久しぶりに「英文表現法」(戸川 晴之著・研究社)をパラパラとめくっていると、こんな日本語に目がとまった。少し古い時代(昭和)の初冬の情景である。
東京と金沢の空気が対比されている。昭和の頃、確かに都会の空気は汚れていた。クールファイブに「東京砂漠」という曲がある。♪~空が哭いてる煤け汚されて~♪で始まる曲だ。
金沢には残念ながらまだ行ったことがない。生きているうちに一度は訪れてみたい街だ。
(日本文)
彼女の足もとで、掃き集められた枯葉が薄紫色の煙をあげている。初冬には、めずらしく晴れた朝だった。透明な陽ざしが、澄んだ空気を通して、降りそそいでいた。スモッグに汚れた東京から帰ってくると、亜由美はいつも金沢の空気の美しさを痛いように感じるのだった。曇天の続くなかで、時たま訪れてくる宝石のような美しい朝日、眠っているのが惜しいほどだ。
(五木 寛之)
(拙・和文英訳)
At her feet, a heap of the dead leaves swept together was emitting light purple smoke. It was an unusually fine morning in early winter. The transparent sunlight was pouring down through the clear air. Whenever she came back from smog-polluted Tokyo, Ayumi always felt painfully the beauty of the air in Kanazawa. The morning sun that came occasionally in those cloudy days was so brilliant like a jewel that she could think it a pity to be lying in bed.