英語の迷い道(その174)-「人間に死がなければ……」-有限であるが故の意義 | 流離の翻訳者 果てしなき旅路

流離の翻訳者 果てしなき旅路

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴16年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

先週の木曜日から翻訳実務検定「TQE」を受検していた。「金融・経済」の日⇒英翻訳である。ここ一年ほど立て続けに受検しており今回が4回目である。なかなか手強い試験でいまだ合格点(70点)に達していない。

 

今回は「REIT(不動産投資信託)」に関する金融系シンクタンクの論文から出題された。過去3回と比較すると翻訳量は10~15%ほど減少したように思う。翻訳量が減った分易しかったか?というと決してそんなことはない。難しさは相変わらずだった。

 

 

それにしても昨今はAIを活用した翻訳ソフトが充実しており、翻訳作業は随分楽になった。それなりの出来の一次翻訳をチェック・校正している感じである。

 

AIなのでスペルミスや訳抜けなどは殆ど無いが、時たま大きな勘違いをしたり、主語が省略された場合の主語の設定で可笑しな英訳もちょこちょこ見受けられる。とは言え、一次翻訳者にしてはまあまともな方だろう。

 

 

以下の大阪大学/外国語学部の問題は、「人間に死がなければ……」という仮定に立って「有限の人生の意義」を論じたものである。人生が有限であるが故に、人は悩んだり、頑張ったり、人を愛したりできるのだろう。

 

 

(問題)

次の日本文の下線部(1)~(3)の意味を英語で表しなさい。

 

人間に死がなければ、この世の中からほとんどの悲哀、苦悩、孤独などが一掃されるはずである。(1)不滅の生命が保証されているということは、常に永遠の未来と可能性を約束されていることだから、失恋も失敗も失意もほぼなくなるだろう。(2)喜びとか幸せはこれらの裏返しに過ぎないから、もはや感受されることはあるまい。

(3)高次の情緒であるなつかしさなどは、有限の人生に密着しているから、消失するだろう。無限の時間が与えられれば、何かを頑張ってやり抜こう、という情熱も微弱になるだろう。はかない命をおもうことがなければ、人を愛する心は輝きを失うだろうし、草花や悠久の自然に寄せる心も色あせるだろう。

(藤原正彦『数学者の休憩時間』)

(大阪大学/外国語学部・2011年)

 

 

(拙・和文英訳)

If human beings were immortal, most of their sorrow, anguish, loneliness, etc. would be cleared away from this world. (1) If immortal life were guaranteed, in other words, if eternal futures and possibilities were promised at all times, heartbreaks, failures, and disappointments would almost vanish away. (2) As joy and happiness are only the reverse side of these things, they could no longer be perceived.

(3) Nostalgia, which is a high-order emotion, would disappear because it is closely attached to mortal life. If you are given an infinite amount of time, your passion to make efforts to do something would become feeble. If you don't care about your transient life, your love for others would lose its brilliance, and your affection for flowers and eternal nature will fade away.