面電車で小倉の街に出て本屋に行くことも多かった。銀天街の「ナガリ書店」の2階で受験参考書を物色し、将来の夢が膨らんだり、溜息をついたりしていた。参考書に飽きたら、京町銀天街の喫茶「マヤ」でコーヒーを飲んだ。
街に出ずにまっすぐ家に帰ってテレビをつけると、「高校教師」という番組が放映されていた。加山雄三さんが英語教師役で、ちょっとフケた女子高生やスケバンがたくさん出てくる学園ドラマだった。同世代ではあるが、「東京の高校生はスゴイな!」などと思いながら見ていた。
主題歌は夏木マリさんの「裸の青春」。この歌詞が結構強烈だった。「たった一度の青春を悔いなきようにと言うけれど、春の嵐が過ぎた後、何もしなかったと嘆くより、ああ~過ち悔やむ方がまし」。
高校3年の頃、どこかのクラスの女子の友だちの妊娠中絶費用のカンパが回ってきたことがあった。「我々の世代にもそんな生徒がいるんだな?!」と呆れた記憶がある。
思えば、受験への不安や恋愛への憧れなど、葛藤が渦巻く中で悶々とした高校時代だったが、それでもどんな日も、腹だけは減っていた。