盆休みの前半は大学時代の友人が夫婦で訪ねてきて会食したり、また娘家族が帰省してきたりで賑やかに過ごした。
昨日近くの焼肉レストランに行ったが、店内は家族連れでごった返していた。猛暑の中、日本中が汗を拭きながら休暇を楽しんでいるように見えた。
その帰り、車の中から空に浮かぶ半月をみて「お月さんが付いてきているよ。お月さんもきっと寂しいんだよ。」と孫娘が言った。大人ではなかなか浮かばない発想である。
帰省は英語でhomecoming、帰省ラッシュはhomecoming rushというが、この時期、高速道路のサービスエリア等では色々な地域のナンバープレートを見ることができる。雑踏の中で少しづつ寂しい晩夏が近づいている。
百人一首に「蝉丸(せみまる)」という盲目の琵琶奏者と伝えられる歌人がいる。残した歌は以下のものである。
第十番「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂(あふさか)の関」
(拙・現代語訳)
「都を旅立つ人も都に戻ってくる人も、知っている人も見知らぬ人も、みんなここで出逢い擦れ違っては去ってゆく。ここはそんな旅人が行き交うところ、その名を逢坂の関という。」
この歌には、「会うものは必ず別れる運命にある」という「会者定離(えしゃじょうり)」の無常観が流れているように思われる。また「逢坂の関」は現世そのもののようにも感じられる。